魔法使いの戦い⑩ 勾玉
「「水風・ツイスターフィスト」」
二人の拳から、竜巻状に魔法が放たれる。炎魔人三人はその攻撃をもろに喰らい地面に叩きつけられる。
「こりゃあ、いかんのお。」
鳳の球から状況を察知した鳳凰は、髭を触りながら独りでに呟く。自身の胸元の羽で作った球を扱う者の魔法量が激減している。
〈あやつら、ここまでとはな。〉
炎舞の準最高戦力を出陣させ小さな村の者に敗北したと知れ渡れば、この地にも危害を及ぼしかねない。そう思考を巡らせたこの地の主は自らの炎を経由して思念を飛ばす。
「お前さんたち、アレの使用を許可する。勿論フレイムもな。」
「分かりました。」
思念を受け取ったのは、バーンとボルノだった。フレイムは鳳の球を使用していない為その
思念を受け取ることは出来なかった。それに、気が付いたボルノは己の未熟さを痛感しつつフレイムに伝える。
「アレを使う許可が下りた。」
「そうか、感謝する。」
地面に転がり醜態を晒している彼らを、二人の女魔法使いが眺めていた。村にの人達はその様子を静かに見守る。
「おやおや、まだ息があるようですわね。」
「ホントしぶとい。流石、上位種といったところかしら。」
二人にはまだ十分以上の魔法量が残されていた。二人の煽りに反応したのか、三人の炎魔人は立ち上がり、咆哮する。
「「「ウ、ウォオオお」」」
「なに、こいつら急にどうしたの?」
ラミラは、突然の咆哮に思わず驚愕する。隣に居るヨウは物凄い量の冷や汗をかく。
「これは、まずいです。ラミラ急いで、息の根を止めます。」
そういいながらヨウは突進をかける。その言動にラミラは驚きながらワンテンポ遅れてヨウの後に続く。
しかし、間に合わなかった。ヨウが攻め寄り攻撃を仕掛けようとしたときにはすでに事態は完結していたのだ。
かつて、地球の神・アースは弱き者に力を授け自らの力を分け与えるために水晶を渡したとされる。それに倣い最上位種は自陣の戦力拡大のため同じように力を分け与えようとした。しかし、力なき者に力を与え行使させようとするとその所有者は軒並み力に飲み込まれ死に至ってしまった。施行錯誤をして生まれたのが加護と、勾玉。加護は自身の魔法を常時展開し纏わせることにより力を与えるもの。しかしこれには距離に制限が伴う。対して勾玉は、授ける者の意思には関係なく使用可能。但し、その力は膨大で上位種であっても意識を保つのがやっとなほどの為に許可なく使用するのは禁止されていた。
「なに、これ。」
「間に合いませんでしたか。」
金髪の魔法を扱う少女は空中で立ち止まる。碧髪の魔法使いは地面で立ち止まり、悔しげな表情を浮かべる。三人の炎魔人の炎が再度別の色となって湧き出ていた。
「う゛、ヂガラガワキデル。」
「モエタギッテイクゼ!」
「まさか、この力を使う事になるとはな」
炎魔人になりたてのボルノの炎は赤からオレンジへ変化し、他二人は自身が発現出来た二つ上へと炎の色を変えていた。
「イクゼ」
力にやや飲み込まれつつも黄色の炎を放つバーンは上空に居るラミラに突進をかける。ラミラの反応はやや遅れ村の人たちの元へ叩き落される。
「う゛オオ」
力に飲み込まれながらも、ボルノはヨウに突進をかける。ヨウは自身の正面に巨大な水滴を具現化して身を守る。
「水・クッション」
しかし、背後から来るもう一人の緑の炎を身に纏う炎魔人への対処は出来なかった。
「炎・ソード」
フレイムは余り力に飲み込まれていないため、現状の三人の中で唯一魔法を使用できる。
背中を切られたヨウは、その場に倒れ何かの気配を感じる。
〈これは、本当に、まずいですわね。しかもよりによって。〉
ヨウの表情は苦痛を表しているかの様だった。その表情を緑の炎の炎魔人があざ笑う。
「まさか、これで終わりじゃないよな?」
「そんな、訳ないでしょうが!」
それは、ラミラの声だった。村の住人を守りながらバーンと戦う彼女の拳から、竜巻状の拳がフレイムめがけて放たれていた。
「水風・ツイスターフィスト」
「ツ」
その拳をもろに受けた、フレイムは片膝をつく。ヨウはその一部始終を這いつくばりながら見ていた。
〈ラミラ、あなたは本当に強くなりましたね。〉
ヨウはラミラと初めて出会った日の事を思い出しながら立ち上がる。
「ラミラ、策が有ります。その、死にぞこないをこっちへ飛ばしてくださいな。」
「分かった。」
ラミラは思考せずヨウの言葉を信じる。二人の炎魔人はヨウに向けて再び攻撃を仕掛ける。
「水風・タイフーン」
二人は奇しくも同じタイミングで同じ技を繰り出した。ラミラは、台風によって生じた遠心力を使いヨウの方へバーンを投げ飛ばす。
バーンがこちらに飛ばされて来るのを察知したヨウは自身の魔法を解除。手に魔法を込め放出する。異能はその者の思いに影響を受ける。その先にあったのはラミラの出した竜巻だった。ヨウの放った魔法にラミラは彼女の思いを感じたような気がした。
「まさか、ヨウあなたの策って。」
ラミラの意識はそこで途絶えた。ラミラの竜巻はヨウの魔法を受けて暴走。村人たちと共にラミラを吹き飛ばした。
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