第10話 復讐のはじまり
朝日が昇ってくる。
夏、時刻は午前5時。
私は目の下に真っ黒なクマをこさえてしまっていたが、しかし目だけはしっかりと冴えていた。
「できたできた……とうとうできた……!」
ろうそくの燃え尽きた手持ち用の燭台を片手に、床に置いた黒い表紙の古びた本を覗き込んだ猫背のままで、私の口から出るのは感極まった声だった。
でも、それも仕方あるまい。
10か月かけてようやく解読することのできた古い文字と文法で書かれた魔本。
そこに書かれていた魔術固定化の術式の作成方法を利用して、生活魔術のシステム化に成功したのだ。
「ふふふ……ハハハ……ッ! やった、やったぁっ! あははははっ!」
完徹したからか、テンションがおかしい。
その自覚はあったけど、しかし笑い声は止まらない。
私の目の前には片方が空で片方には水の入っている2つのグラス。
それらは、誰が触れるわけでもないのにもかかわらず自動で、しかも何度も繰り返して、水を交互に移し替えるというだけの単純作業を黙々と行っていた。
それがどうしたというのかって?
どうってことないじゃないかそのくらいって?
いいや、これこそがすべての始まり、記念すべき第一歩なのだ。
……そう。だってこれを応用すればきっとどんなことだってできるに違いないもの!
ごきげんよう。私、シャルロット・ディルマーニと申します。
少し前に対してめでたくもない誕生日を迎えて7歳となりました。
いまだに隙を見て肉体的な虐待を行おうとする兄たち、
悪い方向で育児に情熱が入っている父親、
それを見て見ぬふりの使用人たちに囲まれて、
相変わらずのストレス過多な環境で生活しております。
ああ、なんて嘆かわしく肩身の狭い日々だったでしょうか。
ですが、それも今日で終わり。
──この不自由に、不平等に、これから私は復讐するぞっ!!!
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