異形
「再び訊く! おぬしは何者だ? この村に何をしに来た!?」
『私は……』
がささっ、どしゃっ
女が答えようとした時、真っ黒な
祭りの屋台ほどもあるその大きな
「なんだこいつは!?」
戈門の
彼はそれを恐怖だと認め、屈するまいと己を奮い立たせた。
『いけない退がれ!』
女が叫んだと同時に、
ギィンッ
火花が散った。女の警告のお陰で、混乱しながらも戈門はぎりぎりでその攻撃を太刀で弾くことができた。
玉に
全体の姿は棘だらけの巨大な
「化け物めぇっ!」
『ダグ、スーツを使う』
『接近戦はダメだクルナ!』
(男の声⁉︎ 誰と話しておるのだ⁉︎)
女は姿の見えない何者かの制止を聞かず、
身体にぴったりと沿うように造形された真っ白な鎧が、きゅんきゅん、と鳴いた。ふしゅっ、とその背中が蒸気を吐いた。
怪物は標的を白き鎧に身を包む女に変え、再び鋭い鎌の尾を振るった。
「危ない!」
戈門は思わずそう叫びながら駆け出した。だが。
女が垂直に立てた一の腕がやすやすとその鎌を跳ね返した。
戈門にはその瞬間、女の腕と鎌の間を黄色い光の壁が遮ったように見えた。
女は地面を腹で
一息に間合いを詰め、しゃがんだ姿勢から全身の
「……すごい」
戈門は
『斬るな!』
女がそう叫んだ時には、戈門は既に怪物の上の右腕に斬り落としていた。怪物がギャァと悲鳴を上げた。じゅう、と音がして太刀の刃が泡立った。
『避けろ!』
後跳びした戈門を追うように怪物の傷口からどろりとした体液が
「酸か!」
素早く跳んだので全身を焼かれることはなかったが、右の
たちまち
その隙に怪物は
雨の林の間を真っ黒な塊がじぐざぐに駆け抜け、遠ざかる。
後には男と女、切り落とされ地面を泡立たせて煙を上げる異形の腕が残された。
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