恋か、性欲か、食欲か
わんちゃん!!! わぁぁ、かわいい~~!! あぁぁ~~、よしよし! よしよしよし!!! わんちゃん、かわいいねぇ! そんなしっぽふって!! ぁぁあ!! んむっ、よしよし。うれしいねぇ! おおぅ。うん、あそぼーね! ちょっとすごい。わぁぁ! ん~~!!! かわいぃ!!! うっ。とびついて! おおきいねぇ! わんちゃん、かわいい!!
いきなりなにを読まされているのかと驚いた方もいるかもしれません。これは喜びを隠しきれず突進してくる大型犬を前にしたときの僕です。シミュレーションなのでこの通りにはならないですが、99%ほどはこの通りになります。トチ狂ったかと思った方、安心してください。昔からです。
犬になりたい、というのは数少ない夢です。犬好きの皆様。BEASTARSという漫画を読んでください。あらすじはこんな感じ。
――肉食獣と草食獣の共存する世界。心優しく無口で不器用なオスのハイイロオオカミであるレゴシは、目立たないように静かに高校生活を過ごしていた。しかし、ある夜、演劇部の夜練の見張りを頼まれたレゴシの鼻が捉えたのはドワーフウサギの香しい臭い。その瞬間、レゴシは我を忘れて襲いかかり、気付いた時には、彼女を両腕に抱きすくめていた。彼女へのこの感情は、恋なのか? それとも食欲なのか?
レゴシは無口で感情表現が下手。大きな身体とは裏腹に隅の方で息をひそめて過ごしてきました。みんな仲は良いものの草食獣が肉食獣に食殺されることがあるからこそレゴシは怖がられています。そんなレゴシが恋した相手はウサギ。大きな爪、牙、膂力は相手を簡単に引き裂き、食い千切り、ボロ切れに出来てしまう。高校生まで童貞を貫いてきたレゴシ。その不器用な性格と彼の肉体は、彼の恋にはあまりにも酷なハードルとして立ちはだかります。
ウサギの本能で、牙や爪が見えるたび意思に反して身体は逃げようとする。そんな彼女を傷つけまいとして傷つくレゴシ。触れようとするたびに葛藤に苛まれるんです。精神的にも肉体的にも。でも、レゴシは少しずつでも進んでいくんですね。だから、肉体的にはなんの呵責もない僕は励まされる。レゴシ、すごい。
触れようとすること。
それは昨日も書いたようにお互いストレスになることなんです。
彼を知りたい、彼女を知りたい。その最初の一歩目はとても勇気がいるんです。とにかく僕は苦手でした。傷つきたくなくて。相手を傷つけたり、嫌な思いをさせることで自分が傷つくのが嫌で逃げてきました。だから、不器用でも傷ついても動けるレゴシはすごい。
また、BEASTARSの何が良いって童貞の解像度が高いですね。作中でもトラやタカの同級生や先輩、彼女から事あるごとに童貞といじられていますが、僕にはレゴシの考え方がとってもよく分かるので感情移入がすごい。作者は女性なのですが「ありがとうございます。童貞をよく表現してもらって」と言いたい。
レゴシは犬ではなくてオオカミなんですが、イヌ科なのでもはやイヌです。この主人公のレゴシがあまりに犬で可愛い。レゴシが住んでいる寮ではイヌ科のルームメイトと過ごしているのですが、もうイヌの良さが詰まってますね。家出したレゴシが急に戻ったらみんな状況をつかめなくて「?」が浮かんで棒立ちなのですが、しっぽだけがブンブン振られてるのとか。かわいすぎる。
草食、肉食という対立によって精神の葛藤がさらに助長されていて、設定が上手いなぁと。そして、動物の生態を取り込むことで性格付けも説得力があり、なによりかわいい。
たくさんの魅力の詰まった作品です。
アニメ版でもレゴシの主人公は小林 親弘さん。「ゴールデンカムイ」の杉元や「イエスタデイをうたって」のリクオと数々の悩める主人公を演じてきました。そして、小林さんは本当に童貞と変態の声が上手い。何を言っているかは分かる人には分かると思います。
これを読んでいる人は童貞と変態が好きな方ばかりでしょうから、ぜひ、見てみてください。オススメします。
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