世界創造物語4ー③ 葉

ヨウとシンとルナ。アースの子供たち。彼女達の言う儀式とはヨウを力の器とし絶対的存在とし君臨させることである。

 「それでは儀式を始めましょう。。」

ルナがこの儀式の進行を執り行う。今宵のルナの服装は、より一段と月明かりに照らされ白く光る薄い純白のドレス。儀式の進行とは言え、始まってしまえばこの儀式に時間がかかることは無い。

「本当によろしいんですか?葉。この儀式が始まってしまえば。貴方は民全員の希望の象徴となるだけでなく、憎しみの象徴にもなりうるのです。覚悟はいいのですか?」

支配者。この言葉は実に大きな意味が込められている。一つは世の中を扇動する役割を担うという事。一つは意に反するものの憎しみを背負うというもの。例え支配者となりこの動乱を収める事が出来たとしても、その憎しみは消えることは無い。又、今暴れている者の大半は反逆者としてまた攻め込んでくる可能性がある。それらを引き受ける役割を担うのが、これからの葉ということなる。

「はい、勿論です。お姉様。」

祭壇の上儀式台に立つ、少女は。静かにうなずく。彼女の服装も白のドレス。神の力に耐え、操ることができるのは神の血をひくものだけ。絶対的支配者を生み出す方法、それすなわち二人の神の子の力をもう一人が受け皿となり引き受ける事である。葉の異能は受け皿となる要件を満たしているといえる。葉の異能は文字通り葉を操る異能だ。しかし葉には木生えるものとは別の意味がもう一つある。

それは助数詞としての葉。葉は枚と同じように薄く平たい物を数えるのに使う。しかし、枚と葉には決定的な差がある。助数詞の葉は、絵葉書やフィルムなど思いが込められているものを数える時に扱われることが多いと謂う事だ。転じて葉の異能は思いを受け留め、数えるという力も表す。

「ところで、収。貴方は何をなさっているのですの?」

少女は、視線を上へと向けていた。儀式台の更に上には、自らが連れてきた白髪の少年がロープでつるされていた。

「あー。いや。ここの方がやりやすいかなっと。」

収は照れ臭そうな表情を浮かべていた。この儀式における収の役割は葉を力の収束点とする事である。いくら、葉が異能の力を受け止められるとしても暴発してしまえば意味がない。そうならないためにも収は必要不可欠なのである。

「そういえばさ、葉の異能って数えることができる異能なんだろ?数えたところで力は手に入らないんじゃないか?」

「は。お前、何も理解せずここにいたのか?」

アースの息子、赤い瞳に水色の髪をもつ少年は呆れた口調で呟いた。これには、連れてきた葉も苦笑いである。

「いやぁ、儀式での俺の役割については聞いてたけど・・・そこまで詳しくわ・・・」

アースの息子は怪訝な表情を見せる。まだ、白髪の少年の事を完全には信用していないのである。その理由は大きく二つ。一つ目はこの飄々(ひょうひょう)とした態度。二つ目はこの動乱の中葉と一緒に居た事である。葉が城から一人で出たとは考えられない、恐らくはこの少年が連れだしたのだとシンはそう疑っているのだ。とはいえ、最優先なのは儀式を遂行しこの動乱を一刻も早く止める事である。

「数えるということは、ただ、1、2,3,と列挙したり、その量を調べるという事だけではありません。」

落胆した表情を見せたのは、シンだけでは無かった。アースの娘、白いドレスのような衣装を身に纏った少女も少年の態度には呆れていた。

「というと?」

少年は、呆れられていると自覚しながらもとぼけた口調で聞き返す。

「数えるという言葉には候補者の一人として数えられるという言うように、その中の一つに居れるという意味もあるのです。」

「ふむふむ。」

「葉の異能、そしてこの儀式の場合。私たちの異能を受け留め葉自身のフィルム。この場合は思いが籠ったものを焼き付ける場所つまり記憶に保管し、自らの異能として数えるという感じでしょうか。」

「なる程。」

〈つまりは葉のお姉様の話をまとめると。異能を受け留めると言っても受け留める場所は記憶。これが映画とかで使われるフィルムの役割を果たし。それを数える。つまりは、葉の異能として扱うってわけだな。〉

少年は、首を傾げながら、思考を張り巡らしとりあえず納得した。

「葉、やっぱりすごいな。」

「へへへ」

少年は純粋な言葉を投げ手を伸ばし葉の頭をなでる。葉は、何だか照れ臭そうに笑う。少女は神の血を引きどんなに態度を取り繕うともまだ、幼い少女なのである。

「まぁ、とは言っても。極端な話、異能はイメージの世界。その異能を持ちどう解釈するかは術者に委ねなれるがな。」

シンは、水を差すかの様に言葉を発した。白髪の少年はそんなシンの方を向き笑顔で言い放つ。

「ヨウなら大丈夫さ。それに、俺がついてるしな。」

そういいながら、収は再び葉の方を向く。葉は満面の笑みでこう言い放つ。

「うん。」

どうやら、この二人の信頼は固い物らしい。そう、ルナは感じ取っていた。

「では、始めましょう。」

その言葉で場の雰囲気は一変した。儀式台の上に居る少女は目を瞑り両手を広げる。そして右手側にルナ、左側にシンが並び立つ。二人は両手を葉に向け力を流し込む。

「光・スペース・リポーション」

「闇・タイム・グラヴィティ」

二人の神の子の力が、もう一人の神の子元へ。その力の収束点を彼女にする為少年も、自らの異能を彼女に付与する。

「収束点」

シンとルナ二人の異能が、収束点と成った葉の元に収束する。

「包葉」

 収束点に集まった異能はやがて点となり、蕾となり葉の異能に包み込まれる。これにて、儀式は終了するかと思われた。

「ツ」

呻き声を挙げたのは葉だった。シンとルナは葉の体内で起こっている事を感じ取った。

「収!葉の中で包み込んだ異能が、暴発しそうです。収めなさい。」

「もうやってる。」

葉の異変にいち早く気づいた、収はすぐさま自身の発動していた異能の強度を高める。それをあざ笑うかの様に、葉から葉があふれ出し暴風が吹き荒れる。その暴風と葉が収を吊るし上げていたロープを引きちぎる。収はそのまま空へと吹き飛ばされる。収の異能の制御下から外れた異能は解き放たれようとしていた。そうはさせまいと未熟者の神々は葉の中に流しこんだ自らの異能を圧縮させようとする。―それが、暴発のきっかけとなった。

 暴発した葉の中に流しこまれた異能は口から空いや、宇宙へと放たれる。しかし葉の意思はまだ保たれていた。

「奕葉」

この技は世界を重ねる。だが、重ねる世界はここにない。その前段階として世界が構築される。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る