第7話 大穴の謎

「そういえば楓ちゃん。情報は今も集めてるんですか?」

「……一応ね」


どうも楓です。現在長野県に入った辺りで、少し休憩してたところなんだけど…

遂に来てしまいました。この質問が。


「一応…というと?」

「世界中の情報な訳だから、1日に1週間くらい調べられたら良いな〜くらいじゃん?どのくらいにニュースも更新出来なくなったのか分からないからモチベーションがね…」

「へぇ…つまりサボってると…」

「違うよ!違う!断じて違う!サボってるわけじゃなくて…その…げ、元気を貯めてるんだよ!ほら、明日から本気だすって言葉あるじゃん?」

「知らないですよ…ていうか私にもスマホの使い方教えてくれれば一緒に調べますよ?」

「う〜ん…それも良いんだけど…出来ればルナちゃんの分も欲しいよねぇ。仕組みが分かればどうにか出来るかもだけど。」

「とりあえずそれまではお預けってことですか?……ずるい」


あぁ!むくれないでぇ…

ぐぬぬ。ルナちゃん…悲しそうな顔をすれば私が言う事聞くと思ってぇ…


「いっぱい教えちゃう!」(そんな顔してもだ〜め!)

「やった〜!」


………あれ?今本音と心の声が逆になってたような(汗)…

んんんんんん〜?

や、やらかしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!


「待ってルナちゃん今のは違う!」

「え?…教えてくれないんですか?…嘘、付いたんですか?…」


うぐぅ…可愛い…

……あれ、今思ったけど別にルナちゃんに教えるの断る理由ないな。…もしかして私、ムキになってた?


「…う、嘘じゃないよ!いっぱい教えてあげる!いつかルナちゃんのスマホも用意しようね!」

「はい!分かりました!!」


さて、これで絶対ルナちゃんのスマホを用意しなければいけなくなりました。

どうしようか…女神様に頼む?いや〜あの駄女神が素直にくれるかな…作れる人探す?いやもっと無理だな〜。そもそも人が居ないし。

……あれ、もしかして結構ピンチ?女神様に頼むのが一番早そうか…でも頼む方法が無いよねぇ…ちなみにスマホの連絡先にも無かったよ。ちゃっかりしてないか期待してたんだけどなぁ。


「とりあえずその話しはまた今度ね。じゃあそろそろ進もうか。」

「分かりました。」


今考えても仕方ないし、ゆっくり出来る時にまた考えよ〜


ーーーーーーーーーーーーー


「わぉ…なんだこれ…」

「デカい穴…というか周りの状況を踏まえると戦闘痕ですかね?」

「でもところどころ草生えてるし、それに生命力に満ちてる。あそことかヒャクネンソウ生えてるし…結構前の痕跡だね〜」

「そうですね…」


次の街に着いたんだけど、なんだろう。めちゃくちゃデカい穴が街のど真ん中にあるんだよね……詳しく言うなら、直径1キロ無いくらいの大きさ。これだけなら隕石でも落ちたのかな?って考えてたけど、周りにも小さい穴があるし、建物も粉々。幸いなことに結構前のものらしいけど、なんなんだこれ?まるでドラゴンが戦ったみたいな…


「…考え過ぎかもしれないけど、一応警戒して進もうか」

「そうですね…でも強い気配は感じないんですよね〜」

「本当に謎だね……ここで何があったんだろう」


謎は残るけど、とりあえず先に進むことにした。2人でも一応は勇者パーティーだし?いざとなったらヨルも居るし?ドラゴンでもギリギリ勝てるでしょ。


─で、とりあえず進んでみて、今は街の中。


「う〜ん何も無いね。」

「やっぱり考え過ぎだったんでしょうか。」

「ん〜何かありそうな気はしてるんだよね…」

「まぁ楓ちゃんの勘は良く当たりますからね…警戒して損はないです。」

「いや〜でもこれ外れてるっぽい…お?」

「?楓ちゃん、どうしました?」

「うん?いや…視線を感じたから、モンスターかと思って…あれ、居ないなぁ…」

「もしかしたら透明化…とか?」

「無くはないよね…」


う〜ん。なんだこの違和感。絶対何かあるって私の勘が囁いてるのに…なんなら実際私も視線を感じてるし…何も無いってことは無いと思うけどなぁ…やっぱり透明化で見られてる?


「あ、楓ちゃん。あっちにモンスターが居ます。多分コボルトですね。」

「ん…コボルトか。連携取られると面倒だから出来れば魔法で…あ、風魔法使ってみても良い?」

「風魔法…ですか?…あ、そういうことですか。では、お願いします。」

「よ〜し、行くよ〜」


【風刃】

【風流】


生成した無数の風の刃は、速度を上げながらコボルトの群れに向かっていった。コボルトが魔法に気付き、こちらに視線を向けた時には…既に飛来していた無数の刃に切り刻まれ、群れは全滅した。

そしてここからが本当にやりたかったこと、【風刃】と同時に【風流】を発動。これはいわゆる探知魔法という奴で、もし何者かが透明化して見ていたとしても【風刃】で気付かれずに探知することが出来る。

風の流れを感じる。違和感のある場所を探す

………………やっぱり居る。私達の左斜め後ろの茂みの中………え?……………正確には分からないけど…人間の形をしている?


「…一応居た。私達の左斜め後ろの茂み」

「一応?…どうします?不審ですし、攻撃してみますか?」

「…モンスターなら良かったんだけど、人間の形をしてる…気がする。」

「に、人間?擬態系モンスターとかですか?」

「…ルナちゃん。捕縛魔法使えるよね?昔盗賊達に使ってた。」

「はい。捕まえますか?」

「お願い。私が追い詰めるから。」

「分かりました。」


明らかに不審な人物……人間だったら話しを聞きたい。何か事情があるかもしれないし…

ということで、話しがまとまった瞬間。私は茂みに向かって走りだした。


「………!!!!」

「ガサって言った!やっぱり誰か居る!」

「楓ちゃん!魔法の距離は1mなので、どこかに追い詰めて下さい!」

「分かった!」


ルナちゃんにお願いされたら頑張るしかないね!とりあえずここは街中だし、どこか路地裏にでも追い詰めたいな。探知し続けないと見失っちゃうからかなり重労働だな…

って、お?


「あれ、魔法解いた?…ってやっぱり人間?ちょ、ちょっと待って!」

「…………」

「あ〜ちょっと話を聞いて〜」


魔法解いたっぽい。そして路地裏の方に逃げたから全力で追いかける!

何者かは分からないけど、とりあえずは話し合えるまで持って行かないと!


「まって!」

「…………」

「やばい…土地勘無いから全然分からん。これ無理じゃない?」


どこが行き止まりでどこが行けるのか分からないよ〜…っあ!こんな時のスマホじゃない!?えーっと地図アプリで上から見て…

お、行ける!やっぱ高性能だなこのスマホ… 


「よ〜し、これで負けないよ〜!」

「………っ!」


ふふふ…困惑してる…ちょっと逃げ辛くなったのを感じたかな?こっちは魔導具チート使ってるからね〜


「っ!【───】」

「捕まえ…ってあれ?消えた…また透明化使った?」

「…………」

「ん?あっ!なんであっち!?も〜分かんないよ…」


やばい…まじで分かんない…

あっ、路地裏なら"アレ"が有効かも!


氷壁アイスウォール


魔法を使った瞬間。辺りの温度が下がり、不審者ちゃんの前に分厚い氷の壁が現れる。


「…っ!」

「これで逃げ場は無いよ…落ち着いて話し合いしよ?」

「……【──】」

「また透明──」

「させません!【捕縛】!」

「っ!!!」


不審者ちゃんがまた魔法を使おうとした瞬間。近くに隠れていたルナちゃんが捕縛魔法を使って捕まえた。不審者ちゃんは現在、魔法で出来た縄でぐるぐる巻きにされている。いや〜まじで無理だと思ったのにやるな〜ルナちゃん。


「流石だねルナちゃん!」

「いえいえこれくらい…それよりも…」

「─っひ…やだ…殴らないで…」

「いや、殴らないよ。それより君だよね。この街に入った辺りから見てたの」

「……はい」

「…とりあえず安全に話せるところに行こうか。」


すっかり怯えちゃったから、とりあえず場所を変えることにした。確かに怪しかったとは言え、急に追いかけられたりすれば怖いか…

私達は近くのそこそこ綺麗な家に入り、再び話を始めた。


「えっと…急に追いかけて、怖がらせちゃってごめんね?」

「……ひっ。な、何者だ…自動人形オートパペット…じゃないよな…」

「あはは…やっぱり警戒されてるね…じゃあ自己紹介しよっか!私の名前は空神楓。」

「私はルナ・ピースと言います。」

「あなたのことも色々聞いて良いかな?」

「…………ウチは…御影日織みかげひおり

「日織ちゃんか〜。良い名前だね。」

「別に…」


ここで日織ちゃんの見た目紹介〜!

え〜日織ちゃんは…超可愛いです!さっきも言った通り綺麗な黒髪で美少女!さっきまではローブを着てて分からなかったけど、ローブ脱いで貰ったらなんか…魔法使いっぽい?そんな感じの服装。ホ◯ワーツって言えば分かる?あ、拘束は解いたよ。自己紹介したし、友達見たいな物じゃん?…え、違う?まぁ良いけど。

そして緊張…というか、終始何かに怯えてるから…ここは楓さんの素晴らしいコミュ力でどうにかしてみるか!


「え〜…ご趣味は?」

「お見合いか」

「お〜ツッコミキャラ!良いね良いね!」

「なんだこいつ」

「楓ちゃん…」

「ルナちゃん…そんな目で私を見ないで。真面目にやるから〜。」

「ちゃんとして下さいね…」


ルナちゃんに怒られた…真面目にやります…


「えっと聞きたいことが何個かあるんだけど…聞いても良いかな?」

「………コク」

「ありがとう。じゃあ…街の入口。あの大穴ってなんであるか分かる?」


日織ちゃんは少し言い淀む。やがて重い口を開けて言った。


「……ド、ドラゴン」

「…えっ?どっ、ドラゴン?なんでそんなのが居るんですか?」

「……知らない。けど富士山に居たやつ」


…う〜ん富士山にドラゴン…まあ高い山には強いモンスターって相場は決まってるよね…

って、今…


「……ん??」

「……うん。…もう居ない」

「それは…何で?何処かに行っちゃったとか?」

「………たから」

「え?ごめん何て──」


「私がから」


──は?…まじか。この子、本当ならとんでもないこと言ってるぞ…

あっちの世界のドラゴンと言えば硬い鱗にエグいブレス攻撃。爪でのひっかきに飛翔…生命力の塊でオーラが凄い。執着が強くて、ちょっかいかけてきた冒険者を追って街を数個跡形も無く消滅させたとかも聞いたことがある。

ドラゴンって言う生き物は強い。それをこの子…もっと言うなら"私"って言ったことから、恐らくソロで…やばいな…


「ルナちゃん。どう思う?」

「私はあんまり信じられません…」

「それはどうして?」

「…日織さん、見た目17歳くらいですよね?だとしたらおかしいです。」

「う〜ん…何が?私達も20くらいだし全然…」

「楓ちゃん…まぁ良いです。よく思い出して下さい。さっきの大穴にはいましたよね?」

「あっ!」


ヒャクネンソウ。その名の通り、生えるまでに100年の期間を要することからそう呼ばれている。また生命力が満ちている場所でし芽が生えず、貴重な薬の材料としても使われている。


「確かに…さっきの話は──」

「嘘じゃない!!私は300年以上生きてて!!……っあ」


日織ちゃんがしまったと言わんばかりに口を閉じた。う〜んこれは…


「……ルナちゃん。私は日織ちゃんが言ってること、本当だと思う。」

「…なぜですか?」

「だって嘘だとしたら、ヒャクネンソウは何で咲いてるのって話じゃない?ヒャクネンソウはが満ちてるところでしか芽が生えないんだよ?」

「それは…」

「つまり生命力の塊であるドラゴンが来たのは本当。執着の強いドラゴンが来たのにはずがないから、誰かに倒されたことも本当。ここまで揃うと、日織ちゃんがドラゴンを見たことも多分本当。【未来視】とかのイレギュラーを除けば、総合して日織ちゃんは嘘をついでいない可能性が高い…って私は考えるかな〜」

「………確かに…日織さんが嘘をついているよりそっちの方がしっくりきます。それに嘘をつくメリットがないですし。」

「じゃあ日織ちゃんがドラゴンを倒したっていうのは本当ってことで。」

「はい…それじゃあ次の質問ですね」


ルナちゃんは人を疑う話題がもう嫌なのか、別の話に変えるため、次の質問を出した。


「だとすると出てくる疑問…ドラゴンすら倒せてしまう日織さんは何者なんですか?」

「……それは…詳しくは言えない。言いたくない。」

「そっか。じゃあ私達のこと、信用出来ると思ったら話して?それに、嫌なら信用しても言わなくて良いから。」

「………わかった」

「それじゃあ日織ちゃん、次の質問ね?…今この世界に人間っている?」


日織ちゃんはなぜそんなことを聞くのか不思議そうにしながらも、答えた。


。そのくらい知ってるだろ?」

「ちょっと事情があってね」

「なるほど…もっと正確に言うなら、居ない」

「おっと…それは?」

「今この世界にいる人間は全員、もっと上位の種族に進化してる。例えば新人類ハイヒューマンだったり、改造人間サイボーグだったり。」

「ちなみに日織ちゃんは?」

「っ…その…あの…」

「?」

「…ま……………だ」

「え?」

「ま、魔法少女だ!」


魔法少女か〜魔法少女ねぇ〜それって日織ちゃんが魔法で敵を倒すってことだよね…そんなの最高に──


「可愛い!!!!」

「楓ちゃん!?」


可愛いって言った瞬間、日織ちゃんは顔を真っ赤にして、ふしゅ〜と音を立てながら顔を隠してしまった。だって可愛いのだもの。仕方ないよね。あ〜あ、日織ちゃんの照れ顔もっと見たかったな〜

それにしても新人類ハイヒューマンとか改造人間サイボーグとか魔法少女とか…


「なんかゲームみたいだね。」

「…そのゲームで人類は滅んだんだけどな」

「あ、ごめん。地雷だった?」

「いや…別に………消えてくれて清々してる…」

「……ふ〜ん。」


う〜ん…なんか日織ちゃん、たまに闇を感じるんだけど…異常な怯えように破滅を願うほどの人間への怒り…これは…何かあったな。


「ねぇ日織ちゃん。昔…何かあった?」

「っ!!…なんでそう思った?」

「ドラゴンを倒せるほど強いのに私達に怯えていたり、言葉の節々に人間への怒りを感じるから…かな」

「……別になにも──」

「嘘だね。本当になにもなかったら『なんでそう思った?』なんて言葉は出てこない。それに一瞬だけど驚きが見て取れたし、まずは意味不明なことを言っている私への呆れが出てくるはずだ。」

「………本当に、あんた達何者だ?」

「ただの勇者だよ。異世界のね」


正体を明かした理由は単純。

私は日織ちゃんのことを信用してしまった。人間への怯えと怒り。確かに怪しいところはあるけど、少なくとも私達に危害は加えてこない…はずだ。

それに、信用されたいならこっちも身分を明かさないとね…


「……何言ってんだ?こいつ」

「こいつ呼ばわりですか…」

「ふふっ、楓ちゃんは実は本当に勇者ですよ〜証拠は無いですけど…」

「え?ルナちゃんも疑ってる?泣いちゃうよ?」

「泣かないで下さい…私は信じてますから。だから離れて暑苦しい。」

「……ふふっ」

「あ、笑った!今笑ったよね!」

「……笑ってない…」

「楓ちゃんのテンションが分かりません…」


いや〜ここにきて始めて笑ってくれたよ…

なんか嬉しくなってきたなぁ…って辺り暗くなってきてない!?


「ちょ、ちょ。2人とも!周り暗くなってきてる!」

「えっ!どうしましょう!まだ泊まるところ決めてないのに…」

「………か…」

「ん?日織ちゃん何か言った?」

「…そ、の…良かったら…家…来るか?」

「……え?い、良いの?」

「駄目なら…言ってない…」

「なんで急に家に?」

「ゆ、勇者どうこうは置いておくとして…こ、困ってるみたい…だったし、お前らなら…信用…出来ると思った…から」


な、なんだこの子!可愛過ぎるだろ!!ルナちゃんとはまた違ったベクトルの可愛さ!!

ルナちゃんの可愛さが"純粋"さからくる物だとしたら日織ちゃんはツンデレのデレ多め!厳しくツッコミもしてくれるのにたまに出るデレとのギャップがっっ!!!

ふぅ失礼。取り乱すところでした…え?既に取り乱してる?うるさい。


「…じゃあ、お世話になっても良いかな?」

「うん…任せて」

「お願いします」

「……案内するから…ついてきて」


なんだかんだあったけど、大穴の謎も解けたし、私達以外にも人間…じゃなくて、上位の人間がいることも分かったし、日織ちゃんとも会えて家までご招待されちゃったし…

とりあえず話の続きは日織ちゃんのお家でだね!楽しみ〜!



────────────────────

ノリで書いてるから矛盾が…むずいよ〜!

何か矛盾を見つけたら教えて下さい……


てことで日織ちゃん登場!実は女神様は一度も人類が絶命したなんて言ってないんですね〜

これから日織ちゃんがどうなって行くのか。ぜひぜひご注目下さ〜い


それではまた

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