第6話 旅立ちと温泉

「そろそろ旅を始めませんか?」


どもども。楓です!

突然ですがルナちゃんに旅の催促を貰いました。時間的には最初の狩りから1週間はこの仮の家で生活していたわけですが、街の散策も終わって余裕が出てきたのでそろそろ色々な場所を見てみたいらしい。で、私も綺麗な景色を見て目をキラキラさせるルナちゃんを見たいわけで、現在旅の準備をしています。


「何持って行こうかな〜」

「何処かで使うかもしてないですし全部インベントリに入れたら良いんじゃないですか?」

「ルナちゃん…それは汚部屋の人が良く言っている理論だよ。そしてその理論を使っている人は大抵役立ったことがない。」

「……汚くないもん」


は!?もん?!可愛過ぎるだろ!!!

おっと、でもルナちゃんの言ってることはこの世界だと正しいのかも。こんな何も無い世界で何が必要になるか分からないしね。買いに行く場所があるわけでもないし。


「できるだけ色々持って行こうか。何が必要になるか分からないし。」

「そうですよね!良かった〜私は汚部屋じゃありません…!」


いや、そこは別問題かも…まぁルナちゃん割と綺麗好きだし汚部屋ではなさそうだけど。

あ、そうだ。この1週間で出来るだけ昔あったことを調べてたんだけど、正直全く進んでない。モンスターの現れたあの日…長いしモンスター災害って呼ぶか。で、モンスター災害から1週間後には日本の自衛隊はほぼ全滅。1ヶ月後には滅んだ国すらあるらしい。

ってとこまで調べて終わってる。正直このくらいなら周りを見れば分かる。出来ればもっと詳しく知りたいけど、もう人間なんていないからなぁ…仕方ないか、地道にスマホで調べよう…うん。


後あったことと言えばこの街に居たちょっと強いモンスターを倒したくらい。2匹居たんだけど、1匹は白い虎。これはヨルが見回り中に倒してくれたんだって。で、私達は2人で銀色の熊を倒した。多分2体とも結構昔から生き残ってた個体だったんだろうな。熊の方は異世界のBランクくらいの強さはあったし。

あ、Bランクって言うのはモンスターの格付けね。相手と自分の力の差がどれくらいあるかを表すために作ったらしい。へぇ〜

まぁ私もルナちゃんから聞いたんだけどね。だって興味無かったし。で、Bランクって言うのは現代で表したら、スナイパーライフルとかの威力の高い銃火器でギリくらい。これがAランクとかになってくると核ですら厳しくなってくる。私毎回AとBの間に差を感じる…という感じで、意外と強かったって話。


「楓ちゃん?どうしたんです。考え込んで」

「あっ、ごめん。ぼーっとしてた」

「疲れてます?」

「いや、ちょっとこの街のこと思い出してただけだよ」

「そうですね…1週間も居たんですから、愛着も湧きます。でもあっちの世界の方は最後割とあっさりでしたよね。なんでそんなに考え込んでるんです?」

「まぁ世界滅んでたりルナちゃんと2人で生活したりで色々新鮮だったからね、これからの不安もあるしちょっと躊躇ってるかも」

「楓ちゃん……やっぱりもう少しここに滞在しますか?」

「んにゃ、大丈夫だよ。ごめんね弱気なこと言っちゃって。そもそもルナちゃんのおかげでこの世界でも楽しめてるんだから、ルナちゃんのお願いならいくらでも叶えちゃうよ!」


そうだ、そもそもルナちゃんがあの時声を上げてくれなかったら私は今頃どうなっていたか分からない。もしかしたら滅んだ世界と罪悪感で自殺してたかも……そう思うとルナちゃんにはやっぱり感謝しかないな。


「ルナちゃん。いつもありがとう!私もルナちゃんと一緒に居れて幸せだよっ!」

「……面と向かって言われるとちょっと恥ずかしいですね///…はい。こちらこそいつもありがとうございます!」

「……確かに、これは照れるね///」


恥っっっっっっっっっっっっっず!!!!!

なんだ今の!いや日頃の感謝を伝えただけなんだけどね!?やっぱり感謝を伝えるっていうのは大事よ。恥ずかしいけど幸せを共有できる。


「…ルナちゃん。もう準備出来た?」

「はい。必要な物は全部詰めました。」

「よし、じゃあ出発進行〜目的地はここから西の方〜」


荷物の準備が終わったから、決心が揺らがない今の内に出発してしまおう。目的地は特に決めてないけど、とりあえず西の方に歩いて行ってみよう。久しぶりの旅……なんだかワクワクしてきたかも!!


ーーーーーーーーーーーーー


「あ、またゴブリンだ。」


旅に出て2時間後、ボロボロになった道路ので何度目か分からない数体のモンスターを見つけた。またゴブリンか…ほんとに数がいるってのは厄介だねぇ…どこに行ってもいる。


「またゴブリンだねぇ…」

「流石にそろそろ見飽きてきましたね。」

「本当にもう出なくて良いよ…」


こいつら全然弱いモンスターだけど、飛び散る血がとにかく臭いんだよね…

だから私は魔法でこいつらを倒す。魔力を集めて…


火球ファイアーボール


私が放った火球はゴブリンに着弾して身体を燃やし尽くした。このやり方はやっぱり血があんまり出なくて良いな。


「よし、ルナちゃん先に──っ、ルナちゃん避けて!!」

「っ!?はい!」


咄嗟に避けたけど…危ねぇ…なんだ?魔法?

すぐに顔を上げて見たら、さっきまで立ってたところの地面にヒビが入っている。これは…

飛んできた方向的に…上か?


「っと、ビンゴみたいだね…」

「あれは…ウィンドファルコン?」


ウィンドファルコンは名前の通り、風魔法を多用してくる鷹だね〜。異世界にいた時はたまに襲われたけど、知能が高かったり素の戦闘力があるのに魔法を使ってきたり、色々厄介だったんだよねぇ…


「どうしようか。矢の魔法で撃ち抜く?」

「そうですね…って、楓ちゃん、あれ。」


ルナちゃんが指差す方向を見ると、そこには舐めプか煽りか。地面にまで降りてきていたウィンドファルコンの姿があった。


「これは…舐められてるよね?」

「人間には煽りが有効だと分かっていますね。結構昔から生きてる個体でしょうか。」

「かもね、風魔法も凄い威力だったし。」


とりあえず警戒度は格上げだね。戦闘に煽りを混ぜてくるなんて…戦い慣れしてる?

まあ降りてきてくれたのなら好都合。


「ねぇルナちゃん。身体強化魔法かけてくれる?」

「え?もしかして鳥系モンスター相手に剣で戦うつもりですか?」

「うん。相手も煽って来てるんだから、こっちも煽り返さないと。舐められたら負け。隙を与えた私達が悪い。あとこの世界に来て魔法しか使ってないし。」

「……はぁ…分かりました。でも逃さないで下さいね?」

「大丈夫だって。我が剣のサビにしてくれる〜」


【攻撃力上昇】

【移動速度上昇】

【反射速度上昇】


おちゃらけたことを言いながら剣を構える。強化魔法で身体能力が上がっていることを確認する。確認が終わった瞬間地を蹴り、地面に少しのヒビを残して瞬時にウィンドファルコンの後ろに移動する。


「ぴ、ぴぃぃ!?」

「舐めプするには経験が足りなかったね。あの世でもっと人を煽る練習でもしてきな。」


花咲斬ブルームスラッシュ


スキルを発動し、ウィンドファルコンを切った瞬間。ウィンドファルコンの動きが止まる。吹き出した血が花の形に咲き固まり、やがて花びらが全て散るとともにウィンドファルコンの命もこの世界から散って消えた。


「流石ですね楓ちゃん…ウィンドファルコンを一撃…」

「ちょっとこの技厨二過ぎないかな?わざわざ動けなくして死ぬまで花びらでカウントダウンするとか…」

「そうですか?私はかっこいいと思いますよ?」

「かっこいい!?じゃあ大丈夫!」

「えぇ…私の言葉を信じ過ぎでは…」


は〜…ちょっと時間取られちゃったけど、久しぶりに剣で戦えて楽しかった〜!また剣でやりたいな!


「よし、そろそろ休憩出来たし進もうか」

「は〜い。」


とりあえず剣はインベントリに直して、私達は隣県まで続く道を再び進みだした。


ーーーーーーーーーーーーー


「結構進んだねぇ…」

「そうですね…丸1日は歩きましたね…」

「そろそろ次の街が見えて来ても良いんじゃない?」

「土地勘無いのでなんとも…」


ぐあぁぁぁぁ!!

久しぶりに長い距離歩いたからキツい!!え待って?ルナちゃん自分に強化魔法かけてない?ずるいずるい!!私にもかけてよ!

…って言っても魔力消費したらルナちゃんがキツいか。それはいかん…


てことで話は変わって。今は元栃木県の隣県、元群馬県もといグンマー帝国に入った。昔の日本では散々魔境だなんだと言われていたけど、今では世界中が魔境どころか死地になってるよ……


まぁでも、スマホで群馬県の観光地とか調べてみたら結構凄いところあったけどね。例えば草津温泉!!温泉だよ温泉!しかも草津と言えば三大温泉と言われるあの!日本人たるもの温泉好きであるべし!

あ〜行きたくなってきた!絶対に行こう!整備とかはされてないだろうけど温泉だからね!楽しみ〜!


「ルナちゃん頑張ろう!!温泉行こう温泉!」

「はい…おんせん?ってなんですか?」

「あ〜そっか。異世界には温泉無かったもんな〜…えっとね、温泉って言うのは…簡単に言うと温かい湧き水のお風呂って感じ?ちょっと語彙力無いかもしれないけどね。」

「はあ…それって普通のお風呂とは違うんですか?」

「全然違うよ!お風呂は体を清潔にするため入る感じだけど、温泉は癒しとか疲れを取るために入るって感じ。似て非なる物だと私は思うな。」

「ふむ…癒しのために…そうですね!行ってみたいです!楓ちゃんのせい…おかげで毎日とても苦労してるので!」

「えっ急に罵倒……いつもごめんなさい。出来るだけ気をつけます…」


突然の飛び火に私のメンタルはボロボロだよ……え?自業自得?うるさいうるさい!!ルナちゃんみたいな可愛い子が居たら皆ちょっかいかけるでしょ!おい今小学生男子かって言ったやつ……いるよな?後でしばく。

まあしばくのは置いておいて、ルナちゃんも疲れてるっぽいから、次は温泉に行きましょー!


────

「つ、ついた…」

「長かったですね…」


てなわけで多分2日くらい全力で移動したかな?草津温泉に着きました!!

温泉だぁーーーーーー!!!!!

はい。一旦落ち着いて、近くで綺麗な空き家を探そう。あ、でも旅館でいいのかな?まあ一度旅館まで行ってみるか……


─おぉ…意外と綺麗だね。この様子だとあんまりモンスターの襲撃を受けなかったっぽいな〜


「ルナちゃん。そろそろ日も暮れるし、旅館に荷物だけ置いて温泉行こっか。」

「はいっ!温泉…楽しみです!」

「可愛い」


温泉でワクワクするルナちゃんかわええ〜。あぁ、癒される。もはやルナちゃんを眺めるだけで良いとすら思っている。だがしかし!私はそんなところでは止まらない!これからルナちゃんと温泉!ということはつまり?


……そう。温泉回+ルナちゃんの素肌だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!


ふう。落ち着いて、私。今興奮してたら温泉でとんでもないことになるルナちゃんの裸うへへへへへへ……おっと集中。

ふへ、ふへへ。今は楽しみでパタパタしてるルナちゃんを見ながら温泉に行ってるよ。超楽しみ。多分死ぬから遺書でも語っとこうかな?皆私は─


「楓ちゃん?どうしました?じっと見て…私もそんなに見られたら恥ずかしいですよ…」

「えっ、あっ、ごめんごめん!ちょっとルナちゃんに見惚れてただけだから気にしないで。」

「えっと…余計気になります…///」

「一生見てられるな?…」


可愛過ぎる。この世の言葉では言い表せない。女神様ありがとうこんな世界の宝を生み出してくれて。


─で、女神様に感謝してたら温泉着いてました。今は私だけ先に温泉に入ってて、ルナちゃんはまだ服脱いたまま躊躇ってる。私と2人でお風呂入ることとか無かったし仕方ないね。

っと、ルナちゃんき……た?……


「えっと…楓ちゃん。これで良いんですか?」

「ありがとう。」

「えっ、急になんです?ちょっと怖いんですけど。」

「今はそんな言葉も効かないほど私は感動している。」

「えぇ…」


あれ。ちょっと興奮が一周して涙出てきたかも。───え、やばいやばいやばい!!!

天使だ!天使おる!前をタオルで隠してるけど、身長に対して育ち過ぎてる大きな2つの果実と、タオル越しでも分かるスタイルの良さで私は─

ぶぶぁっ!!

っと鼻血を出して死んでしまった。あぁ楓よ死んでしまうとは情けない…もっと目に焼き付けておけよばかぁ…


───

「はぁ〜気持ちいですね〜」

「そ、そうだね…」


隣でルナちゃんが気持ち良さそうにしているけど、それに反応する元気すら無くなってしまった。若干貧血でふらふらする…

まさかこの世界初の出血が敵からの攻撃じゃなくて味方からの純情悩殺攻撃だとは思わなかったな…でも幸せなら?おっけーです。

……ふぅ、ちょっと気分良くなってきたな。

それにしても─


「「綺麗な景色…っあ。」」

「被っちゃったね」

「ふふっ、そうですね。本当に綺麗な景色です…」

「ね、また離れ難くなっちゃうよ…」

「でも楓ちゃんがもっといろんなところを見せてくれるんでしょ?」

「ふへへ、任せなさい。ルナちゃんにこの世界の良いとこいっぱい見せてあげる」

「はい!約束ですよ?…」

「うん、約束。また一緒に温泉入ろうね。」

「今から楽しみになってきました…」

「ふふっ…そんなに楽しみ?私のこと大好きじゃん」

「はい、大好きですよ。あの時から…」

「へっ…えっ?」


す、すすすすすす好き!?ルナちゃん今大好きって言った?!


「えっとそれはどういう意味で…」

「ふふっ!それは秘密です!今までとこれからの私を見て考えてみて下さい。」

「え、えぇ〜。せめてヒント!お願い!」

「そうですね…では一つヒントを。────あの時から楓ちゃんは、私にとってのヒーローですよっ!」

「………それって─」

「ではそろそろ私は上がりますね?楓ちゃんものぼせないように!では。」

「…………もうのぼせてるよ…///」


ーーーーーーーーーーーーーsideルナ


はあ〜言っちゃった…

バレてない…よね?

でも鋭い楓ちゃんならもう気づいてるかも…

……えへへ、少しくらい良いよね。やっと魔王も倒したんだし、これくらいのご褒美があっても良いはず。

ふへへ。楓ちゃんの照れた顔可愛かったな…

楓ちゃんは私のことどう思ってるのかな…


ーーーーーーーーーーーーー


温泉に着いてから1週間が経過した。

特に変わったことはしておらず、強いて言えばヨルを2人で洗ってあげてめちゃくちゃいい匂いになったってことだけかな。

で、早いけど次の場所に移動しようかと思ってる。またここから西に進んで、とりあえずは関西目指して行きたいな。


「忘れ物ない?」

「はい!温泉もたっぷり楽しみました!」

「ルナちゃんが温泉の良さを分かってくれて良かったよ〜。じゃ、行こっか。」

「れっつご〜」


すっかり元気になった私達は、街に別れを告げ、新たな街へと歩き始めた。



────────────────────

どうも!街の滞在はこのくらいさくっと行きたいですね!

楓に遠回しの思いを告げたルナちゃん!これからどうして行くかあんまり決めてないけど頑張ります!


それではまた

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