世界創造物語1 番外 少女と本

パタン。

―――ナニコレ。

モコモコな長袖ショーパンパジャマを身に纏った黒い長髪の少女は、ベッド上でうつ伏せになりながら読んでいた本を閉じた。

〈これが、世界の始まりの物語?ナニソレ有り得ない。第一この世界には異能も無いし、星すらあるのか怪しいのに・・・〉

彼女、黒崎カナは、仰向けに寝返る。最愛の人の父親が書く本。世界で最も愛され有名な本を読んでいた彼女は、額に手をやり呟く。

「はぁ、時間の無駄ね。単なる物語作品としては面白いのかもしれないのだけど・・・。」

彼女は非現実的な物語にはあまり興味をもつ性格を持ち合わせていなかった。そういった物語よりもより現実世界を深く追及したり自分の知識や今後の人生の糧となるものに価値を見出していた。とは思いつつこういったファンタジー作品に影響を受ける人もいることも彼女は知っている。それに加え、この本一応は世界の真実を書き表している本だともいわれている。更には最愛の人の父がそれに携わっているのだから、そういった作品やそれに影響を受ける人たちに対して理解を深めなければ彼女としての務めを果たせないと黒髪の少女は考えていた。

「深夜まで、後約1時間。まぁ、シュウは気にするなっていうかもだけど、自分の彼氏の父親の書いてる本だしね。」

言いながら、つい先日付き合うことになった少年の顔を思い浮かべ照れ臭く微笑んだ。気を取り直そうとするかのようにうつ伏せになり、頭上に置いていた本を手に取り再び読み進めようとページをめくる。世界の始まりが示されたとするその本を。


―時は進み深夜0時。本を読んでようが、仕事をしてようが、地の界に住まうもの全てが眠りに落ちる。そして、皆同じ夢を見る。光の夢。それは、陽の光が届かないこの世界に恵みをもたらすとされる白銀の夢。この夢は、この世界のすべての生命が見るとされているが詳細は、未だ明らかにされていない。


黒と白髪の少年もまたその白銀の夢を見ていた。目をつむり白銀に包まれ立ち尽くす。とはいえそこに、天地があるわけでも無くその夢の空間には誰もおらず何もない。そんな毎日見る夢、いつも見る夢。すこし心が解放されていくようなそんな夢。そのはずなのに、何故か少し視線のようなものを感じる。感じた視線を追うかのように、目を開く。しかしその視線の主は見当たらない。少年は目を見開いたままその場に立ち尽くす。今まで夢の中では俯瞰した位置に目を下ろし自分が見えていたのだが、視点が自分の本来見える位置へと切り替わる。

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