幕間:その名は「ジョイ」
「やれやれ、死んでしまいましたか。手前のコピーとはいえ情けない事です」
薄暗い部屋の中でそう呟くのは、ユウに「手前さん」と名付けられた男。
リアムの転輪の幹部十席に名を連ねる者。名は無く、ただ周囲の者からは「ジョイ」と呼ばれている。
ユウ達と戦っていたのはジョイをコピーしたドッペルスライムであり、本人は一度たりともこの場から動いていない。
ジョイは目玉型の飛行モンスター「イビルアイ」を使い、ユウ達の戦いの一部始終を観察していたのだ。
「それにしても、まさか女神ウェヌスが生きていたとは・・・それもどういったわけか二人に増えている」
忘れもしない、己の崇拝する神が休眠まで追い込まれた戦い。その時にターゲットとされていたのが、女神ウェヌスだ。
かの女神が持っている力は絶大、だが本人はそれを使う素振りも見せず細々と暮らしていた。ならば我々が有効活用しようと向かったが、まさか男神テラが現れるとは思わなかった。
我が神は傷付き休眠に入ってしまったが、同時に女神ウェヌスの消滅も確認。
てっきり我が神に食われたものと思っていたが・・・果たして、どうやって生き残ったのか。そして何故今出てきたのか。
「権能を行使したことから考えても、小さいほうが女神ウェヌスで間違い無いはず。では大きい方は何なのでしょう。あれ程の能力、分体とは考え辛い。しかし別の神と考えるには能力が似すぎている・・・」
分体でも別の神でもないとなると考えられるのは、魂と体を切り離したのだろう。
では大きい方の中には何が入っているのか。
「別の神の魂を都合良く用意できるとは考え辛い、となると人間? いや、それこそあり得ない」
人間の魂を神の身体に馴染ませようなど、溶岩の中に紙の玉を放り込む様なもの。
そもそも二つは存在の次元が違うのだ、馴染むなど絶対にあり得ない。
だが、もし馴染んだのだとしたら・・・その魂は本当に人間だったのか?
「ははははっ、興味が突きませんねぇ! 女神ユウ、貴女を必ず手に入れて、開いて、溶かして、調べ尽くしてみせましょう!」
しかしあれの側には、人類最強とも言えるエリザベス・ガブリエラがいる。
行動を起こすにはもう少し準備と、情報を集めなければならない──全ては我が神「リアム」の為にっ!!
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