終章FILM INTERSECT~重なり交じり合う思いと記憶・そして世界~
重なり交じり合う、思いと記憶・そして世界
「最上の光の超広範囲使用。流石に負担が大きすぎますね。」
ルナは、かつて自分が創造した異空間の中で一人そう呟いた。光の夢その正体は、彼女の光魔法だった。光魔法を地の界と空の界を隔てていた地盤に定着させて、発動させる。その副作用として、昼間の地の界はやや明るくなっていた。だが、今回はそういかなかった。
「地盤が崩れかかっていましたから、しょうがないですね。こればっかりは。」
もう一人の神の子は、そう溜息をつく。そして、同じ血を引く弟の事を考える。
「恐らくシンも、当分動けないでしょう。少年の母親。あの異能の効果は、思った以上のものでしたから。」
ルナの予想は、当たっていた。シンは、地球の根源が眠る場所へとその身を隠していた。
「死しして尚、ここまでの効果が続くとはな。これは、回復まで時間がかかりそうだ。」
軟の異能がもたらした影響は、思いのほか尾を引いていた。それだけ、彼女の┃思い《イマジネーション》が強かったのだろう。
全生命が、眠りについても尚。世界の崩壊は続いていた。眠っている間、強いてはホールドリーム効果時間中は莫大なエネルギーがもたらされている為、よほどなことがない限り死ぬことは無い。だからと言って、安全とは言えない。
「あのスピカという少女。彼女が、力を開放した影響も相まって恐らく金星の神々が動いてくるでしょう。」
ホールドリーム。その効果は、陽が再び上り始めるまで持続する。その陽の光を妨げていた障壁やら地盤やらはその頃には、消滅或いは完全崩壊しているだろう。
「恐らく過去に移動して侵攻はしてこないでしょうが、時間を停止させての移動ぐらいはしてくる。そうなれば、今の地球の戦力では太刀打ちできない。」
時間移動。過去に行ったり、未来に行ったりそれは時間支配をすれば可能。だが、一度それをしてしまえば、神を量産できてしまい惑星間のバランスが大幅に崩れる。その為、惑星の神々は時間を跨ぐ移動はせず時間を止めて移動する時間跳躍をするのみにとどめていた。
「さて、どうしたものか。今は、技の発動中で回復もままらない。先に回復するであろうシンも恐らく夜明けには間に合わない。」
ルナが予測する事態。それが起こってしまえば現状成す術がない。金星の神が動けば、他の惑星の神々も動くだろう。そうすれば、地球の資源は簒奪される。
「まぁ、考えても仕方ありませんね。なる様にしかならないですから。」
ルナは、思考を放棄した。未来の事は、誰にもわからない。今できる事。地球に居る人達の回復。それに専念しようと、彼女は考えた。
「時間支配による回復は、やはりリスクが多いな。魔法での回復を行うしか、他に手がないか。」
時間支配による回復とは、体内における治癒速度を速める回復方法。しかし、シンは空間支配をあまり扱えていない。よって、局所に時間支配を行うことが出来ず全身を分け隔てなく回復するしか方法がない。それでは、全身のバランスが崩れたままだ。寄ってシンは、魔法での回復に専念する。
ふとシンは、気が付く。この状況を打破する事が出来る人物がいる事に。シンはそれに近づきその者の回復を時間支配の異能を使い試みた。
シュウは、夢の中で実感する。自分の中に、もう一人の少年がいる事を。それは、今朝感じた人影とは別の人物だった。
「お前が、収か?」
「おう!」
白髪の少年は、笑顔でそう答えた。この少年が、すべての元凶を作った張本人。シュウの心に怒りのような感情がこみあげる。
「なんで、お前が俺の中に?」
シュウの表情は、まるで鬼の様だった。しかし、収はすぐに答えようとせず。困惑の表情を思い浮かべる。
「なんでって、お前が俺を助けたんじゃないか。逆に俺が知りたいぐらいさ。」
その回答に、シュウは戸惑った。助けた覚えなんて更々無い。それに、自分が誰かを助けれるとは到底思えなかった。
「そっか、お前は覚えていないんだな。あの日の事を。まぁ当然か。普通は、忘れる。」
収はあっけらかんとした態度をとり、手を頭の後ろに組みながらそう言葉を漏らした。そして、笑顔でこう告げる。
「じゃあ、まずは。それを思い出すところからだな。」
記憶。それは、思いの一種。一説によれば、記憶が世界を創るそういわれている。時にはそれに対する思いが欠落し、忘れることがある儚いモノ。そして、忘れたその中にこそ大切なことは眠っている―かもしれない。
シンが触れたそれは、巨大な水晶のような塊だった。その中に、一人の女性のようなシルエットが浮かび上がる。時間支配の神術を用いても彼女の回復は、まだ先になりそうだ。
―地球の女神・アース。彼女が愛した惑星の運命は、未だ誰にも分からない。
そして、その水晶はやがて闇に染まる。
Film Intersect~終わりの始まり~ 水戸純 @BrinkLord
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