オリジン
1
いやいや、まったくやってらんねぇぜってな具合で、俺は両手両足ババ〜〜ンと広げ、ベッドにソイヤとダイブする。すっかりくたびれたベッドが、限界寸前の軋んだ音で俺を受け止める。
やれやれ、本当なんなんすかね、最近は。紫薔薇もとい、ダークライトが出現してからときたら、西の強盗も、東の殺人鬼も、ド
俺も変わらずパトロールを続けているわけだが、オロロとゲロ吐く酔っ払いの介抱とか、ビエンビエン泣く迷子の捜索くらいのもんでして。これじゃ人気も下がる一方、今じゃあ誰も発光仮面の話題なんぞしやしない。ダークライト旋風か。なんだよ〜。学校でもモテモテなんだから、ヒーロー活動くらい俺に譲ってくれたっていいんじゃんかよ。俺には発光仮面しかないんですよ。
構って欲しさに「発光仮面だけど何か質問ある?」なるスレを立ててみたところ、「オワコン」「証拠を見せろ」「チンコうp」の大合唱
。チンコは特定されるから無理と拒むほかないのだが、今度は「チンコで特定は草」「嘘松」「チンコ松」などと非難が轟轟続くわで、ああ、もう、なんで嘘じゃなくて松の方が残るんだよ。ギョエァ〜〜!
あー、発光仮面辞めちゃおっかな。今年は受験だし、親を誤魔化し続けるのもそろそろ
それに、コレもあるしなぁ。
俺は紫薔薇から渡された紙をしげしげ眺める。紙にはメールアドレスが記されていて、紫薔薇いわく、「鬼頭くんに朗報だ。どうせモテたくてヒーロー活動していたんだろう?これはこの街No.1ビッチお姉さんのアドレスさ。童貞卒業して、一緒に
モテるために始めたヒーロー活動に、モテもしないのにのめり込むなんて本末転倒もいいとこだろう。頭の中で、
あれは小学生の頃だ。捨て犬を拾ったことがあった。雨の中、か細く震える茶色い毛並みの子犬。お腹の星型の痣が特徴的で、"スター"と名付けたんだった。スター、可愛かったなあ。よく懐いて、どこに行くにも一緒。最高の弟分だった。
そんなスターが台風の夜に消えた。俺は号泣し、1年近く毎日スターを捜索したが、結局見つけ出せなかった。きっと何処かで元気にやってると諦めた。
そうか。俺は昔から中途半端だったんだなあ。スターの世話も捜索も全うできなかった。
今もそうだ。発光仮面を途中でやめて、紫薔薇の横暴も止められない。力に酔った
とはいえ、俺に何ができる。紫薔薇の
ぼんやりと、自分で立てたスレをスクロールしていると、ある一文が目に止まり、思わずフヘヘと笑ってしまう。送ってみるかあ。メールをポチポチ送信する。暗い部屋の中、スマホの画面だけが煌々と光っていた。
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