第二話 谷姫仁玖の日常

 谷姫たにひめ仁玖にく、笑顔ヶ丘高校生の1年B組。

 あだ名は谷姫を『やき』と読めるため、やき、もしくはやきにくと言われる事も。

 放送科を選択して、部活は陸上部に所属をしている。

 中学年の成績は体育以外は普通くらい。

 ほぼ常にハイテンション、面白い事には首を突っ込む。


 弱点なんて見当たらない、彼女は完璧な配信者の卵。

 ではく学校に遅刻してしまう日が多い。

 だが他の人との約束は絶対遅れない。

 今日も慌ただしい一日が始まる。


「おかあちゃん! 何で起こしてくれなかったの!?」

「ちゃんと起こしたよ! アンタ、焼肉のぬいぐるみを寝ぼけてかじってたよ?」

「人の焼肉パーティー覗いてねんじゃねぇ!」

「そんな事言ってないで、学校に遅れるよ!」

「ちくしょう! 今日の焼肉は!?」

「今日はローストビーフだよ」

「うぇ!? 豪華じゃん!? どったのさ!?」

「今日は、おじいちゃんとおばあちゃんの結婚記念日よ」

「ああああ! これは部活終わったら、即効帰ってくる」


 そしてやきは行儀悪く、ローストビーフを口にくわえた。


「手で取るんじゃない!」

「だって時間無いんだもん! 行ってきマッスル!」


 こうして仁玖は家を出る。

 これが彼女の家を出るまでの日課だ。


「あら谷姫ちゃん、今日はローストビーフかい?」

「八百屋のおばあちゃん! 今日は私の祖父達結婚記念日なんだ! 後で野菜買いに行くね!」

「ああ、待ってるね」

「よう! 仁玖ちゃん美今日も遅刻かい?」

「あ! おっちゃん! 魚も買いに行くね!」


 商店街の人達との日常的な会話、彼女は商店街の人達にはアイドル的存在だ。

 焼肉を小さい頃からくわえて、登校している女の子として認識されている。


「っしゃ! 陸上部の本気みせたるわい!」


 こうして学校に登校するのが、仁玖の日常だ。

 

「っしゃ! ギリギリ!」

「おい! 谷姫! またギリギリか!」

「先生勘弁して! 今日はローストビーフだったの!」

「遅刻ギリギリの理由にはならん! さっさと座れ!」


 これも日常、遅刻ギリギリでやってきては先生に怒られる。

 そして、つつがなく授業が進み、昼休み。

 お弁当の日は、親友の、駒沢こまざわ馬子まこと一緒に食べる。

 だが普段は時間が無いから、学食になる。

  

 ときどき馬子からお昼ご飯を誘われる、馬子は毎日お弁当。

 そして、昼食を馬子誘われた日は、必ず遅刻はしない。

 親友との約束だからだ、だが馬子に誘われる事はほとんどない。

 やきから誘ってもほぼ断られる、馬子は一人で食べたいのだ。


「今日は何食べようかな~やっぱりあたりめ定食かな、口臭ケアしとこ」


 彼女はあたりめが好物だ、それにお母さんが作った牛100%ハンバーグ。

 ちなみに部活のエネルギー補給として、お菓子のビックスターを食べている。

 昼食が終わって午後の授業も終えて放課後。

 いよいよ陸上部の部活の時間だ。


 タンクトップに短パン、陸上部のスタイル、短距離用のメニューをそつなくこなす。

 こう見えて仁玖は期待の新人、先輩達からの期待も高い。

 

 部活終了後、仁玖は急いで自分の家に向かった。

 今日は、おじいちゃんとおばあちゃんの結婚記念日。

 孫として祝わなければ、ダッシュで商店街を走っていると。


「仁玖ちゃん、野菜持っていきなさい、お金はいいわよ、結婚記念日なんだって?」

「ありがと! おばちゃん!」

「ほらよ仁玖! 魚持っていきな!」

「おっちゃんもありがとう!」 


 それからも商店街の人達が色々と渡される、仁玖が可愛いのだろう。

 色々と持って家に帰宅すると。


「あんた! それどうしたの!?」

「商店街の人達が、結婚記念日のお祝いにって」

「ありがとうは言ったの?」

「もちろんだよ!」


 この後は、おじいちゃんとおばあちゃんの結婚記念日は豪華なものになった。

 これが谷姫仁玖の日常だ、結婚記念日という特別はあったものの。

 一日のサイクルはほぼこれで回っているのだった。

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