【Side Story①】 君たちいったい何なりや?
「ぐすっ、アルバートさんのバカッ! アホッ! うええぇぇぇんっ!」
「お姉様、お可哀想ですわ・・・。お父様は後でキツイお仕置きが必要ですのっ!」
「いやっ、ユウちゃんは可哀想だけど、それはそれで領主様が可哀想じゃ・・・」
アルバートさんといっぱい話をして、ひとまず退室した僕。
ピアちゃんに手を引かれて部屋に戻ってきたけど、思い出したらまた涙が出てきた。
お姉ちゃんとして格好悪い姿は見せたくないのに、涙が止まらない。
早く、泣き止まないと・・・。
今はとにかく怖くて悲しくて、蹲っていたい。
今日はもう何もする気が起きなくて、布団を被って一日過ごそうかと考えていたら、慌てて駆けてくる足音と共に4つの小さな影が飛び込んできた。
「姫が目覚められたのでありますかっ!?」
「姫さんっ、大丈夫かっ! 腹痛かったりしねぇかっ!?」
「姫様、アラミスが参りました。ご不調ありませんか?」
「お
アニマル’sだ。
彼等は復興作業を手伝っていると聞いた、仕事終わりで駆けつけて来てくれたのだろう。
申し訳ないという気持ちと同時に、嬉しさが胸に広がった。
「みんな、ありがとう。僕は・・・ぐすっ、大丈夫だよ・・・ぐすっ」
「姫っ、如何されたのでありますかっ!? ダンタルニャンめが此処におります、何も怖い事は無いのでありますよ! 肉球触るでありますかっ!?」
「誰だっ、俺等の姫さんを泣かせた奴はっ!! ブッ◯す!!」
「お嬢様方、何かご存知ではありませんか?」
アラミスの問い掛けに、「言っても良いのだろうか、言ったほうが良いのだろうか?」と思ったんだろう。
クレアさんとエリザベートは返答に困り、目を逸らすしかしなかった。
「・・・アルバート殿で御座るな?」
「エスパーですのっ!?」
アトスの言葉に全員が鎧を着込み、武器を手に取った。
「血液が一滴も出なくなるくれぇ全身を捻り絞ってやるぜ」
怖っ!?
「生きたまま神経を焼き切ってくれよう」
痛っ、痛いよっ!?
「治せばいくら潰しても良かろう。幸い治療に失敗しても玉は二つあるのだ、問題ない」
何処のっ!? ねぇっ、何処の「玉」っ!?
「生きたまま、鰹節のように肉を薄く削ぎ落としてやるのであります」
ぎゃあぁぁぁっ、聞いてるだけで痛いっ!?
・・・あ、涙が止まった。
「み、みんなっ、大丈夫だからっ! 何ともないから、アルバートさんを許してあげて、ねっ?」
「むむぅ・・・姫がそう仰られるならば・・・」
「仕方無し」
「姫さんが言うなら諦めっかぁ」
「残念至極」
残念って、何がっ!?
僕に阻止され渋々報復を諦めたアニマル‘sは、それならばと今度は僕の側に集まってきた。
たぶん僕が安心する様にという配慮なんだろうけど・・・。
「・・・暑い、超モコモコする」
「モフモフホクホクなの・・・」
ダウンジャケットと羽毛布団を両方被ったくらい暑い。膝のピアちゃんも暑苦しそうだ。
目の前で二人が羨ましそうに見ているが、言っておく。ヤバいくらい暑いぞ?
アニマル‘sは僕の換装魔法の様に鎧を出し入れできる様で、今は普通の二足歩行する動物である。
いや、二足歩行する動物は全然普通じゃないが、ツッコミが追い付かないので無視だ。
4匹は出てきた時も思った通り、若干デフォルメが入った普通の動物に沿った見た目をしている。
そして大きさには若干差があり、ポルトスがピアちゃんとほぼ同じ背丈なので120センチくらい、ダンタルニャンとアトスが頭一つ小さい100センチ程。ピアちゃんに抱えられているアラミスはたぶん80センチくらいの特大毛玉だ。
みんな実物よりもモフモフの毛並みをしている、柴犬の冬毛に似ているかも。
この子達には聞きたいことが山ほどある、折角なので今のタイミングで確認していこう。
「みんな、色々聞きたいことがあるんだけどさ。何で僕が『姫』なの? 普通ピアちゃんの方じゃない?」
個人的に「姫」と言うならピアちゃんの方だ、僕が「姫」でピアちゃんが「ピア様」って何か可怪しくない? 僕って君らの中でどういう位置付けなのさ!
「ピア様は『妹様』故、ユウ様は『お
「姫は姫であります!」
「いやまず、その『お
お前はいつの時代の人間・・・犬なのさ。
「別の呼び方にならない? せめて「ユウさん」とか、百歩譲って「ユウ様」とか」
「イヤで・・・ありますか・・・?」
ぐっ、心が痛い。でもここで妥協したら、未来の僕のmen'sハートがクラッシュする。
「姫が嫌だと仰られるならば仕方ないのであります、ならば代わりに『神』と・・・」
「それは止めてぇっ!?」
それはイヤ、絶対イヤッ!
じーっと四匹のつぶらな瞳が、何かを期待して僕を見詰める。「どぉする〜? ア◯フル〜♪」という曲が頭に流れた。
・・・くっ、抗えないっ!
「・・・わかったよぉ、もう『姫』でいいよぉ」
僕の返答に、アニマル’sは勝鬨を上げた。
気のせいかスクナを倒した時よりも喜んでいる気がするんだがっ⁉
「良いじゃありませんの、お姉様にはピッタリですわ!」
「そうそう、ギルドじゃ6:4で『姫』の方が人気だったよ?」
「何それ、初耳なんだがっ⁉ あと残りの4、何だったんだっ⁉」
「えっ、聞きたい?」
「聞きたくないっ!!」
あいつ等、僕をダシに何やってんだっ⁉
「ていうかさ、アトスのその話し方は何なの? どこで覚えたの?」
四匹とも変だが、誰が一番変かと聞かれたらダントツでアトスである。
他四匹はまぁキャラクター通りっぽい・・・気がする?
「拙者で御座るか? そう申されましても・・・」
本人は「何でか知らん」という事らしい。
もういいや、疲れてきた。
それからも色々と聞いてみて、初耳だったり納得したりと内容は様々だった。
まず彼等は物語のキャラが出てきた訳ではなく、あの編みぐるみの意思にキャラ情報がインストールされた感じの存在らしい。
だから自分が登場キャラでは無いことを理解しているし、異世界特有のスキルも使える。
ちなみに意識は地球に居た頃からあり、アルテミス様がここまで連れて来てくれたらしい。
・・・地球って意外とファンタジーだったんだな。「現実は小説よりも奇なり」ってことかな。
もしかすると、アトスの話し方は地球で覚えたのかもしれない。僕、時代劇好きだったし。
「ちなみにあの騎士団名って誰が決めたの?」
「吾輩でありますっ! 気に入って戴けたでありますかっ? 吾輩、姫にぴったりなものをずーーっと、ずーーっと考えていたのであります! 如何でありますかっ!」
めっちゃ目がキラキラしてる。
「う、うん・・・ありがとうね・・・」
僕がお礼代わりに頭を撫でてあげると、「ぅにゃ〜〜ん、至極でありますぅ〜〜」と喉を鳴らしていた。
・・・騎士団名、要るかな?
騎士“団“が無いんだが、要るか? いや、ん〜〜、要らない気しかしないけど・・・男の子だもんね、欲しいんだろうな。
喜んでるし良いか。
僕は受け入れて、この子達のことも見守る事にした。
その後、ダンタルニャンが羨ましくなったのか他の子やピアちゃん達、何故かエリザベートとクレアさんまで撫でて欲しいとせがんで来てわちゃわちゃした。
「・・・あははっ!」
賑やかなのって楽しいね!
色々起こり過ぎて頭が追い付かないけど、ひとまず新しい家族が出来たことを天の二神に感謝するのだった。
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