第三章 超官エドガー(3)

 10月14日(水) 放課後 生徒会緊急会議


【生徒会室】

「(ランス:)昨日の19時24分頃に不審な記事編集が確認された。」

「(ヤミ:)その話はと前にも言ったはずだ。」

「(ランス:)じゃあ、他校の体育祭でのドーピング事案をどう説明するのか?」

「(ヤミ:)...この件は学園長や超官に任せ、我々生徒会は現状維持に専念する。それしか何もできない。」

「(山本:)危害が及ばぬよう最低限の対応や対処だけほど、生徒会の行動範囲が限られているということですよ。」

「(ランス:)...。」

「(ルーカス:)ランス、探りたいという気持ちは分かる。今は会長に従うしかない。」


 生徒会会計「木村ルーカス/Lucas Kimura」。能力「トリック☆すり替え/Trick Switcheroo」は自分と相手の持ち物を交換する。強制的でも可能だ。


「(北村:)あのー会長。ワタシたち3人席を外したいんだけど。」


 生徒会会計「北村マルティナ/Martina Kitamura」。能力「ブレインジャック」は機械のコントロールを奪取し、意のままに操るハッキング能力。彼女は生身の人間である故、超能力者である故、そう...のちの世代に登場する人造人間のモデルとなる...。


「(ヤミ:)構わない。だが余計な行動は慎め。」


 「ランス」と「ルーカス」、「北村」3人は会議の席を外し、生徒会室を後にする。


「(動木:)いいのですか?」

「(ヤミ:)放っておけ。ランスが何をしようが、我々は外敵から守るだけだ。どのみち...遅かれ早かれ直面するであろう脅威に立ち向かわねばならない時が来るのだ。」

「(デイモン)会長...コンブリオとやらの通信が来たようでス。」


 生徒会書記「シャドウ・デイモン/Shadow Damon」。能力「暗黒汚染/Darkness Corruption」は影から形成される霧状の魔手で相手の胸または頭を貫き、混乱させる闇魔法。


「(ヤミ:)...なんだと?すぐに繋げ。」


 この時代にビデオチャットの概念がない。昔ながらのメッセンジャーを通して会話することになる。


「(アレグロ雪郎:)あんたが学園の生徒会長か。初めまして、かな。折り入ってあんたに頼みがある。...俺たちE.G.と連携しろ。」

「(ヤミ:)...どこの誰かは知らないが、お断りだ。知らない組織と組むつもりはない。」

「(アレグロ雪郎:)...そうか。それは残念だ。だがな、後悔するぜ。」


 結果は交渉決裂。お互いに通信を切る。外部の要望を拒否する生徒会長であった。


「(ヤミ:)...ラファエル。また余計なことを...。」


【河川敷】

 「サッカー部」一同は相変わらず、河川敷でサッカーやっている。ゴールキーパー「雅史」、ミッドフィルダー「ミュゼット」、ディフェンダー「健太」、フォワード「清子」4人構成で稽古していた。「ハンナ」と「カルウ」は持ち前の楽器でセッション、「杏璃」はただ楽しんでいる姿を眺めているだけ。


「(ミュゼット:)私に似ている子のマネいきます!!うぉぉぁぁああ!!!ザッタワァァァァ!!!!!」

「(清子:)ぅあぁっ!!」

「(雅史:)ナイスブロックだねミュゼット!!」

「(健太:)ここは通さない!!どすこいパヴィースゥ!!!」


 健太の能力「どすこいパヴィース」は文字通りの大盾で、自身を一定時間無敵状態にする。ディフェンダーにもってこいの能力である。


「(ミュゼット:)あぁあ!!取られた!!」

「(清子:)なかなかやりますわね健太さん。すぐに奪い取ってやりますわ!!はい、脚を凍らせブロックですわ。」

「(健太:)あぁぁ!!これ反則!!」

「(清子:)これのどこが反則ですの?これはハンドではありません。ブロックですわ。雅史さん、わたくしの必殺シュート、とくと見るといいですわ!!わたくしの脚に冷風を纏い、バックトルネードですわ!!」

「(雅史:)おお!!清子のシュート!?ならこっちも技で応えなくちゃ。ごっつぁんです!!」

「(清子:)雅史さんったら、運動能力に乏しいわたくし相手におとなげないですわ!!」

「(雅史:)君には伸びしろがある、そのための稽古なのよ。」

「(健太:)杏璃ちゃん!!こんなところで座ってないで中に入ってよ!!」

「(杏璃:)あ、はい。」

「(ミュゼット:)杏璃、いくよ!!私と一緒に...バタフライドリーム!!」

「(雅史:)ごっつぁんです!!なかなかのシュートだよ、ふたりとも!!」

「(ミュゼット:)よかったな杏璃、雅史に褒められて。...あんた嬉し涙流してさあ。」

「(杏璃:)...え?そうなんですか?あれ、おかしいです...。何故でしょう...。」

「(雅史:)最近疎かになっていてね、たまには一緒に遊ぼうかなと。心配することはないよ杏璃。」


 ところが、生徒会3人「東雲ランス」「木村ルーカス」「北村マルティナ」が通りかかる。


「(雅史:)あ、生徒会3人だ。」

「(清子:)わたくしが初めてサッカー部に接触した時と同じ展開ですかね...。あなた達生徒会がわたくしらに何のヨーですの?」

「(ランス:)...頼みがある。」

「(清子:)頼み...とは何ですの?」

「(ランス:)超官が取り逃がした例の商人について調査してほしい。」

「(清子:)...副会長の頼みでしたら手伝いましょう。会計おふたりさんも連れとして同行していますし...お荷物にならなければいいのですが。」

「(ルーカス:)僕たち会計を舐めないでくれないか?」

「(北村:)お荷物じゃないのよワタシたち。」

「(雅史:)や...用件はまたにしない?18時から見たい番組が4連続あるんで。」

「(ランス:)テレビばっかり見てないで勉強しとけよ...。」

「(ルーカス:)それだから帰宅部は...。風紀委員だけ連れて行こう。」

「(雅史:)清子、DVDレコーダーみたいな録画機ある?予約しておかないと、人生後悔するよ。」

「(清子:)...わたくしの居間にそれらしきのものはあります。DVDレコーダーのものですがね...予約は一応してあります。抜かりありませんの。」

「(雅史:)風紀委員の仕事だから抜かりないかなと...よし、問題ないね。生徒会3人一緒で調査行ってらっしゃい。」

「(清子:)行ってきます。...ランスさん行きますわ。」

「(ランス:)ああ。」


 今回は「サッカー部」抜きで「例の商人」を調査に行く「清子」であった。


「(雅史:)じゃあ帰ろっか。」

「(ミュゼット:)そうみたいだね。もうすぐ日が暮れるし、帰ろう。カルウ、帰るよ。」

「(カルウ:)あ、はい。師匠、また明日セッションしよう。」

「(ハンナ:)うん。...雅史くん、一緒に帰りましょう。」


【Phase-3】

 ここは品川。2009年10月14日時点の昔ながらの風景はいかに?駅港南口から降りた「生徒会」3人と「清子」は、「例の商人」を調査することになった。まずは地元の人に「例の商人」の情報を聞き込んでみる。


「(品川の生徒:)知らない。」

「(ランス:)そうか。わざわざ呼び止めて悪かった。」

「(清子:)副会長、交番に聞いてみてはいかがです?」

「(ランス:)...それもそうだな。」


 交番に人に聞いてみるも...果たしてどうだろうか?


「(品川のおまわり:)そんな事している暇があるなら勉学しなさい。」

「(ランス:)...だってさ。」

「(清子:)...おかしいところがあるの気になりますが、他を当たりま...超官に付いたほうが手っ取り早いですわ。...それにしても、なぜ品川でしょうかね?」

「(ランス:)...さぁ、何だろうね。」


 公共の場を見渡す2人。お荷物同然の会計2人。物陰に隠れている、どう見てもあやしい男1人。


「(清子:)物陰に隠れている男ひとりに声をかけてみます?」

「(ランス:)...そうだね。」


 物陰に隠れている男に声をかけ、「例の商人」の情報を聞き出す。


「(???:)あ、別にね。あやしい者じゃないだから僕。ホント。」

「(ランス:)そんなことより、例の商人を探してるんだけど何か知らない?」

「(???:)...。」

「(清子:)他を当たりましょう。この人に何を言ってもダメですの。さ。」


 物陰男に何を言っても無駄であるとみて、物陰をあとにする。...?


「(女子高生:)あっ、ごめんなさい。」

「(清子:)ちゃんと前見ましたの?前をよく見ないと痛い目に遭いますわ。目前には十分お気をつけてくださいませ。」


 女子高生とのすれちがい...の後に何かが起きようと。物陰の隠れていた男が出てきて、わざとらしく女子高生にぶつかる。


「(女子高生:)ぁいたたっ!!...!?私のバッグを!!」


 女子高生の悲鳴にいち早く気づいた「清子」は、スリの常習犯を氷で拘束。


「(清子:)先ほどのあなたがた、悪いことはおやめくださいませ。」

「(スリ:)...おかっぱめ!!」


 その後、先ほどの交番に「スリ」の身柄を引き渡した。めぼしいものはなく、女子高生からの感謝はくだらぬ情報だけ受け取った。


「(清子:)説明下手で、ごめんあそばせ。」


 ...地味かつ何の成果も得られなかった「生徒会」3人と「清子」。だが、こことは違う場面(エンブレムターン/Scene transition)なら...物語は大きく動く。


「(場面チェンジ・駅港南口→品川の神社:)♩E, ♪F#, ♩G, ♪C, ♩F」


【品川の神社】

 超官「エドガー」は「帰宅部」改め「えた☆そな部」の部員4人「鍋小路マチ」「中川魄子」「家坂コダック」「ゾーイ・エンジェル」連れて、特別課外授業をしていた...!!場所は品川の神社、なるべく目立たない場所。


「(エドガー:)コンブリオさんの祖父の情報によるとこの神社ですが、どうやら当たりのようです。」

「(マチ:)超官、俺たち帰宅部...いやえた☆そな部4人を連れて特別課外授業とはいったい...?」

「(家坂:)ほほう、あれが噂の商人ですね。わかります。おぞましいニオイがプンプンとねぇ。」

「(ゾーイ:)...一筋縄ではいかない捕縛劇になりそうね。」

「(魄子:)あらかじめポインタを作成しておいたから、いつでも行き来できる。」

「(エドガー:)準備はいいですね?私の能力が効かないことが判明した以上、あなたたちが頼りです。期待してますよ。」

「(マチ:)俺の能力なら...なんとかできそうだ。」


 彼の能力「ライトニング」なら「闇の商人」の能力「ダークエンタングル/Dark Entangle」を取り払うことが可能だ。


「(闇の商人:)...そうかな?ククク...。」

「(エドガー:)笑ってられるのもイマノウチだ。我が教え子の能力を受けるがいい!!」

「(マチ:)闇の瘴気を取り払え...!!」


 「鍋小路」の能力で「ダークエンタングル」を取り払う。...!?


「(闇の商人:)我の闇を取り払っても無駄だ。」


 「闇の商人」の能力はフェイントに過ぎない。懐から短剣を取り出す。生徒を片っ端から刺そうと動く...まずは「コダック」から!!


「(家坂:)あ、僕は非戦闘員なので武器は持ってません!!虫眼鏡でどう戦えばいいですか超官!!や、られる!!」

「(ゾーイ:)殺るなら私にして!!」


 「ゾーイ」は仲間を守るべく「クレイパペット」を召喚し、「コダック」を守る。間一髪で間に合ったもの、刺された「クレイパペット」はただの土塊に。


「(家坂:)...すみませんゾーイさん。」

「(エドガー:)油断は禁物です。あなたたち4人で奴を取り押さえましょう!!」

「(マチ:)あ、はい!!」


 「えた☆そな部」4人は「闇の商人」を取り押さえる。


「(エドガー:)よし、いいぞ。あとはコンブリオさんに報せるだけ。」

「(マチ:)抵抗できないよう取り払ってやる。」


 「鍋小路」の光でとどめを刺し、確保に成功。超官「エドガー」はこの時代では最も珍しいスマートフォン、QWERTYキーボード付スライド式の携帯電話ケータイ(X1 Kovsky)を使い、「コンブリオの祖父」に報告する。


「(エドガー:)こちらエドガー。ターゲットを確保しました。今週末に帰還します。」

「(マチ:)...ふぇ?」

「(魄子:)...今、帰還するって?」

「(エドガー:)...ああ、『学園に帰還する』と言ったのです。さぁ、魄子さんのサークルポータルで帰りましょう。」

「(マチ:)...魄子、開けてくれ。」

「(魄子:)あ、うん。」


 彼女の能力「サークルポータル」でポインタを作成し、皆はポインタを潜り帰還していった。


 10月19日(月)以降、超官「エドガー」の姿を見た者は誰もいなかった...。


「(ラファエル:)...超官はお帰りになられたようだ。残念だが、我が妹とハイペリオン、残された期間が半年だけの俺3人で頑張らないとな。」

「(ダイアナ:)ラファ兄...置いていかないで...。」

「(ラファエル:)案ずることはない、半年の間だけだ。ハイペリオンよ、来年俺が帰国しても我が妹を頼めるか?」

「(ハイペリオン:)御主人様の頼みならお任せあれ。命に代えてもダイアナをお守りいたしますよ。」

「(ラファエル:)それを聞いて安心した。そのときはよろしくな。」


 超官「エドガー」が帰国したことを受けて、彼の物語は終了。心細くて涙する妹「ダイアナ」、来年3月末まで居続ける兄「ラファエル」、御主人の言いつけを守る従者「ハイペリオン」。この先の展開はどうなるだろうか...?


「(清子:)...ランスさん、あなたがたのせいで貴重な時間を無駄にしましたわ!!」

「(ランス:)ぐっ...。」

「(ヤミ:)だから言っただろう。余計な行動は慎めと。」

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