第一章 恐怖の夏の前触れ




20〇〇年5月中旬。

梅雨の季節が訪れ、毎日、ムシムシと蒸し暑く、雨の日が長く続いた。


ジメジメと湿度が高く、昼間でも薄暗い気候で、何となく気分も沈む感じだ。


そんな、ある日。

その日は、朝から、ひどい土砂降りだった。


「毎日、雨ばかりで嫌ですね〜。」

「ほんとね〜。ジメジメして、人間にもカビが生えそう。」

「洗濯物も乾かないし、毎日、部屋干しで家の中、楽屋裏みたいよ〜。」

「やぁーね〜。」

雨傘をさした主婦達が雨の中、佇み、世間話に花を咲かせている。

「太陽の光がないと、気が滅入るわね〜。」

「早く、カラッとした夏が訪れないかしら?」

「ほんとにね〜。」

笑い合う主婦。


この主婦達は、知らなかったのだ。

いや、主婦達だけではない。

誰も、想像も出来なかった恐怖が、これから訪れる事を。


ザァーザァーと音を立て、振り続ける雨の中、その恐怖の足音は、すぐ、そこまで忍び寄っていた。


梅雨とはいえ、この異常過ぎる雨に、人々は、水不足に悩まずに済む等と、呑気な事を言っていた。


この激しい雨は、これから起こる恐怖の前触れだったのだ。

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