第5話 オムライスは語る
レ〇ナ、15歳、不登校、親と不和、悩み多き美少女。親が仕事に出かけ、登校時間も過ぎて静かになった。そこで、ようやくレ〇ナは1階に降りた。テーブルの上にはお弁当箱。中身は美味しそうなオムライスだった。だが、レ〇ナは食欲が無かった。お弁当箱の蓋を閉じようとすると、どこからともなく声が聞こえて来た。
「レ〇ナさーん! 待ってや-!」
レ〇ナはキョロキョロと辺りを見回す。勿論、誰もいない。
「ここやー! ここ! ここ! お弁当や-!」
「お弁当箱?」
「そうや、僕、オムライスや」
「オムライス……さん?」
「そうや、最近のレ〇ナさん、元気が無いって聞いたから励ましに来たんや」
「オムライスさんが励ましてくれるんですか?」
「うん! なんでも話してくれや」
「そう言われても、何から話したらいいのか」
「不登校なんやろ?」
「はい……不登校です……」
「なんでそんなに申し訳なさそうに言うねん? もっと堂々としたらええやんか」
「堂々と?」
「不登校のことを気にせず、堂々としてたらええやんか」
「できません。学校に行けないことが苦しいのに」
「それは、学校には絶対に行かなアカンもんやと思い込んでるからや。行けないときは休んだらええんやと思ったらええやんか。これだけでも、かなりストレスは減るで」
「そうですね、そういう発想は今までに無かったです」
「行かれへん理由があるんやろ?」
「あります」
「理由があって休むならええやんか。理由が無くて休むのとは大違いやで」
「でも……幾ら考えても学校を休む理由が解決しません」
「だからって、手を切ったり足を切ったりしたらアカンよ。そこまでせな行かれへんということは、そこがレ〇ナさんの限界やったんや」
「なんで、手や足を切っていることを?」
「オムライスの観察力をなめたらアカンで」
「私、どうしたらいいんでしょう?」
「僕は正解を教えへんで」
「え?」
「正解を教えるのも教育なら、正解を教えへんのも教育なんや」
「そうなんですか?」
「コーチングって言うてな、まあ……ティーチングと違う教育方法やねん。相手に正解を出させる、相手が正解を出せるまで待つということや。正解を考えて悩むのは大人として成長してる証拠や。大人になるにつれて、簡単に正解がわからない問題が増えてくるねん。せやから、今、レ〇ナさんは同じ年頃の子達よりも早く大人になろうとしてるということや」
「ああ、そうなんですね」
「それに、正解が1つじゃない場合もあるしなぁ」
「あ! そうですね」
「わかってくれた?」
「わかってきました」
「わかってもらえたところで、ええこと教えたろか?」
「はい」
「ほな、元気になれる秘訣を教える。僕を食べてや、僕を食べたら元気が出るで!」
「は?」
「レ〇ナさん、食欲が無くなってるから心配や。僕を食べて元気になってくれ」
「食べれません」
「ん! なんでや?」
「こんなにペラペラ喋るオムライス、気持ち悪くて食べれませんよ」
「ほな、食べられてる間、僕は黙っとくから」
「今頃黙られても遅いです」
「食べたらええこと教えたるわ」
「う……」
「教えて欲しいやろ? めっちゃええ話やで」
「食べます」
「最後の一口になったら、ええこと教えたるわ」
「……」
「最後の一口ですよ」
「よく食べた! 食べな元気が出えへんからなぁ。ほな、教えるわ。レ〇ナさんは将来歌手になれるねん」
「歌手?」
「うん、5年以内にはデビュー、10年後には人気歌手や-!」
「本当ですか?」
「ほんまや、せやから、大丈夫やで。今の苦しみが終わる日が来る! 苦しんだ後には明るい未来が待ってるんや」
「オムライスさんは、なんで未来のことがわかるんですか?」
「オムライスは時空を超越した存在なんや! そもそも、喋れるオムライスってスゴイやろ?」
「スゴイです」
「そんなスゴイ僕が言うてるんや、間違いない!」
「わかりました、夢みたいです」
「ほな、最後の一口を食べてや。レ〇ナさんに食べてもらえて良かったわ」
レ〇ナは最後の一口を食べ終えた。それから2階の自室に戻った。階段を上る足取りは、少し軽くなっていた。
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