【Character Story⑤】 ダンタルニャン日記

 〇月 ✕日 曇り


 悪鬼との戦いが終わり、姫はお眠りになられたのであります。

 折角言葉を交わせるようになりましたので、吾輩としましては沢山お話をしたいのでありますが・・・吾輩共の召喚に度重なる神具の作成と、正直御力を使われ過ぎであります。

 身辺の事は吾輩共に任せて、今はごゆるりとお休みになって戴きたいのであります。


 ・・・と愚考しておりましたが、マルセナ殿に寝所より追い出されたのであります、納得いかないのでありますっ!

 むむっ、「猫と言えど、乙女の寝所に入れるわけにはいかない」でありますか。

 そう言われてしまうと、猫の手も出せぬのであります。えっ、なぜアラミスは良いのでありますかっ⁉

 納得いかないのでありますっ、フカーッ!!



 〇月 △日 晴れ


 昨日とはうって変わって、本日は快晴であります!

 姫はご機嫌麗しくお過ごしでありましょうか? アラミスから聞くに、姫はまだお休み中で目を覚まされていないとのこと。

 早くご尊顔を拝見したいのであります、ぅにゃーん!


 姫がお休み中の間、吾輩もただ毛並みを整えているわけにもいかないのであります。

 アルバート殿に吾輩共でも出来ることは無いか確認するのであります!


 アルバート殿の紹介で吾輩共は得意分野で個々に散り、復興作業に従事することになったのであります。

 アラミスは治療院へ、アトスとポルトスは瓦礫の撤去を、吾輩は避難民の食料調達を任されたのであります。

 吾輩を珍獣としてみていた冒険者の中に、どうやら吾輩が姫と共に居た所を見ていた者がいたようですぐに受け入れられたのであります。

 姫もおっしゃられていたように、気概の良い者ばかりでありますっ!


 沢山活躍して姫の素晴らしさを宣伝するのでありますっ、にゃーっ!



 ◯月 ◇日 晴れ


 姫がまだお起きになられないのであります・・・。

 心配ではありますが、信じて待つのも家臣の務め。姫の事はアラミスに任せ、吾輩は姫がお目覚めになられた際、民の笑顔が曇っておらぬ様努めるのであります!


 最近食料調達から戻ると、獣人の方々に声を掛けられるのであります。

 「神獣様に宜しく」と言われるのでありますが、そもそも吾輩も会えないのであります。


 寂しくて少々毛並みに艶が無い気がするのであります、やはりアラミスはズルいのであります!

 今度、硬いトウモロコシの粒を食事に混ぜてやるのであります!



 ◯月 ◯日 曇り


 姫ぇ〜、姫はまだお目覚めにならないのでありますか?

 空をご覧ください、まるで吾輩の心を映しているかのようであります。


 姫のお顔を拝見できねば、このダンタルニャンめは寂しくて死んでしまいそうであります・・・。

 吾輩は姫のお目覚めを信じて待っているのでありますが、寂しさから少し鳴いてしまうのは許して欲しいのであります。ぅなぁ〜〜ぅ!


 吾輩共がいくら寂しいと思っても、民が苦しんでいる現実は変わらないのであります。

 弱気を助くと誓った吾輩達騎士が、手を抜くわけにはいかないのであります。


 しかし寂しいことに違いは無いのであります・・・姫ぇ、早く起きてぇーー!



 ◯月 □日 晴れ


 吾輩達の姿に同情したのか、本日はマルセナ殿から面会の許可が下りたのでありますっ!


 姫っ、姫っ、あぁ・・・ようやくお会いできたのであります・・・。

 姫、ダンタルニャンめがお側に参りました、この日を千秋一日お待ちしていたのであります!


 姫は顔色が戻っておられました。

 自身の目で見て、ようやく安心できたのでありますが・・・やはり吾輩、お話もしとう御座います。


 一日でも早くその海のような瞳で吾輩を見詰めて欲しいのであります。


 一日でも早くその桜色の唇に吾輩の名を紡いで欲しいのであります。


 一日でも早くその白磁のような御手で吾輩に触れて欲しいのであります。


 吾輩達、姫をいつまでもお待ちしているのであります。

 でも、ただ少しだけ。今までのご褒美に、姫に甘えることを許して欲しいのであります。


 そう言い訳をした吾輩は姫の手を少し拝借し、頭に乗せたのであります。

 あぁ、姫の手、姫の温もり、姫の匂いであります・・・ごろごろ。


 本日は復興作業を休ませて頂き、一日姫のお側におりました。

 姫は時折「もふもふ・・・」と寝言を申しておられました、夢の中で吾輩達がお役に立てて入れば幸いであります!


『姫ご自身も姫の大切なもの全てお守りする』

 吾輩は、姫の無邪気な寝顔に改めてそう誓ったのであります。


 ◯月 ☆日 晴れ


 久々に姫とお会いできて、今日は気力も十分であります!


 最近は作業終わりに御婦人や子供達に囲まれる事が多いのであります。

 皆、吾輩にお礼や姫を心配している事を伝えてくれるのであります。


 何も問題ない事を伝えると皆安心して帰るのでありますが、やはり姫は皆に好かれているのだと実感したのであります。

 その事が再確認できて、吾輩は何だか嬉しくて尻尾がウネウネするのであります!



 〇月 ▽日 晴れ


 今日、遂に姫がお目覚めになられたのであります!

 あぁこの日をどれだけお待ちしたか事かっ。本当に本当に吾輩心よりお待ちしており、周りの方々もそれをご存じだったはずなのに・・・なぜ教えられたのが、夕刻なのでありますかっ⁉


 姫が目覚められてから六時間も経っているのでありますっ!! お目覚めになられた時点で呼びに来てくれても良いのではっ⁉

 ヒドイのでありますぅぅぅぅぅぅーーっ!!


 ・・・なぜ姫が泣いておられるのでありますか?

 誰でありますかっ!! 姫を泣かす者など、このダンタルニャンが成敗してくれるのでありますっ!!

 えっ、アルバート殿が犯人でありますか?

 そうかぁ・・・そうでありましたかぁ・・・。だから吾輩達を呼ばなかったのでありますねぇぇぇぇぇぇ!!!!!!

 吾輩達四匹は、武器を手に館の執務室に向うのでありました。

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