第3話 勤務時間
「キノコ注意報?」
出社した
「ええ、なんでも、俺がスーパーで買ったキノコに、毒の入ってるやつが紛れ込んでたみたいなんすよ。メーカーに電話したら、賠償させてくれって言ってくれたのが、せめてもの慰みですけどね」
「ははっ、おまえもついてないなあ、片瀬! そのなんとかセットだかっての、買ったのおまえだけなんだろ? いくらなんでも、くじ運悪すぎじゃね?」
中村は肩を揺らして笑っている。
それを見た片瀬はひどくうんざりした。
「もう、せんぱ~い、勘弁してくださいよ~。おかげでこっちは朝っぱらから最悪の気分なんすから~」
「まあ、キノコ注意報だかなんだか知らんけど、悪いことが起こったあとにはいいことがきっとあるって!」
「無責任だな~」
中村の態度に、片瀬はもはやあきれ返っている。
「ま、人生山あれば谷ありってな。それより、昨日のデータ見ただろ? 俺らの張った広告、アクセス数うなぎのぼりじゃん。こりゃ、アドセンス効果もウハウハだろうぜえ」
「それよりって……まあ、確かに爆上がりでしたよね。この調子なら、今年中にはうちも軌道に乗っちゃったりとかするんじゃないっすか?」
「お、うれしいこと言ってくれるねえ! まあ、それも夢じゃない流れだわな。さっきだって、新しいクライアントから連絡が来たばっかだし」
「マジっすか? いい感じですねえ。で、どんな案件っすか?」
「ああ、この近くで農家ビジネスを始めたっていう、新規就農の起業家さんらしいんだ。俺らとは同年代くらいだな。ホームページを立ち上げたいから、相談に乗ってくれってことらしいぜ」
「農家ビジネスって、まさか……」
「ああ、シイタケ農家さんだってよ」
「シイタケ……」
「そうだ、おまえちょっと行ってきてくれよ。俺はこのあと、別のクライアントさんの相手をしなくちゃならなくてな。昼飯は自家製のシイタケ料理をおごってくれるってよ。おいしいキノコを召し上がれ、だってさ」
「ま、マジか……」
「その、キノコ注意報だっけ? ただの偶然だって。そんなの気にするだけ損だぜ? さ、さ、早いとこ頼むぜ。依頼料はよろしく言っておけよ~?」
「は、はい……了解っす……」
こうして片瀬は、近隣のシイタケ農家へと向かったのである。
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