第8話 魔法少女
「すっご…」
「綺麗…」
私達は今、日織ちゃんの家に来てます!!
来てるんですけど……え!?家めっちゃ綺麗なんだけど!!凄っ!
材質は主に木で、なんと言うか…秘密基地感がある!かっこいい…って、家の横にあるの…誰かのお墓?
ルナちゃんと2人で呆けてたら、日織ちゃんが玄関を開けて手招きしてきた。
「は、入って」
「えっと…お邪魔します!」
「お邪魔しま〜す!…うわぁ」
家に入ってまず目に飛び込んで来たのは、そこら中に飾られた数々の花と、彼女が倒した物であろうドラゴンの頭蓋骨。
「あの頭蓋骨って…」
「…うん。さっきの話で出た、ウチが倒したドラゴン」
「やっぱり本当だったか〜」
「いや、そんなことよりなんで玄関にそんなもの飾ってるんですか!?」
「え、だって…かっこ良くない?」
「分かる」
「分からないで下さい!」
ドラゴンの頭はロマンだよ……強い相手を倒したらその証拠を飾りたくなるんだよね〜
日織ちゃんとは趣味が合いそう…ルナちゃんにも教えてあげないとな…ロマンは最高だってことを…
「み、水持ってくるから…座ってて」
「は〜い。」
「ありがとうございます」
「…凄いね、そこら中に資料が」
「モンスターの研究…とかですかね?」
日織ちゃんの家には資料が大量にあった。比較的弱いモンスターの得意なこと、弱点、倒し方、得られる物…日織ちゃんが時間をかけて集めたであろう情報が沢山…
「おまたせ…って、それ見てたのか。」
「あ、ごめん。日織ちゃんが集めた情報だし、見ない方が良かった?」
「いや、別に良い。ただのメモだし」
「メモ?」
「うん、進化した人間がいるって言ったでしょ。で、ウチの知り合いも何人か居る。その中の研究バカに渡す用のメモ」
「研究バカ…モンスターの生態とかを調べてる人ってこと?」
「うん。種族は…あの人別に隠して無いし言って良いか…【魔女】だ。」
「魔女か…って言われても、私達種族について何も知らないんだよねぇ…」
「種族について?…詳しいことは魔女に聞いた方が分かる。一応ウチの【魔法少女】ならちょっとは教えられるけど…」
「……ねぇ、なんで日織ちゃんは私達のことを信用してくれたの?正直信じられる行動なんてしてないと思うんだよね…」
「……色々あるけど、一番は悪意を感じなかったから…ウチが捕まったのも覗き見してたウチが悪いし…」
「いや〜あれは…人間がいるとは思わなかったから擬態系のモンスターか何かと…姿を見て人間だっ!て分かったけど、その時にはもう逃げちゃったし…」
あれは本当に申し訳ないと思ってる。流石にいきなり追いかけられたら警戒するよね…反省反省。
「あの、私ずっと気になってるんですけど、魔法少女ってなんですか?魔法を使うってことは分かるんですけど…」
「あそっか。ルナちゃんは異世界出身だし魔法少女って言っても分からないよね」
「え、待って。異世界ってほんとにあるの?」
「う〜ん一旦異世界について話てからこっちの話しようか。」
「そうですね。このままだと話がごちゃごちゃになりそうです。」
「…そうだね。まずは異世界の話をお願い」
ということでまずは異世界の話からすることになりました。
「まずなんで私が異世界に行っちゃったのかから話すと、まぁ幼女庇ってトラックに轢かれましたハイ。」
「うわテンプレ…そんなことほんとにあるんだね…」
「それで、気づいたらなんか真っ白な空間に居て、そこで偉そうな駄女神に会ってね…その女神様から、『この世界に巣食う邪悪を滅しなさい。そうしたら、あなたを元の姿のまま世界に返して上げましょう。』とか上から目線で言われたの!超ムカつかない!?」
「楓ちゃん…女神様にそんなこと言っちゃ─」
「何それ超ムカつく!!」
日織ちゃんはこの苛立ちが分かってくれるか!ありがとう…いつかあの駄女神殴りに行こうね…
「それで結局
「それは凄いね…だけど?」
「帰って来たら300年経ってて世界滅びてました!しかもその原因は私が異世界に行ったことでモンスターが流れ込んだからでしたときた…」
「それは…」
「本当に…罪悪感でいっぱいだよ。私があの時女神様の話を受けずに、そのまま死んでいればって…」
「楓ちゃん…」
はぁ…本当に…また罪悪感が湧いてきた…
日織ちゃんもいきなり日常を奪われて怒ってるだろうな…って思ってたんだけど…
「…………いや、楓のせいじゃない。少なくとも今の世界で、モンスターを恨んでる人間は恐らく存在しないし、なんならウチは感謝すらしてる。そもそも楓の話から考えるなら楓は悪くない。こっちにモンスターが流れ込んでくるリスクを考えられなかった女神が悪い。」
そんなことはなくて、私は悪くない…女神が悪いと…しかも日織ちゃんだけじゃなくて世界中の誰も恨んでないと言われた…その言葉でちょっと救われた。
「楓ちゃん?どうしました?」
「楓…大丈夫か?」
「え?何が?」
「涙が…」
「えっ、あっ…」
なんてこった!平気なはずなのに、私の意志とは反対に涙がどんどんと……思ってたより、私は弱かったみたいだな…図太いのが私の取り柄だと思ってたのに。
「ごめんごめん。なんか勝手に涙が…あれ?おっかしいな〜」
「さっき言った通り、楓は悪くないし誰も恨んでない。だから1人で抱え込むなよ」
「何かあったら私にも相談して下さいね…パーティーとか以前に…私達は友達なんですから」
「……うん、わかってるよ。ありがとう2人とも」
「それなら良かった。」
「いっぱい相談して下さいね!」
ルナちゃんも日織ちゃんも…優しいな…なんか、この世界に来てずっと感じていた重りが軽くなった気がする。
「ごめんね…もう大丈夫。日織ちゃんは異世界について、何か質問ある?いやいっぱいあると思うけど。」
「今は辞めておきたいかな…後で教えてよ」
「分かった。それじゃあ次は日織ちゃんのことについて教えて?」
「…分かった。それじゃあ種族と魔法少女の説明からだね。種族って言うのは…簡単に言うと望むことで得意なことに特化した進化をした人間のことだ…って魔女が言ってた。」
「得意なことに特化?」
「あぁ、例えば
「なるほど…特化ね…じゃあ日織ちゃんは?」
「ウチの【魔法少女】は、普段は特に普通の人間との違いは無いけど、権能である【変身】を使うと身体能力の向上と特殊な魔法が使えるようになる。」
「…あの…魔法少女って結局なんです?」
「あ、ごめんねルナちゃん。魔法少女って言うのは…まぁ創作の世界で、怪獣と戦ったりするために不思議な力を使って普通の女の子が変身して戦うもの…かな?」
「なるほど、つまり日織さんはその創作を元にして進化したと。」
多分普段変化が無い代わりに、変身した後は他の種族より強って出来ることも増えるとか…そんなとこらかな?
後私はもう一つ気になってることがあるんだよね…
「ねぇ日織ちゃん。さっき種族は望むことで進化出来るって言ったよね」
「ああ、言ったね。」
「
正直言えば、私の危機察知の勘がこれは聞かない方が良いと言ってる…だけどそれ以上に、ここに日織ちゃんの異常なまでの怯えと怒りの理由があると思ったし、そうだとしたら放ってはおけない…私は日織ちゃんともう友達だと思ってるから。友達なら協力するのが当然だからね。
「……………この話は、あまり話したく無いし…思い出したくもない……でも、2人なら…話せる…かもだから…ちょっと心の準備をする時間をちょうだい?」
「うん。分かった。無理はしないでね。」
「分かった。」
……深呼吸を始めた日織ちゃんはやがて、重い口を開いて話し始めた。
「…これを話すには、ウチの過去から話さないといけない。ちょっと長くなるけど…聞いてくれる?」
「もちろん。」
「ありがとう。…始めるね。あれは──」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「あつ〜い…」
「この暑さは異常だね〜」
その日は夏の暑い日で、高校終わりにコンビニでアイスを買って、食べながら帰ってた。
となりには幼馴染で親友の、
「明日の小テストってさ〜」
「え、小テスト?」
「まじか日織…あんたこれ以上評価落としたらやばいよ?」
「……助けて下さい…アイス1本」
「う〜ん、アイス2本」
「……アイス1本」
「2本」
「…はい…2本奢ります…」
アイス2本要求してくるようなやばいやつだったんだよね…非人道的。人間のやることじゃないよ…え、私が悪い?うるさいうるさい
「それで──うん?」
「?日織、どうした?」
「いやなんか…視線を感じたような」
「あんた可愛いから見られてるだけでしょ」
「そんなこと言ったら美夏だって可愛いじゃん」
「んなっ///」
「へっ、照れてやんの」
「お前ボコすぞ」
「や〜ん怖い〜」
「てめっ!!」
こんなこと言ってても許されるくらい私達は仲が良いの……ちなみにこの後ボコボコにされた。親友なら何やっても良いって聞いたことあったのに…
「う〜んでも、なんか気持ち悪い視線だったんだよねぇ」
「ふ〜ん、ストーカーとか?何かあったら私に言いなよ」
「わかってるよ〜」
思えばこの時から、私の平穏な日常は崩れていってたのかもしれない。
それからも度々違和感を感じてはいたんだけど、明確にやばいって思ったのは1ヶ月が経った頃。この日美夏は用事で先に帰っちゃってて
「うぅ〜遅くなっちゃった。早く帰らないと……ん?」
いつも通りの帰路を辿って、いつも寄ってるコンビニを横目に歩いてた。そしたらまた、嫌な…変な視線を感じたから、周りを見渡したの。またこれか…って。
「はぁ…ほんとにな──に─」
でも、その日は違った。視線の方向を見ると、明らかに怪しい男がこっちをニヤニヤしながら見てた。ゾワって、全身に鳥肌が立って、気持ち悪くて、思わず走り出しちゃって……無我夢中で走ってたけど、息が苦しくなって後ろをみたら、そいつもついて来てて…もう声も出なくなって、家が見えた瞬間飛び込んじゃったよね…
家に入って初めは、良かった、助かった。って思ったけど、すぐにやらかしたって思い至った。ストーカーだとしたら最悪、家を知られてしまった。もう知られてた可能性はあるけど、それでも確定で知られてしまったのは恐怖でしかなかった。本当に怖くて、そこから一歩も歩けなくなって、そのまま玄関にへたりこんじゃって…美夏の言葉を思い出して、すぐに通話をかけた。
「み、みかぁ…」
『…どうした?何かあったの?』
「へ、変」
『変?何が?』
「ちがっ…変な男に追いかけられて怖くてそれで─」
『日織。落ち着いて。今どこ?』
「い、家に入っちゃって…多分家を知られた…」
『…やばいね。分かった。近くに交番あるからちょっと行ってくる』
「待って…通話は繋げたままにしてて…」
『うん、分かった。とりあえずカーテンと鍵ちゃんと閉めてね』
「……うん。」
美夏はそれだけ言うと、通話を繋げたまま走りだした。怖くて腰が抜けちゃった私の代わりに、美夏が警察に行ってくれることになって、私は本当に安心した。とりあえず私は部屋に這って向かって、布団を頭から被って縮こまった。どのくらい経ったか分からないけど、スマホからまた美夏の声が聞こえてきて。
『すいません。ちょっと相談が』
『何ですか?』
『日織が…親友がストーカーに遭ってるかも知れないって』
『はぁ…そうですか』
スマホから聞こえてきた声にカチんと来た。本気で怖かったのに何その反応。言ってやりたかったけど、その警察が男の人ってこともあって声が詰まってしまった。違うことは分かってても、男の人の声を聞くだけであの気持ち悪い男が頭に浮かぶから。
『…日織。説明出来る?』
「……うん。大丈夫」
『ああ、今話してるのねじゃあどうぞ?』
「……はい。最初に違和感を感じたのは1ヶ月前で、気持ち悪い視線をそこから度々感じて…それで今日。1人で帰ってたら変な男がニヤニヤしながらこっちを見てて…それで…怖くて逃げたら…おい、追いかけられましたっ…」
『…ということなんです』
『はぁ…《《気のせいじゃないの》?』
『「………は?」』
『あのねぇ、居るんだよね。そういう自意識過剰な人。ただ道が一緒だっただけでストーカーだっ!って騒ぐ人。』
「そんなんじゃ!」
『ふざけんな!』
『だいたい、証拠が無いでしょ。証拠が。』
「しょ、証拠?」
『証拠がないなら動けないねぇ…あなたの気のせいかもしれないし』
何を言ってるのか、分からなかった。変な視線を向けられて、追いかけられて…それでこの対応?さっと血の気が引いていくのを感じながら、警察官の言葉が頭の中で反響していた。
『気のせいじゃないの?』
気のせい?本当に?…いや、そんな訳ない!確かに追いかけて来てたし、じゃなかったら走ってた私の後ろまで来てるなんてありえない!!でも証拠…そんなものは無い。視線を感じて追いかけられた。言葉にしてみたらそれだけ…証拠に出来る物がない。
『て─てめぇ!!!』
『うわっやめろ!』
「美夏!?何してるの!?」
『親友が苦しんでんのにその言葉はねぇだろ!!』
『出ていけ!公務執行妨害で逮捕するぞ!』
『あぁそうするよ。2度と来ねぇ!!』
ガシャガシャと何かが落ちる音の後、美夏は怒って交番を出た…のだろう。
「美夏…」
『日織、ごめん。余計苦しませた』
「わ、私は大丈夫だから」
『とりあえず。今日は家から出ないで。それに親が帰って来るまで鍵かけて部屋に居て。あとは…明日からの学校…どうする?』
「……学校…」
『休むなら先生にはそう言っとく。』
「…美夏…行きたいって言ったら一緒に行ってくれる?」
『うん。日織がそう言うなら一緒に行く。』
「…………行く。皆に心配かけたくない…」
『……分かった。親さんとはちゃんと話しといてね。』
「うん…美夏、ありがとう。」
『良いよ。それより謝りたいくらい。一緒に居てあげられなくてごめん。』
「ううん。私の代わりに交番行ってくれたし。今もこうして心配してくれるし。…本当にありがとう。」
『……うん。また何かあったらかけて。』
「分かった。じゃあね。ありがとう。」
美夏が居てくれて良かった。親友の声を聞くと安心するし、私の代わりに色々やってくれたし…はぁ…明日から心配だな…
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