第二章 アトラス兄妹(3)

 9月7日(月)


 この前の遊びが楽しかったのか、部活動結成を検討していた「鍋小路マチ」は、メンバー募集をかけることになった。この学園にセシィー設置するための資金調達(3万円)、部室の確保、やることは山積みで大変そうだ。御主人様の指示がなきゃただの暇人である「ハイペリオン」が、部活動しておらず風紀委員の仕事だけの「清子」を引っ張って彼に声をかけていた。


「(ハイペリオン:)よぉ鍋小路。悩み事かぁ?」

「(マチ:)この前の遊びがいかに楽しかったのか、部活動結成を検討している。」

「(ハイペリオン:)なら話が早い。そのための風紀委員を引っ張ってきたぜ。」

「(清子:)わたくしを連れて、どうするつもりです?」

「(ハイペリオン:)部活結成の手伝いを頼むぜ。...なんて部活にするかな?えた☆そな部??」

「(清子:)風紀委員の活動範囲が広く、とても忙しいので部活動なんてしている場合じゃありませんの。」

「(ハイペリオン:)そう言わずに手伝え。」

「(清子:)...困りました。雅史さんの手を借りないといけませんわ。連絡してみます。」

 彼女の携帯電話ケータイ(P-03A White)を使い、「雅史」の助けを借りるべくメールする。その返答はYESであるらしく、数分も待たず駆けつけてくれた。


「(雅史:)手伝いに来たよ。えた☆そな部結成するんだね。...じゃあまずは部室の確保からいこう。話はこれからよ。」

「(ハイペリオン:)それと、帰宅部の根城である放送室はやめとけよ。帰宅部のみんなが使うものなんだし、ただゲームをするためだけに放送室を独り占めするとかえって面倒だぜ?」

「(マチ:)...よし、わかった。1人のサブリーダーと6人の幹部を連れて相談してみる。場所はフロア3のコンピュータ室でおこなう。」


 そうと決まれば、「鍋小路」は7人の仲間を誘ってコンピュータ室で「えた☆そな部」結成について話し合うのであった。


【フロア3・コンピュータ室】

「(マチ:)折入って話がある。」

「(中川魄子:)話って何なの?」

「(テレパシーマン:)さては、えた☆そな部とやらを結成したいわけか?」

「(ディテクティブマン:)ほほう、悪い話じゃなさそうですね。」

「(フレイムガール:)面白い話じゃのう。」

「(ネクロガール:)気になる。もっと教えて。」

「(サイスマン:)我々はそれを知りたいです。」

「(オラクルマン:)ぼくらのリーダーが部活動と?」

「(雅史:)わぁぁ、幹部を含めた帰宅部8人が勢揃い...。」

「(ハイペリオン:)そういうわけだ帰宅部の諸君。風紀委員の口から部活のルールを説明してくれるぜ。」

「(ディテクティブマン:)...風紀委員ですと!?生徒会の差し金ですか!!」

「(マチ:)待て、コダック。...清子、説明頼む。」

「(清子:)部活動結成するには、誓いを立てなければなりません。あなたがた帰宅部の名の通り、放課後即帰宅はおやめなさい。部活とは学園内で楽しむためのものです。いいこと?即帰宅しないと約束してください。」

「(オラクルマン:)リーダー、生徒会の言う事聞いてのかね?」

「(サイスマン:)どうも胡散臭くて、罠の可能性もあるのではないかと。」

「(マチ:)いや、いいんだ。我々帰宅部はこんなものだし、それに清子は他の生徒会とは違い、信頼に足る風紀委員だ。誠実な人柄に心動かされた。そのまま帰宅して遊んでも勝ち組の連中のように満足できないままだ。カネを出し合い、我々が使うセシィーを手に入れ、連中に負けないくらい満喫しよう。もちろんソフトは俺が持ってる。最小29980円必要だが、最大3人協力プレイができるのを視野に入れると追加のジョイパッドを含めた最大35480円という莫大な出費がかさむことになる。金銭面を考慮して前者を選ぶ。」

「(雅史:)待った。7人のカネを出し合っても足りないのでは?帰宅部の小遣いは基本的に1人最大2000円、ここにいる幹部でも合計14000円しかないよ。金銭のやりくりしている時間は鍋小路的にはないでしょ?じゃあ、僕が一肌脱ごうかな。」

「(ディテクティブマン:)僕達帰宅部の下部のキャプテンがそれを言います?下部に過ぎないアナタに何ができるというのですか?」

「(中川魄子:)私達をなめないでキャプテン。帰宅部幹部だけで十分、私達の問題に首を突っ込むのはちょっと。」

「(テレパシーマン:)キャプテンの貯金から足りない分15980円出すと考えてるようだが、これは俺たち幹部の問題だ。帰宅部の下部であるサッカー部のキャプテンは手を出さないでくれないっか?」

「(雅史:)...。」

「(清子:)話は済みましたか?帰宅部のみなさんを束になっても生徒会Eightにはかないませんが。」

「(マチ:)帰宅部の結束を見くびらないことだ。...無理でも小遣い前借してみせる。野郎ども、明日前借したカネを俺の元にな。」

「(雅史:)...そう簡単いくかな。」


 次の日の放課後、「鍋小路」の指導のもと親にお願いして小遣いを前借した金額は合計29980円。負け組の意地でつかみ取った結果であった。


「(マチ:)これだけあれば、セシィ―が買える。野郎ども、家電ショップへ向かうぞ。」

「(ディテクティブマン:)金銭のやりくりしている生徒会会計のルーカス顔負けの結束力ですな。」


 資金が揃ったことだし、「清子」の行きつけの家電ショップへ向かうのであった。


【家電ショップ】

 物語の主人公「雅史」とお目付け役「清子」付きで家電ショップにやってきた帰宅部8人。肝心のセシィーは1台だけ残っており、資金が十分あるので今がチャンスなほどラッキーである。この前でレジ係「キャッシュ・レジスター」に「鍋小路」の顔を知られてしまったので、帰宅部のサブリーダー「中川魄子」がティルの前に立つことになった。


「(キャッシュ・レジスター:)見ない顔ですね。どちら様です?」

「(中川魄子:)中川魄子はくこ。鍋小路マチの幼馴染。部活動に欠かせないゲームコンソール・セシィ―を設置するため、お買い求めに来た。」

「(キャッシュ・レジスター:)セシィ―を求め...黒井清子様に続いてこの子ですか。」

「(中川魄子:)異論はあるの?」


 「魄子」の背後に帰宅部幹部が6人揃って、レジ係に圧力を加える。


「(テレパシーマン:)文句ばっかりって言いたいだろ?」

「(ディテクティブマン:)僕たちは客でしょう!!物売らないとはどういうことか?」

「(フレイムガール:)物売るっていうレベルじゃねぇのぉ!!一番困るのはわしらじゃろうが!!」

「(ネクロガール:)生徒会だけでずるい!!」

「(サイスマン:)我々帰宅部が目的のための買い物して何が悪いというのです!?」

「(オラクルマン:)かくなる上は、実力行使でいくとするか。」

「(中川魄子:)売る気になった?帰宅部7人で集めてきたこの金額29980円出すからよこして。」

「(キャッシュ・レジスター:)また生徒ですかって思っているつもりが、勝手に盛り上がってきて...。」

「(清子:)そこまでです!!...会計は済ませましょう。」

「(雅史:)そうそう、レジスターが混んできちゃあ迷惑だからね。」

「(キャッシュ・レジスター:)黒井清子様の顔に免じて、セシィ―を提供いたします。」


 トラブル寸前に「清子」の風紀委員の実力により、なんとか購入できた。そして不良グレがまた相まみえるえることになるであろう。当たり前のことだが、昨月の問題はいまだに解決されていない。


【帰路】

 案の定、複数の不良グレを引き連れた親分が待ち構えていた。


「(親分:)ここであったが100年目...。鍋小路、覚悟ぉ!!」

「(中川魄子:)鍋小路、この人は確かアンダンティーノ中学校の不良グレリーダー兵藤ひょうどう源郎げんろうだよね?」

「(雅史:)子分もいるよ?名前聞いてないけど。」

「(テレパシーマン:)名前は確か、小原おはら文太ぶんた。」

「(マチ:)...やれやれ。過ぎたことだ、にも関わらず俺を引きずっているとは。」

「(親分=源郎:)おれたちを巻き込んで餅田ヤミら勝ち組に勝負を挑み負けたくせに、よくそんなことが言えるよな。」

「(清子:)警告です。他校間のトラブルは許されません。鍋小路さんは心を入れ替えて、真っ当な人間になっているのです。兵藤さん、巻き込まれ憤っているお気持ちはわかります。ご理解しているようでしたら、鎮まりなさい。」

「(源郎:)...甘い、甘いんだよ風紀委員。この程度の言葉で退くとでも思ってるのか?」

「(ディテクティブマン:)ああそうですか。罪を重ねるアナタが見えてきますよ。家坂コダックという探偵の名にかけてね。」


 「ディテクティブマン」の名前は「家坂コダック/Coduck Yesaka」。能力「クリミナルアナリシス」は、相手の愚行を読み取ることができる能力だ。


「(テレパシーマン:)おっと、怒りをこみ上げようとしたって無駄だ。レオナルド・コンパッションなめるじゃない。」


 「テレパシーマン」こと「レオナルド・コンパッション/Leonardo Conpassion」。能力「テレパシー」は文字通り、心を読むことと自分の考えを相手に送り込むことだってできる。


「(フレイムガール:)いい度胸してんじゃのう。わしは穂村アツコ、ちょっとした炎使いじゃけん。」


 「フレイムガール」改め「穂村ほむらアツコ」。能力「焔」は同じ炎使い「ミコ」同様、拳から発する炎、口から発射する炎、周囲のありとあらゆる炎を操ることができる。


「(ネクロガール:)私はゾーイ・エンジェル。ネクロマンサーよ。」


 「ネクロガール」...いや、「ゾーイ・エンジェル/Zoe Angel」。能力「ツチクレ」は土塊を原料とした召喚法で、いろんなものを召喚することができる。一定のダメージを蓄積するか時間が経つとただの土塊に戻り、崩れる。


「(サイスマン:)いよいよ自分の武器を使う時が来ましたね。鎌田弦雄の名を、不良グレの頭に刻み込むことになるでしょう。」


 「サイスマン」とは「鎌田かまだ弦雄つるお」のこと。能力「デリンク/パワーリンク(Delinx/Powerlinx)」は自身の上半身と下半身を分離・結合する。


「(オラクルマン:)夢田巧、ぼくの名前だよ。」


 「オラクルマン」の本名「夢田ゆめだたくみ」。能力「神託」は睡眠時、天の声を聴くことができる。覚醒時には天の声の内容が頭の中に入っているという。


「(中川魄子:)私の能力で追い払ってやる。中川魄子だよ。」


 帰宅部のサブリーダーであり、主要人物の「中川なかがわ魄子はくこ」。能力「サークルポータル」は、2007年10月9日~2008年10月22日の間リリースされた日本では知名度の低い「どこでもドア」に類似したアクションパズルゲームのようにあらかじめポインタを2つ以上作成しておけばのちの「Dr.デカボット」が発明した転送装置『ワープゾーン』のような使い方が可能だ。


「(マチ:)よく聞け不良グレども。この俺、鍋小路マチがいかに反省しているのか教えてやる。」


 「雅史」および「幹部」をはじめ、帰宅部全員を統べるリーダー「鍋小路なべこうじマチ」。能力「ライトニング」はこの世に蔓延る悪の存在、闇および闇の瘴気を取り払う聖なる光。彼は決して悪者ではない、正しき心の持ち主の男である。


「(雅史:)指揮を執るのは鍋小路でいいよね?なら僕も負けてられない。不良たち、キャプテンの名は大原雅史だよ!!」


 「大原おおはら雅史まさし」はこの物語の主人公。能力「イマジナリームーブ」は彼の繰り出す技が漫画やアニメ、ゲームの必殺技のように具現化する。


「(清子:)鍋小路さんに指揮権を譲ります。生徒会風紀委員の黒井清子が徹底的に取り締まりますので不良グレのみなさん、覚悟あそばせ。」


 「黒井くろい清子きよこ」は風紀委員の性質なのか、いつも出しゃばるもう一人の主人公的存在。能力「Psychic-Tools」は超能力由来の攻撃魔法「念力(デフォルト)、炎、雷、氷」、補助魔法「シールド」を駆使する。


 昨月のトラブルが過ぎ、もう終わってるにもかかわらず、いつまでも「鍋小路」を引きずる「不良グレ」との因縁決着が今、始まるのであった。


【Phase-2】

「(源郎:)いくぜおい!!」


 不良グレの大群が押しかけていく。数的には不利だが、「魄子」の能力を使えば場外に出すことだって可能だ。相まみえることを想定してあらかじめ通学路にポインタを作成しておいたので、この場にポインタを作成しておけば不良グレ不良グレを通学路へ放り出すことができる。子分こと「文太」は場外に放り出されたが、親分こと「源郎」はポインタを避けつつ大将「鍋小路」に近づく。


 「ゾーイ」はリーダーには指一本触れさせまいと土塊を原料に「クレイパペット」を召喚する。「源郎」は自分の武器の斧で目前のものを薙ぎ払う。「ゾーイ」が塗り固めた守備は崩される。


 同じく「アツコ」はリーダーに近づけさせないと火を噴く。「源郎」の持つ斧に防がれる。


 「夢田」は天の声を聴き、「ハイペリオン」の召喚を勧めるも、インキュバスの連絡先がわからないようではどうしようもない。


「(夢田:)誰でもいい、例のインキュバスを呼ぶんだ!!」

「(雅史:)ハイペリオンの連絡先知らないよ!!...ラファエルに知らせても無理ようだし、万策尽きたよ。」

「(清子:)ですが周りをよく見なさい。不良グレは兵藤さんだけですの。他のは中川さんが全部放り出してくれましたの。わたくしたちのが有利な...はずです。」


 ところが、ポインタの中から「ハイペリオン」が飛び出てきた。


「(ハイペリオン:)来たぜ。レオナルドのテレパシーを聞いて何の騒ぎかと思えばこれかい。」

「(レオナルド:)やっと来てくれたか。頼む、俺の能力をもってしても止められない兵藤の奴をなんとかしてくれ!!」

「(ハイペリオン:)相手が男じゃぁちょっとだが、俺の能力を使う時だな。本当は男相手に使うなって御主人様にそう言われただがな。ま、いいか。...兵藤、お前の視界は真っ暗に悪夢を堪能せよ。」


 「ハイペリオン」の能力「ダークネス・ナイトメア」は相手の視界を遮り、悪夢を見せる。いつまでたっても「鍋小路」を引きずっている悪夢にもだえ苦しむ「源郎」の姿が。


「(ハイペリオン:)それだから御主人様の言う通り、使いたくないんだよ。」

「(清子:)ハイペリオンさん、今すぐ止めて。...止めて!!!って言ってるんでしょう!!」

「(ハイペリオン:)おかっぱ風紀委員がそう訴えているのなら、止めてあげよう。」


 「ハイペリオン」の能力「ダークネス・ナイトメア」を解除。それほど恐ろしい能力なのか...。


「(清子:)これで懲りましたか?鍋小路さんは既に反省しています。ご理解しているようでしたら、鍋小路さんの事は水に流しましょう。」

「(源郎:)...んぐぅ。なん...の...。」

「(清子:)はぁ...。雅史さん、同じ手を使いましょう。」

「(雅史:)シンクロ技だね。よし、いくか。」


 前回と同じシンクロ技「フリーズハンド」で「源郎」を氷漬けにした。


「(雅史:)...ごっつぁんです。これで懲りてくれるといいけどね。」

「(清子:)今の最高気温は26.5度前後、空は少々曇っているのですが数時間もかからず溶け出します。御心配なく。」

「(源郎:)[氷の中]オボエ...テ...ロ......。」


 気が付けばもう17時。もう閉門時間である。


「(夢田:)せっかくセシィ―買ったのに結局、設置できなかったね。どうするリーダー。」

「(マチ:)...最善の手は、ハイペリオン。セシィ―はお前が預かってくれ。」

「(ハイペリオン:)...なるほどな。帰宅部の誰かが持っていても家族に即バレで不都合、そんで両親はアメリカにいて、御主人様と3人暮らしの俺が適任ってわけか。いいぜ、引き受けてやるよ。」


 負け組てゃそういう事情なのであると。身内に勝ち組が二人いて、しかも両親はアメリカにいて条件がそろっている「ハイペリオン」にセシィ―を預けて、インキュバスは御主人様の集合住宅アパートメントへと飛んで行った。ここにいる帰宅部9人と風紀委員1人は「また明日」と、そのまま帰宅していった。


 次の日の放課後、フロア3・コンピュータ室にて同室内に置いてある20V型テレビ(参考:TH-20LX70)」にセシィ―を繋げてセットアップを完了し、すぐに遊べるようになった。帰宅部幹部とサブリーダーはAGKおよびKBCのごとく「ホワァァァァァ!!!!」という感動を禁じ得ない奇声を上げていた。USBスティックの中のセーブデータを使い、冒険を再開した。「帰宅部」改め「えた☆そな部」として一歩踏み出したのであった。


「(雅史:)そういや、えた☆そな部の顧問は誰なの?」

「(エドガー:)私です。ハイペリオンがいつもお世話になっております。」

「(雅史:)...超官なんだ...。」

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