episode7【第二の魔法少女、マジカルカレッジ現る!!】
ep7-1 衝撃! 二人目の魔法少女!!
「な、なに!?」
戸惑いの声をあげながらもすぐに体を起こしアクアさんは魔力弾が飛んできた方向に視線をやる。その先にいたのはあたし……ではない。
まさに魔力を放つ寸前で突如起こった出来事に、あたしも呆然としてそちらに視線を向けた。
「そこまでにしときなよ、おばさん!」
燃えるような紅の髪、最初に目に飛び込んできたのはそれだった。
そこには、一人の少女が立っていたのだ……!
「だ、誰!?」
アクアさんが叫ぶと彼女は不敵に笑って言うのだった。
「マジカルパワーで勇気を灯す! 魔法少女マジカルカレッジ!」
そして、そのままポーズを決める。
彼女が口にしたその名は衝撃となってあたしの全身を貫く!
魔法少女マジカルカレッジ!? まさか、第二の魔法少女ぉ!?
「そ、そんな、そんなのがいたなんて……」
あたしは呆然と呟きながら彼女の姿をまじまじと見つめる。
年齢はあたしやブリスと同程度だろう。
赤を基調としたコスチュームは基本的なデザインはブリスと共通しており、彼女と『同じ存在』である事が見て取れた。
ただ、その全身を纏う雰囲気はブリスのそれとは違っていた。ブリスはなんというかヒロイン! お姫様! って雰囲気があるけど、この魔法少女はなんというか『戦う者』って感じがする。
髪も短くボーイッシュな雰囲気、アクアさんをおばさん呼ばわりしたりして、ブリスよりもかなりやんちゃな印象を受ける。
「マジカルカレッジ……仲間、なの……?」
ブリスがよろよろと立ち上がりつつ、自分の元へ歩み寄るマジカルカレッジを名乗る少女に尋ねる。
「アタシはアントリューズ打倒のために立ち上がった新たな魔法少女、マジカルカレッジ! マジカルブリス、あなたの仲間だよ! あなたのピンチを見逃せなくてね、つい出てきちゃった」
「仲間……わたしの……そっか、そうなんだ! ありがとう、助かったよカレッジ!」
さっきまでの弱気な態度はどこへやら、ブリスは明るい声で彼女の手を取りつつ礼を言う。
そんな様子にあたしは少しムッとするが……まあそれは置いとくとしてだ。
「ふんっ! マジカルカレッジだかなんだか知らないけど、邪魔しないでよね!」
あたしの言葉に彼女は不敵な笑みを浮かべると言ったのだった。
「あいにく悪の邪魔をするのが正義の魔法少女の仕事なんだ。アタシが来たからにはあなたたちの思い通りにはさせないよ?」
くううっ、何よこいつは! 随分と自信満々じゃない!
「……まさか新たな魔法少女とはね……だけど、今回の子はちょーっとワタシの好みから外れてるわね。人をおばさん呼ばわりするような子はあまり好きにはなれないわぁ……」
マジカルカレッジに対して不快感を感じたのはあたしだけではなかったようだ、アクアさんも顔を顰めつつそんな言葉を口にする。
むぅ、女の子大好きのこの人がこんなことを言うなんて……どうやらおばさんという言葉は彼女にとって
アクアさんって確か28~9歳くらいだったっけ? う~ん、そろそろそんな言葉も気になるお年頃なのかもしれない。
ってそんな事を考えるよりも今は……。
「アクアさん、そんな事を言ってる場合じゃないですよ、どうするんですか?」
この場をどうするか、だ。
尋ねるあたしに対してアクアさんは意外極まる言葉を放つ。
「やめた……」
「へ?」
アクアさんが発した単語にあたしは思わず間抜けな声を上げてしまう。一瞬意味が理解できなかったのだ、やめたとはどういうことなのか。
疑問に感じる間もなくアクアさんは続ける。
「今日はなんだか白けちゃったわ。せっかくのブリスちゃんとの愛のひと時も邪魔されちゃったし」
「あ、愛のひと時って何よ!?」
アクアさんの言葉を聞き咎めブリスが抗議の声を上げてくるが、それを無視しアクアさんはそのままあたしに向けて続ける。
「だから、オプファーちゃん。後は適当にやっといてちょうだい」
「え、ええええ、そんなぁ……」
アクアさんのあんまりな言葉にあたしは思わず情けない声を上げてしまう。
そんなあたしを放置して、彼女はブリスに向かって言うのだった。
「それじゃあね、ブリスちゃん♡ また会いましょう♡」
パチンとウインクをするアクアさんにブリスがビクリと震える。
「い、いやよ! もう会いたくないわ!」
「うふっ、つれないのねぇ、でもそんなところも好きよ♡ だけど覚えておいてね、いずれワタシなしでは生きられない身体にしてあげるから♡」
「ま、負けないから、あなたなんかに、絶対にぃ!」
両手で自分の身体を抱きしめるようにしながら叫ぶブリスだったが、アクアさんはそんな彼女の態度すらも楽しむように笑みを浮かべて見せた。
「本当に可愛い♡ 貴女がワタシの下であんあんと可愛く鳴く日が今から楽しみだわぁ♡」
「ひいっ!?」
「うふふ、それじゃあね♡」
そう言うとアクアさんはあたしの方に向き直り、
「じゃあオプファーちゃん、後はお願いね」
それだけ言ってさっさとその場を後にするのだった……。って! いやちょっと待ってよ!? そんないきなり言われても困るんですけどー!!?
「な、なんなのアイツ……。それはともかくとして……」
呆然とこのやり取りを見守っていたカレッジが我に返ったようにこちらに視線を向ける。
「マギーオプファーだっけ? どうやら仲間に置いていかれちゃったみたいだけど、覚悟はできてる?」
「か、覚悟って……?」
彼女の言葉にあたしは思わず聞き返す。すると彼女はニヤリと笑って言ったのだった。
「決まってるよ! 魔法少女マジカルカレッジと暗黒魔女マギーオプファーの対決だよ!」
ああもうっ!! なんでこうなるのよーっ!!!!????
「ふっふっふ、見てたよ昨日のニュース。よくもブリスを酷い目に遭わせてくれたね? だけど、このアタシ、マジカルカレッジが覚醒したからには、もう好き勝手にはさせはしないよ!」
「ぐぬぬ……」
あたしは歯噛みする。まさかこんなことになるだなんて……。でもまあ仕方ないか、こうなったらやるしかないよね!
と、決めたのはいいけれど……。
「カレッジ、マギーオプファーは侮れない相手よ? わたしも一緒に戦うわ!」
そう言いながらブリスがカレッジの横に並び立ったのを見てあたしの中のやる気が見る見るうちに萎えていくのを感じた。
ちょっとちょっとちょっと! こっちは一人なのよ!? 二対一はないでしょ!
しかし、ここでそれを言ったらなんだかあたしがビビってるみたいだし……。
「ふ、ふんっ! いい度胸じゃない? でも二対一だからって勝てるとは思わないことね!」
そんなあたしの虚勢にブリスもカレッジも余裕の表情を見せるのだった。くううううっ!! 腹立つわねー!
とはいえどうするべきか……ブリスのレベルが昨日のままだとするなら14のはず。あたしは15だから一対一なら勝てる確率はそれなりにあるのだけど、カレッジと一緒に掛かってこられたらおそらくあたしは負けちゃうんだよねぇ。
カレッジのレベルは不明だけど、なんか雰囲気的にブリスよりもレベル高そうだし……。
むむむ、実はアクアさん白けたとか言い訳して逃げただけなんじゃ……。
まあ、それはともかくとしてだ、ここはあたしも撤退するのが得策なんだろうけど、ただ撤退するのもなんだし。
悩むあたしにカレッジは、「どうしたの? そっちから来ていいんだよ!?」などと挑発的な言葉を送ってくる。
……ダメよあたし、ここで挑発に乗ったら! と思いつつもなめられるのはプライドが……。
ざっと一歩踏み出したまさにその時、あたしの目の前に黒い影が現れた!
何事!? と思うあたしだったが、それはあたしが生み出し街を襲っていたオドモンスター・アリリンコだった。
あっ、そうだ、すっかり忘れてたけどこいつ放置したまんまだったわ、アクアさんがブリスを甚振ってる間もどうやら街で女の子に向けて蟻酸を振りまいてたようだけど、ご主人様の危機を察してやってきたのね。
よしっ、これは使えるかもしれない……。
「ふふっ、ブリス、そしてカレッジ、あんたたちがあたしの相手をするのは100年早いわ! こいつでお相手してあげる!」
あたしは言うと腕を振り上げアリリンコに向けて魔法少女への攻撃指示を与える。そしてさらに街に散らばるアリリンコたちに向けてここに集まってくるよう念波を飛ばした。
「くっ、こんな奴に!」
カレッジは飛び掛かって来たアリリンコの攻撃をかわし、殴りつける。
思った通り、なかなかの実力ね……。
アリリンコ、とりあえず全匹がここに集結するまで時間稼ぎ頑張ってちょうだい……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます