第12話 諸悪の根源女神様
帰宅したぞー!!!
さっそく夕ご飯を作っていきます。まずは材料として、鹿と帰りに狩った牛、それと適当な調味料を用意して下さい。ちなみにここにはありません。だって買うところないし。
そしてそれをなんやかんやしてあーだこーだして最後にぽーんってします。そうして完成したものがこちらです。
ホカホカと湯気を出し、食欲を唆るその見た目は…紛うことなき、チャーハンであった。
…なんでチャーハンが出来てるのかって?知らねぇよ。制作者曰く日織'sマジックとのことらしい。
「日織ちゃん…鹿と牛、どこいった?」
「……君の様な勘の良いガキは嫌いだよ…」
「嫌いとか言っちゃいけませんよ?」
「あ、はい。でもこれそういうネタで…」
「…そうなんですか?…独特な文化ですね」
「…異世界出身の言葉が突き刺さるよ…」
「ルナちゃんの悪意の無い刃が喉元切り裂いていったよ…」
ネットミームって確かに変なの多いけど…このミームはかっこいいんだよ!ほんとに!
チャーハンをもぐもぐしながら話を続ける。
「ていうか日織ちゃん、300年経ってるけど覚えてるって凄いね。」
「これは使うタイミング!って急に思い出したんだよね」
「あ〜、学んだことは体が覚えてるって言うしね…人間って凄いわぁ…」
昔聞いたことあるな。勉強するってことは自分の引き出しを増やすことで、真剣に見聞きしたことは同じことがあったとき思い出しやすいって…まぁ皆勉強しようね。私は…うん。そこそこだよ、そこそこ。
「あ、そうだ。日織ちゃんに聞きたいことがあるんだった。」
「んまぁアレのことだよね」
「うん。日織ちゃんが変身した時に感じた魔力とは別の力。あれって何?」
「う〜ん…説明するってなると難しいな…あれは…今のところウチだけの固有のエネルギーかな。」
「固有の…それってどんな?」
「えと…魔法少女って怪人とか怪獣とかに対抗する存在じゃん?この種族の場合魔力が怪人のポジションになって、それに対抗する力…魔力に有利を取れる力って感じかな?」
「それって…強くない?」
「どうなんだろ?あんまり使わないから分かんないや」
日織はあまり分かって居ないが、日織の使える力はかなり強力である。魔力とは違うエネルギーかつ、魔力に対抗する力。日織がドラゴンに勝てたのも、この力のお陰と言っても過言ではない。というよりこの力のお陰だ。
ドラゴンの鱗は魔力を弾く効力があり、魔法が通じない。もちろん剣などの武器も同様に。しかしこの力、便宜上マナと呼ぶことにするが、マナはその鱗の効力すら貫通して攻撃出来る。それは他の、魔力を持つ生物全てに共通することであり、つまりマナの真意は
魔力を持つあらゆる生物への特効
なのである。あの悪夢の日、日織が望んだことは魔法少女になりたいという思いと目の前の男達を殺してやりたいという強い思い。日織の進化した種族は、その思いを十分に発揮させた超攻撃特化アタッカーなのである。
「ふへぇ…魔法少女って強いんですねぇ…」
「結構強く描かれてることが多いように感じるねぇ…」
「まあ小さい子の憧れだからねぇ」
やっぱ小さい子が憧れるのは超強い女の子だよねぇ…え、私だけ?まさかぁw人間なら誰しもが通ってきた道ですよ?
「…そろそろ完全に夜になるね…お墓の術も発動出来るようになるよ。」
「お〜…ちょっとドキドキしてきた」
「私もです…幽霊と会ってるみたいなものですからね…」
「あはは、全然怖くないから安心して〜」
謎の力で出てきたチャーハンを食べ終わった後、片付けしたり食料保存したりしてたらすぐに夜になった。早いね〜ってことで、私達は今お墓の前に来ています…
「おー…中に魔法陣が固定されてる感じなんだね〜」
「すごく複雑な模様です…あっちの世界だと魔法使いが何十年も研究してやっと出来るレベルです…しかもこの魔法陣を貼るのに複数人いるタイプの…」
「そうそう。
「へぇ…結構便利だね………これ蘇生してる訳ではないんだよね?」
「蘇生する訳では無いって言ってた。確かスキルを組み合わせて、裏の世界にいる魂に一時的に可視化する肉体を作るだけだって。イメージで言うと…真っ暗闇の中の見たいものを発光させる感じとか、ステージの黒子にスポットライトを当てる感じらしい。」
「なるほどねぇ…考えられてるね…」
なんて話してたら、準備が終わったらしい。
いよいよ日織ちゃんの両親と親友さんに会う…ちょっと緊張してきた…
「準備良い?」
「うん。緊張してるけど大丈夫。」
「わ、私もです。」
「じゃあ行くよ。…【再会】」
日織が魔力を込めた瞬間。お墓の魔法陣が眩しく光出した。あまりの眩しさに目を瞑ってしまい。次に目を開けた時には、3人の人の姿が現れていた。
「…この間振りだね。日織」
「うん!ちょっと振り!美夏!それにお父さんとお母さんも!昨日は会えなくてごめんね?お客さんが来てて…」
「いいのよ。私達のことは考えなくて。あなたの好きな様にしなさい。」
「こんな世界になってから久しぶりのお客さんだな。ちゃんと歓迎しないと。」
「私達はいつも通り見てたから分かってるよ。まさかあんたが初対面の人にあの話をするなんてねぇ…」
「ふふっ…うん。私が信用出来るって思ったから。」
「ふ〜ん、そっか。あんたがそう言うなら心配要らないかな〜?…えっと始めまして、日織から話は聞いてると思うけど、私が美夏で〜す。フルは神室美夏。よろしく〜」
「あ、よろしくお願いします。私は空神楓。こっちの娘が…」
「はっ、はい!ルナ・ピースです!ルナって読んで下さい!」
「ふふっ…2人とも可愛いわねぇ…私は日織の母の
「俺は日織の父親。名前は【
「お二人も、よろしくお願いします。」
「お願いしますっ!!」
志保さんはかなりの美人さん!日織ちゃんのお母さんなだけはあるね!遺伝子強ぉ〜
透さんはダンディなオジサマって感じ!こっちもお父さんなだけあって顔が超良いっ!
そして美夏さん…日織ちゃんより身長が大きくてかなりの美少女!ギャルだ!ギャル!後なんだか日織ちゃんを見る目が…その…熱っぽい?
「こんなところで立ち話も何だし、中に入ろうじゃないか」
「あ、そうですね!風邪引いちゃいます!」
「ははは、俺達は死んでるから風邪も引かないけどね。」
「わお幽霊ジョーク。鉄板ネタですか?」
「そうだよ。知り合いの幽霊には面白いって良く言われるんだ」
「お父さん…それ愛想笑いだよ…それか苦笑い」
「え、ほんとに?…皆もそう思う?」
「えっと…割と…」
「私もそう思うわぁ〜」
「すんません、私も結構…」
「わ、私は面白いと思いますよ〜」
「ルナちゃん、時に優しさは凶器にもなり得るんだよ。こういう時はハッキリ言ってあげなきゃ」
「あ、その、えと…あんまり?」
「ぐぶぉあぁ」
透さんが吐血しちゃった。仕方ない、ここで止めねば更に被害が拡大するのだ。
「と、とりあえず中に…どうぞ…」
「お父さんしっかりして、傷は…深いけど気合いで持ちこたえて。」
「うん、パパ頑張る。娘のためだもん」
「お父さん急に幼児退行するのやめてよぉ…」
「………ぐすん」
あーあ。泣いちゃった。まぁ男1女5の状況でボコボコに言われたら泣いちゃうよね……南無。
てことで家の中に戻って来ました。今は皆でリビングの机に集まってるよ!
「さて、何から話そうかしらぁ…」
「志保さん、透さん…娘さんを私に下さい!」
「え結婚?旅に行かせて欲しいって話だよね?」
「うむ、良かろうっ!」
「え良いんですか?もっと『娘が欲しければ俺達を倒していけ!!』とか言われるかと思ったのに…」
「それは美夏ちゃんの時に消費したから満足したんだ。」
「あー!なるほど〜…え、美夏ちゃんの時?」
「あ…その私ら…付き合ってというか…結婚してると言うか…」
「ぐわぁぁぁぁ急なNTRに脳が破壊されるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!」
ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!
なんだこの尊い生物達はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!末永くお幸せに!!
「──ふぅ、ふぅ…すみません、取り乱してしまって。」
「…楓ちゃん?…もしかして日織さんのこと…」
「ち、違うんだルナちゃん!これはその…通過儀礼的なやつだから!」
「どうせ私のことなんて遊びだったんだ…ふーん…そっかそっか…もう楓ちゃんなんて知らない。勝手にどっか行っちゃえば良いんだ…そうだ。死のう。一緒に死ねばずっと一緒に居れるよね…」
「ルナちゃん?おーい。聞こえてる〜?何か不穏な言葉が聞こえたけど〜?心中は良くないよ?〜」
「あはは〜見てた時から思ってたけど、2人とも仲良いわねぇ〜まるで日織と美夏ちゃんみたい」
「ちょ!ちょっとお母さん!?」
「うん、2人は時間さえあれば場所関係なくイチャイチャしていたからなぁ…」
「お父さんまで…後お父さんがイチャイチャとか言うのちょっとキモいから辞めて」
「ぐぶぉあぁ」
まさかの吐血第2弾…透さんが不憫になってきたよ…
「あはは…賑やかな家族ですねぇ!こんな家族ならきっと楽しいですね!」
「……楓ちゃん、皆が聞かないから私が聞いちゃうわねぇ?……あなた異世界に行っていたのよね?…その、ご両親は?」
どくんと、心臓が跳ねた。この世界に来てからずっと考えなかった、向き合わなかった現実。
「親は…私が小さい頃…モンスターが出る前に死んでます。事故で。」
「それは…やっぱり悪い事を聞いちゃったかしら…」
「いえいえ!そんな事は!…私は、両親がモンスターに殺さるところを見なくて良かったって思ってます…せめてモンスターのことなんて知らずに天国に行って欲しいですから。」
「楓ちゃん…」
「…そう…ご両親が亡くなった後、どうやって生活してたかとか…聞いても良い?」
「ちょっとお母さん?」
「日織ちゃん。大丈夫。─はい、その後は親戚に引き取ってもらって…とっても優しい人達で…………………あの人達はもう亡くなっちゃったでしょうね…モンスターに…殺されちゃったか…理想は寿命ですけどね!」
あの人達のことを思うと涙が出そうになる。きっと、本当の子供同然に愛を注いでもらったからだろう。だからこそ、何も返せずに、最期も見ることが出来ずに…先に死んでしまった事が情けなく…苦しい。
「……ねぇ、まだ悩んでること…あるんじゃない?」
また、どくんと心臓が跳ねた音がした。
「はは…何でわかるんですか?エスパー?」
「これでも昔占い師やってた時期があるのよぉ」
「珍しっ!あんまり居ませんよ占いやってる人なんて…」
「それで?他に何に悩んでるの?」
言っても、良いだろうか。これは他人の事情を勝手に言いふらすことだ。できればしたくは無い。だから信頼出来る異世界の仲間にだって話したことはない……でも、ここで話して、あの子が救われるなら…
「私には……妹が居たんです。」
「妹?」
「妹というか…親戚の人の子供なので、正確には義妹ですね。」
「ふむふむ…その子が…どうしたの?」
「……重い病気だったんです…自分で歩けないくらい。余命も…私が引き取られた時には…持って5年だって…だから毎日病気に通ってて…」
「それは…」
「でも!その子は病気に抵抗していました。余命5年のところから…10年生き延びたんです。」
「…!凄いじゃない!きっと楓ちゃんの思いが通じたのよ!」
「そんな時…お見舞いの帰りに、私はトラックに轢かれました…あの子を残して。だから心配なんです。あの子が…病気で一度も外に出たことない子が、モンスターなんかに殺されてたりしたら…」
日織ちゃんに言われても、それでも考えてしまう。あの時…私が死んでいたら…
「うん、良く分かったわ…その上で話すけど、きっとあなたの感じていた罪悪感は…その子に向けてだったのね?もしかしたら寿命で亡くなるまで生きれたかもしれないのに…それを奪ってしまった。そう考えているのね?」
「そう…かもしれません…」
「だとしたら…あなたが悩むことは筋違いよ。」
「え」
「私も楓ちゃんの話を聞いていたから分かっているけど、だとしたら結局その女神とやらが一番悪いわ。」
「あの性悪駄女神が?…」
「あなたやっぱりめちゃくちゃ言うわね…まぁそう。楓ちゃんが悩んでいることは、元は全部女神が悪いの、そもそも女神が異世界転移の時説明しておけば良かったんだし、モンスターがこっちに流れてきたのも女神のミスでしょう?だったらあなたが悩むことなんて何も無いじゃない。」
「そう…ですかね。」
「そうよ。そもそも神様のやることを人間に押し付けるなって話よ。その責任は女神が取るべき。もし今呼べたら私が文句言いたいくらいだわ。」
「はは…呼ぶのは難しいですね…多分見てるト思うんで、文句は届いてると思いますけど。」
「あらほんと、じゃあ後でたっぷり呪詛を唱えておくわぁ」
「ふふ…」
面白い人だ。同時に凄い人だとも思う。私に悩みがあることを当ててきて、女神にすら啖呵を切る…私も文句言いたくなってきたな。
そうだ。考えてみれば女神様が全部悪くね?あいつが最初から説明しとけば良かったよな?もしモンスターがこっちに来たのがミスで、最初は想定されて無かったとしても、それも結局女神が悪いよね?私悪くなくね?…
「なんだか腹立って来ました!私も後で女神に文句言いに行きます!」
「その意義よぉ、良かったわぁ…楓に元気が戻って。これで落ち込んだままだったら私が余計なことしただけになっちゃうしねぇ…」
「いや…感謝してますよ。日織ちゃんにも言われましたけど、どこかまだ責任を感じてたみたいです。ありがとうございます。」
「良いのよぉ、困ったことがあったらいつでも言いなさい。私が相談に乗ってあげる」
「志保さん…」
「あの…終わりましたか?」
「完全に2人の世界だったね」
「俺達途中から別の話してたし」
「楓、長い。」
「はい…ごめんさない…」
なんで怒られたんだろう…まあ良いか。とりあえず休憩がてら、女神様に呪いの言葉を吐きに行こーっと。じゃ!
────────────────────
人が多いよっ!!!
いや自分で増やしたんですけどね?人がいっぱいいる時の会話ってむずくないですか?私自身が陰キャってこともあって、3人以上の会話の時は大体黙ってるんですよね…悲しいかな、これが陰キャよ…
てことで私は今から女神様に呪詛を唱えないといけないのでここまで
それではまた
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