第三章 超官エドガー(2)

 10月10日(土) 都立高等学校体育祭


 平均17.7度、最高気温19.8度、天気は快晴。「ハンナ」と「仁雄」の学校で開催される「都立高等学校体育祭」。「ハンナ」の保護者「母」と弟「シモン」はもちろん、保護者ではないものの観覧者として樋串武学園の生徒会8人、「アトラス兄妹」と従者「ハイペリオン」、超官「エドガー」、「雅史」を筆頭に「サッカー部」一同のほか、フォルテ中学校の生徒5人「ミュゼット」「和子」「カルウ」「チイア」「ブチョ」が応援に来てくれた。「ハンナ」と「仁雄」が入場する前に...。


「(雅史:)ミュゼット、僕達の知らない3人がいるけど誰かな?」

「(ミュゼット:)そういや話してなかったな。私の知り合いのカルウとチイア、1つ下のブチョだよ。」

「(カルウ:)カルウ...。本当の名前はヨウコ・ヴァレンズエラ...ていう...。え...師匠を応援するため...ていうか...そんな感じ...。」

「(清子:)ぎこちない話し方ですわ。もしかして、人見知りとか?」

「(ミュゼット:)あー、人見知りが激しく寂しがりやで引っ込み思案で悪いね。」

「(チイア:)僕はチイア。変なあだ名だけど、本名は高橋ツバサっていうんだ。ミュゼットさんがいつも世話になっていてもう。」

「(ブチョ:)サトミだよ。雪郎先生からはブチョって呼ばれてるけど、ミュゼットとカルウとチイアならサトミって呼んでくれるよ。」

「(清子:)あなた達のあだ名はどれも変ですわ。考えられるのは、雪郎先生絡みですかね...。どうしてわざわざ変なあだ名をつけるのでしょうか?」

「(ミュゼット:)私だって聞きたいくらいだよ!!つい最近の話だけどな。雪郎のやつ、どんな手を使ったかは知らないけど、勝手に私の知り合いに変なあだ名をつけといて...気がついたら3人の変なあだ名はフォルテ中学校内に知れ渡っちまった。ったくもう、知り合い3人を巻き込んで何を企んでいるのだろうか。」

「(雅史:)あーい。変なあだ名の由来についてだけど、サトミって部長か何かかな?カルウもボーカルウーマンを3文字まで略したような。チイアやらは逆さから読むとアイチ(ライチじゃなく愛知)。雪郎先生の意図的な名付けはまさに奇妙であると思うよ。」

「(清子:)雅史さんの言ってることがめちゃくちゃですわ。」

「(ミュゼット:)めちゃくちゃな会話、テレビの前の皆さんじゃわかりづらいだろうな...。」

「(ラファエル:)コンブリオによる命名...か。昔、出来のいい俺のDIYに妙な名を付けたのは彼だったような...。ネーミングセンスに欠けるコンブリオの悪い癖だ。」

「(ミュゼット:)知ってるの?」

「(ラファエル:)俺が日本に来る前までは同期だった。今は大学1年生だがな...。」

「(カルウ:)へぇ...。先生と兄さんは知り合いね...。実は私たち3人も8月頃から先生と知り合ったんだよね。携帯電話ケータイ(F-02A Crystal Black)にメールが届いちゃって、おまけに変なあだ名までもらっちゃった。てへぺろ。」

「(ブチョ:)カルウ、それっ言う?」

「(チイア:)まあまあ二人とも。」

「(清子:)変なあだ名で呼び合ってますが、それでもいいのです?」

「(カルウ:)いいの風紀委員。もう慣れっこだから。サトミ、体育祭始まるよ。」

「(雅史:)ブチョ...いやいやサトミだけ普通の名前だし...。」


 都立高等学校の生徒が入場するなか、「ハンナ」と「仁雄」の姿が確認される。15分かけて開会式が執り行われる。この高校の校長および生徒会長の挨拶を適当に聞き流すほか、選手宣誓だけは真剣に聞く「雅史」であった。


「(増田:)たとえ普段はだらけているとしても、やるときはやる人なんだよ。それくらい本気出さないとな、立派な人にはなれんぞ。体育祭開会したからにはやる気を出し、これから活躍する俺等生徒の勇姿を、観客に見せてやろうじゃないか!!」

「(和子:)委員長さん、すごいです!!」

「(清子:)頑張りくださいませ委員長。」


 最初の競技種目は「50mリレー」。横に並んでいる4人の中、誰が速く走れるか競走する種目。全競技種目共通のお約束というか、得点の獲得について説明しよう。1位に9点、2位6点、3位3点、最下位1点という、得点が与えられる。


 「ハンナ」と「仁雄」は同い年であり同じ(赤)組。2人を応援したい「雅史」と「清子」。いざ、最初の競技が始まった。


 普段はだらしない「仁雄」が本気出して完走し、1位を獲る。続いて「ハンナ」は絶好調であった。他の女子に比べて安定した走りであるゆえ、彼に続き1位を獲る。

「[赤組:9][緑組:3][青組:6][黄組:1]」


「(雅史:)姐さんの走り、よかったよ。」

「(カルウ:)師匠、いつ見ても綺麗...。私も師匠みたいになれるかな...。」


 続きまして、次の競技種目は「玉入れ」。フィールドに4つ設置してあるカゴにそれぞれ自軍の色の玉を投げ入れ、赤緑青黄4色中どの色が多く入れるか競う種目だ。出場選手は6名。公式競技と同じルール(アジャタボール99個とアンカーボール1個、 2009年7月25日 (土) 06:24時点の記事を参照。)で行う。「ハンナ」と「仁雄」は赤組。各組にそれぞれ6名ずつ配置したところで競技が始まる。


 「雅史」の為に負けじと奮闘する「ハンナ」。可愛い部下が見てるんだ、こちらも頑張らないとなと本気出す「仁雄」。そして1位を掴み取る。9点獲得した。

「[赤組:18][緑組:9][青組:7][黄組:4]」


「(ブチョ:)二人ともすごいよ。さすがカルウの師匠。」

「(チイア:)そうだね。」


 3つ目の競技種目は「綱引き」。お互い綱を強く引っ張り合う、チームの腕力が問われる種目。1回戦「赤vs緑」「青vs黄」、2回戦「赤vs青」「緑vs黄」、3回戦「赤vs黄」「緑vs青」この組み合わせで競う。位置につき競技開始。


 「ハンナ」の腕力は「雅史」より高いが「仁雄」と他の生徒では彼女に負けているため足を引っ張る。黄組および青組の腕力は凄かった。赤組が3位、緑組が4位という結果に終わる。

「[赤組:21][緑組:10][青組:13][黄組:13]」


「(和子:)あ...。」

「(ミュゼット:)委員長さんよ、雅史の為に頑張ってるハンナ姐さんの足を引っ張てどうするん?」

「(カルウ:)むぅ...。」


4つ目の競技種目は「騎馬戦」。4人編成で相手チームの鉢巻を取り合う種目である。「ハンナ」を騎手、「仁雄」を騎馬の先頭とする。各組それぞれ位置につき、戦列を整えたところで競技開始。


 綱引きに続き、黄組の怒涛によって赤組は劣位に立たされた結果、2回連続で3位。緑組が2位で、青組が4位だった。

「[赤組:24][緑組:16][青組:14][黄組:22]」


「(雅史:)あぁあ!!」

「(清子:)あの黄組、何か裏があるようですの。」

「(ミュゼット:)そうか?あいつらはただ、絶対負けじと本気出しただけじゃないの?」

「(清子:)ならいいですかね...。」

「(エドガー:)ほぅ...。」


 4つ目の種目が終わり、次は昼食・休憩時間。弁当は「ラファエル」が用意してくれるようだ。しかもみんなで分けて食べる大容量タイプ。


「(ラファエル:)俺が作った豪華な弁当、とくと味わうがいい。」

「(雅史:)ちょwwwwwwラファエル特製ガラクタ弁当じゃんwwwwwwwwwww」

「(清子:)おかずは...シャケにカラマリ...チェリートマト、タコ足、エビフリャー、短く小さいブルスト、ポテトサラダ、パセリ、太長いブルスト(フランクフルター・ヴルスト)、串に刺さった肉団子、甘いソースに包まれた平たいフリカデレ、いちご、切り分けたみかん、細長いポテトチップス(和製名称:フライドポテト)、その下にレタス。盛り過ぎてその底が見えません。さすがのハンナさんとその弟さん、親御さんも引きますの。」

「(シモン:)姉さん...そんなに食べきれないよ...。」

「(ハンナ:)みんなで食べれば大丈夫。そうでしょう?」

「(ラファエル:)...無論だ。フォルテ中学の連中もどうだ?」

「(カルウ:)カラマリ、エビフライ、タコ足...私、海産物しか摂らないの。ごめん。」

「(ブチョ:)じゃあ...あたしはソーセージにしようかな。」

「(チイア:)僕、ポテトサラダ。」

「(和子:)ハンバーグはおいしいですよね。」

「(ミュゼット:)肉全般、みかん取ろうかな。」

「(ラファエル:)ダイアナ、我が妹も食え。それとハイペリオンよ、貴様もだ。」

「(ダイアナ:)ラファ兄がそういうなら、チェリートマト取ろうかな。」

「(ハイペリオン:)御主人様のガラクタ弁当うまそうじゃん。おかず1個1個片っ端からいただくとするか。」

「(雅史:)じゃあ...握り飯ない?お米がなきゃ始まらないよ。」

「(ラファエル:)雅史の好きな米は弁当の底にある。掬って食べなさい。」

「(雅史:)やっぱお米が一番だね♪」

「(ラファエル:)生徒会の皆もさあ。」

「(ヤミ:)ああ。」

「(動木:)ありがたくいただきますわ。」

「(ラファエル:)風紀委員長も食え。」

「(増田:)...かたじけない。」

「(ラファエル:)超官も。」

「(エドガー:)...野暮用ができました。食べられなくて申し訳ありませんね。」

「(ラファエル:)...野暮用...か。異常なまでの点数を獲る黄組が気になるのか?」

「(エドガー:)ええ、そうです。杏璃さん、健太さん。お二人の力を借りたい。」

「(杏璃:)...。」

「(健太:)弁当食べたかったけど、痩せるためなんだ。超官の野暮用に付き合ってやるよ。いこう、杏璃ちゃん。」

「(ラファエル:)くれぐれも気をつけよ。」


 超官「エドガー」と「杏璃」と「健太」はこの場から離れ、怪しい動きをする黄組の一人を追跡するのであった。


「(エドガー:)私が指揮を執ります。さあ、課外授業の続きです!!」


【Phase-2】

「(黄組の一人:)...誰も見てないな。神の水ゴッドアクアを補充しないと。」


 本当なら負けっぱなし...やられ放題のはずの黄組が、まさかのドーピングアイテムを使ってズルしていた。心の弱い人に取引を持ちかけ、タガが外れたものを押し付ける謎の勢力の一人「闇の商人」。


「(エドガー:)何者ですか!!この学校の者ではありませんね。黄組の方、ボトルを置いて速やかに離れなさい。」

「(黄組の一人:)...でも、チームのために欠かせないものだから。」

「(エドガー:)...そうですか。なら仕方がない。」


 前回に続き、超官「エドガー」は黄組の一人に対して、能力「北極星服従ポーラスターオベイ」を行使する。


 おびただしい超官の威圧に黄組の一人は固まり恐れおののき、素直にこの場を離れた。「杏璃」と「健太」はまたもや沈黙してしまう一方、得体のしれない謎の勢力の一人「闇の商人」には効かなかった。


「(エドガー:)...我の能力をもってしても沈黙しないとは、なにやつ!?」

「(闇の商人:)我は闇の商人。大いなる闇に奉仕する者...。」

「(エドガー:)貴様のいう大いなる闇とは、いったい誰を指している?」

「(闇の商人:)これからいなくなる貴様らに言う必要もあるまい。」


 「闇の商人」の能力「ダークエンタングル/Dark Entangle」は相手に闇の塊を固着し、動きを封じる。この状況で打つ手がなく、超官「エドガー」はこのまま闇に飲まれるだろうか...?その時だった。


「(ラザール:)カップ麺の芳香を味わえ。」

「(闇の商人:)...邪魔が入ったか。」


 学園長「ラザール」が乱入したことにより「闇の商人」はこの場を離れる。


「(エドガー:)...学園長。いつからいらしたんですか。」

「(ラザール:)いやぁー、どうしても面倒事を避けたいんでね。」

「(エドガー:)避けたいのはわかりますが、なぜ他校にいると聞いているのです。」

「(ラザール:)ええ、生徒会長から聞いたよ。キャプテンさんの姐さんことハンナさんの体育祭がどれほどのものなのか見物しに来ちゃった。」

「(エドガー:)それはわかります。...もしかして、このドーピング事案の事はラファエルさんから聞いたのですか?」

「(ラザール:)昼頃にここに来たけど、君がいないからラファエルさんに聞いてみたらもう、まさにその通りだったよ。手ぶらの黄組の一人が飛び出てるのを見かけてね、何事かと思ったら...。」

「(エドガー:)ええ、学園長が来た時点で怪しい人は逃げられてしまいましたがね。」

「(ラザール:)これは申し訳ないことになったね。では、昼休憩が終わるようだし戻ろうか。」

「(エドガー:)...そうですね。」


 超官「エドガー」とお荷物同然の「杏璃」と「健太」は学園長「ラザール」とともにみんなのいる場所に戻っていく。


 その後、借り物競争、職員専用競技、組体操、選抜リレーといった競技種目をこなして...。


+9 +3 +6 +1

「(借り物競争:)[赤組:33][緑組:19][青組:20][黄組:23]」

 「ハンナ」が借りたお題は、「カルウ」のジャズベース。「仁雄」の場合は「清子」のゲーム機であった。

「(カルウ:)師匠...私の楽器を丁重に持ち運んでくれた...。」

「(清子:)委員長...わたくしのポケットゲームを...雑に扱わないでください!!」


 職員専用競技は対象外。教師はどれも頑張ってた。


+9 +6 +3 +1

「(組体操:)[赤組:42][緑組:25][青組:23][黄組:24]」

 人間円塔の頂上は「ハンナ」。その出来の良さを大いに評価された結果であった。

「(雅史:)姐さん最高!!」

「(カルウ:)師匠!!!!」


+9 +3 +6 +1

「(選抜リレー:)[赤組:51][緑組:28][青組:29][黄組:25]」

 「ハンナ」と「仁雄」の頑張りで、勝利をもぎ取った。

「(雅史:)やったぁ!!姐さんが勝った!!」

「(和子:)赤組の勝利は確定ですね委員長さん!!」


【表彰式 - 順位発表】

1位:赤組(51点)

2位:青組(29点)

3位:緑組(28点)

4位:黄組(25点)


 優勝は、「ハンナ」と「仁雄」のいる赤組であった。

「(ハンナ:)雅史くんの為に勝った。だから...。」

「(増田:)奮闘した甲斐があった。」


 以上をもって、都立高等学校体育祭のすべてのプログラムを終了。閉会後...。


「(雅史:)姐さん、よく頑張ったね!!」

「(カルウ:)師匠、お疲れ様!!」

「(ハンナ:)応援ありがとう、雅史くん。ヨウコさん。」

「(増田:)ああ...疲れた。帰ろう...。」

「(和子:)そうですね。一緒に帰りましょう!!」

「(清子:)ところでカルウさん。雪郎先生とは8月頃からの知り合いとそう言いましたのね。あだ名をつけられただけじゃないように見えます。何か裏がありますの。あだ名だけでは飽き足らず、軽音楽部チーム生成とか?...あら図星でしたの?」

「(カルウ:)...正解。13歳のサトミのほかに、カリフォルニアにいる12歳のデイカ(あと18日で13歳だけど)と11歳のガジュ、ロンドンにいる12歳のバニラことアヤチ。残りのあの3人は携帯電話通信モバイルネットを通して知り合ったの。私たち5人で『K-ON』よ。てへぺろ。」

「(清子:)...気になることがありますが、その『てへぺろ』とは何ですの?あなたがたの持ちギャグですかね。」

「(カルウ:)流行語大賞を獲る私の持ちギャグよ。」

「(清子:)...変なものです。」

「(雅史:)ねえ、行きつけの拉麺軒ラミアンテンでラーメン食べようよ。」

「(ハンナ:)そうね。お母さんもシモンも行きましょう。」

「(シモン:)えー、もうお腹いっぱいだよ姉さん。」

「(カルウ:)海苔ラーメンある?海産物オンリーだから。」

「(ラファエル:)...結局のところ、黄組の連中とは何だったんだろうな。妙な動きをしてきたわりには手ぶらで戻ってきた結果、まさに負けっぱなし...やられ放題だったな。」

「(エドガー:)闇の商人...彼とはいったい何者でしょうね...。」


 体育祭を終えたみんなは、夕飯を食べるべく「雅史」の行きつけの拉麺軒ラミアンテイへと向かった。大将がいなくて、代わりにこの店を仕切ってるのは赤毛の「七面緋音」。何者かは語ることなく、彼女は客を選ぶ。客として入店した皆は彼女にラーメンを頼み、ラーメンパーティを楽しんでいくのであった。「雅史」のおごりで。


「(雅史:)大将の代わりを頑張ってるね。いつもの一丁...みんなの分よろしく。」

「(カルウ:)あっ私のは海苔ラーメン!!」

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