第4話 開戦
大陸暦1025年9月1日 ヨーシア大陸中南部 アルミリア共和国
ヨーシア大陸の東半分は、ユースティアを含む大小14か国の国々で成り立っている。うちウェスティシアと国境を接するアルミリア共和国のある街で、一人の少年が家から出てくる。
「行ってきます」
「気を付けてね!」
玄関から見送る母親にそう声を掛けられ、少年は自転車を漕いでいく。この日は彼の通う小学校の後期学期始業日であり、彼は朝早くから登校する最中だった。
とその時、遥か空の向こうから轟音が聞こえ始める。空を見上げると、幾つもの航空機が空に舞い上がり、急旋回を繰り返しながら空戦機動を繰り広げているのが見えた。
「凄い…」
少年はそう呟きながら、空で繰り広げられる戦闘に見入る。
・・・
9月2日 ユースティア連邦共和国 首都キヴォトスA.D.
統合参謀本部の大会議室に、数十人の将官が集められる。彼らを集めた富樫は、その理由を述べ始めた。
「先程、ウェスティシア共和国の国務省より、ヨーシア大陸全土に対して宣戦布告が成された。共和国軍は既に国境を接する4か国に対して侵攻を開始し、その勢いはとどまる事を知らない」
「これを受けて、大陸諸国のうち6か国は降伏を決定。4か国は徹底抗戦を主張したが、戦局は絶望的と見ていいだろう。政府はこれを受けて第一級警戒態勢を発令。我が軍もこれに備えつつ、これを迎え撃つ」
富樫はそう言い、佐々木に目を向ける。そうして取り出したのは1冊のレジュメ。
「ここに、佐々木中尉が立てたシミュレーションプランがある。『シャーレ』は兵棋演習を用いた検証を行い、万が一の事態に備えたプランを用意してくれている。これを参考に、迎撃計画を立案していく。近々、友好国からも援軍の要請が来るだろう。これも加味しつつ、祖国防衛の義務を果たしてもらいたい」
『了解!』
敬礼の後、解散する。佐々木もその場から退室しようとするが、そこに富樫が話しかけてきた。
「佐々木中尉、君は兵棋演習にて貴重なシミュレーションデータを提供してくれた。これから連絡小隊を連れてアビドス州の陸軍西部方面軍司令部に赴いてくれ」
「了解しました。しかし、私の様な若者にこんな大役を任せるなど…私よりも経験の多い者がいるでしょうに」
佐々木の言葉に、富樫は苦笑を浮かべる。
「経験以上に、他者との確執が多い。君の様にどんな軍種相手にも分け隔てなく接する事の出来る者が今のユースティアに必要なんだ。ここからが忙しくなる、気を付けておけ」
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