第二章 アトラス兄妹(2)

 翌日。*9月4日(金)


【生徒会室】

「(ラファエル:)Back come on!!!!!(こうか?)先日は何だ!!門限を破り、人様に迷惑かけてまでひとンちでの外泊とは何事だ!!」

「(ダイアナ:)ラファ兄、すみません。」

「(ハイペリオン:)いやー恐れ入ります御主人様。」

「(雅史:)叱るなら鍋小路だけでお願いね。」

「(ラファエル:)鍋小路はどこだ、呼び出しに応じぬとは帰宅部らしいやつだ。」

「(清子:)ラファエルさん、鍋小路さんとはそういう人です。彼の行動原理、それは帰宅部の名通り、帰宅して遊びほうけていることがはっきりしました。」

「(雅史:)自分ンちじゃあ満足できず、清子ンちまで上がったのよ。みんなで夜アニメパーティだったけどね。」

「(ラファエル:)...くだらぬ言い訳だ。俺が直々接触するほかあるまい。」

「(ダイアナ:)ラファ兄、接触するなら毎週土曜日にして。エタソナとやらを遊ぶために清子ンちに行くと決めてるから。」

「(ラファエル:)...言われてみれば、気になるな。コンブリオによると、自分の初恋物語にそっくりだと聞く。我が妹がそう言うなら、翌日行くとしよう。」

「(清子:)ラファエルさんまでですか。そんなにわたくしンち行きたがるのですか、みなさんは。」

「(雅史:)そういやラファエルンちにセシィーあるの?」

「(ラファエル:)北米仕様では使い物にならん。(実家はニューヨーク州にある。)ってか俺の実家はもっと遠いぞ。...日本でどうやって暮らしているのかって?教えてやらん。」

「(雅史:)さては、勝ち組外人のくせにボロい集合住宅アパートメントで節約生活だったり。」

「(ラファエル:)な...!!」

「(雅史:)もしかして図星?当たっちゃったかな?」

「(ラファエル:)馬鹿言え!!...実家がニューヨーク州にあるとは言えど、アトラス家にそのような口をきくとは...いや、とにかくだ。翌日俺がついてるからな。いいな!!」

「(清子:)...飲み物を用意しないと。」


 次の日...。*9月5日(土)


【清子ンち】

 インターホンの音。来客「ラファエル」「ダイアナ」「ハイペリオン」「鍋小路マチ」「雅史」「ハンナ」「ミュゼット」が遊びに来る。「杏璃」と「健太」、風紀委員2人「仁雄(ときお)」「和子」は来ない。


「(雅史:)清子、みんな揃って遊びに来たよ。」

「(清子:)これはみなさんお揃いで、ようこそ。ごゆっくりくつろぎなさい。」

「(ラファエル:)邪魔する。」


 皆揃って家に上がる。セシィーが置いてある「清子」の部屋へと向かう。彼女の部屋には、ブラウン管テレビ、2008年からマイPCとして使い始めた自分用のラップトップ、この前設置したばかりのセシィーと蔵出しビデオゲーム8bitが揃っている。


「(マチ:)なぜ生徒会がここにいる?」

「(ラファエル:)貴様の持つエタソナとやらが気になる。見てみたいものだ。」

「(ミュゼット:)例のCDなら持ってきてるよ。」

「(ラファエル:)なっ!?それはまことか!?」

「(ミュゼット:)...聴いてみる?セシィー本体にこれを入れてね。」

「(マチ:)...まあいい。先にCD聴くとする。」


 セシィーにCDを入れて聴くところだが少し待て。


「(雅史:)清子ー、はじまるよー!!」

「(清子:)どうぞ定番の果汁100パーみかんジュースです。あ、CDが先でしたの。じゃあわたくしも聴きます。」

「(ミュゼット:)73分もあるよ??じゃあ始めよう。」


 皆揃って聴くことになった。


「(ラファエル:)正義感のあるコンブリオだ。」

「(雅史:)越前声の伯爵様...ってそんなキャラだっけ!?」

「(テレビの音:)ミュゼットと申します。よろしくお願いいたします。」

「(雅史:)ミュゼット、今なんと?」

「(ミュゼット:)いやいや、他人の空似でしょう。」

「(清子:)お残しはよくないことがはっきり確認されましたの。」

「(ミュゼット:)私はそんなキャラじゃない!!手つかずの料理なら私がおいしくいただけるけど、一口も食べなかったからといって全部捨てるとはどうかしてるよ!!ってか私、いじわるキャラじゃないんだけど。」

「(テレビの音:)ごほっごほっ!!」

「(ミュゼット:)私って、そんなに病弱キャラだっけ?」

「(マチ:)...黙って聴け。」

「(テレビの音:)そういえば、ミュゼットのご両親はどちらに住んでいるの?」

「(テレビの音:)そうね、ここよりも、もっと遠いところかな。もう何年経つんだろう...。私が旅に出てから村は流行り病に襲われて、父さんも母さんも。...気にすることないわよ。つらかったけど、脆弱の私のことを最期まで心配してたって聞いたら...天国の父さんたちも憧れたとこ見せられないわよね。」

「(テレビの音:)ツラい時こそ笑顔を見せるとは、あなたは強い人ですね。」

「(ハンナ:)これが、F・ショパンなの?」

「(ミュゼット:)私にはミュゼッタ・ヴァンガードという名前があるの!!(日本名では財前ざいぜん未夢みゆだけどね。)CDの女と一緒にされてたまるか!!」


 「ミュゼット」はそこでCDを一時停止する。


「(マチ:)何してんだよ。」

「(雅史:)あぁ、いいところなのに...。」

「(ミュゼット:)ちょっと待て!!このCDを聴いて、後から私にCD女の人物像を押し付ける気だろ!?」

「(雅史:)wwwwwまさか。ミュゼットの私情は河川敷で知り合った時から知ってるし、ペラペラ自分を語ってたでしょ?アセアン(東南アジア)・スラム街の少女で、君の両親は生まれたときからすでにいないとか。2年前(2007年)伯爵様に拾われ、適切な教育を受けたおかげで翌年、フォルテ中学校に編入できたと聞く。知人だからこそ、押し付けるつもりはないよミュゼット。」

「(ハンナ:)心配ない。雅史くんと私は誰よりもあなたを知っている。」

「(清子:)押し付けるもなにも、そのつもりはありませんの。ミュゼットさんはミュゼットさん、CD女はCD女。名前と性格は似ているといえど、必ずしも相違点がありますの。」

「(マチ:)続きを聴かせろ。CD女にとらわれるな。」

「(ミュゼット:)...わかったよ。ほれっ。」


 ジョイパッドを持ち、再生を押す。数分経つつれに物語が進んでいく。


「(雅史:)ちょwwwwwテニスの伯爵様www何やってんのwwwwww」

「(ラファエル:)伯爵のやつ、コンブリオの初恋少女にけしからんことをしてくれる。」

「(清子:)いやらしい伯爵の城クレムリンの玉座ってことですか。」

「(テレビの音:)その通り。...戻ってきてくれて嬉しいよ。...ああ、彼女のことか?」

「(雅史:)ちょwwwテニアール(The Earl of Tennis)wwwwwwww」

「(清子:)ずいぶん顔色悪いですね、あのCD女は。」

「(雅史:)びゃあぁぁぁCD子がウサギの怪物に変わったぁぁぁ!!!」

「(清子:)...自分の身内になんてことを...何が国民の喜ぶ顔が目に浮かぶようだよですか!!それでもクレムリンの伯爵ですか!!この外道!!」

「(マチ:)うぉぁぁああ、迫力のある場面だ。」


 熾烈なバトルシーンを皆で聴き、CD女の最期を聴き届ける。


「(テレビの音:)...だから力が必要なんだ。この世界に僕の存在を刻み込むだから力。それさえあれば。...っはは。[響く嘲笑]」


 73分にわたるCDを聴き終えた。「雅史」たちの感想の声はいかに?


「(雅史:)いやー、似ているけど別人であるミュゼットと伯爵様のそっくりさんがドタバタする内容だったね。実際の伯爵様はそんなキャラじゃなく、義理堅いお方だったような。」

「(清子:)このCDを聴いて発見がありました。実際の伯爵もそうであるように、CDのクレムリン伯爵は筋金入りの外道です。」

「(ミュゼット:)ドクターは自分の部下を想ってるの、あんなCDの外道と一緒にしないでほしい。」

「(雅史:)大丈夫、一緒にしないって。伯爵様(リアル)とテニスの伯爵様(CD)って区別すればいいでしょ?」

「(ラファエル:)聴き応えのある内容だった。コンブリオに報せないとな。」

「(マチ:)次はゲームだ。CDを排出させてもらう。」

「(雅史:)そんなことより、昼ごはん食べよう。」

「(清子:)では、ハンバーガー買ってきますか。」

「(ラファエル:)だが買いに行く時間はないぞ。...どうしたものか。」

「(ミュゼット:)ドクターに頼めばいいとは限らないし。私、料理できないし。」

「(ダイアナ:)ハイペリオンがいる。空を飛べるし、御使いにちょうどいいじゃない?」

「(ラファエル:)そうだな。ハイペリオンよ、食費800円を渡す。ハンバーガー8人分買いに出ろ。」

「(ハイペリオン:)御主人様の頼みなら、仰せのままに。光の速さでパッと済ませてやるから安心しろよ。何しろ俺はスピード自慢だからな。」


 「ハイペリオン」は光の速さでハンバーガーを買いに出て、約20分で戻って来る。


「(ハイペリオン:)どうぞロナルド三世(藤本ロナルド)のハンバーガー8人分です御主人様。」

「(ラファエル:)ご苦労。ほれ、貴様らの分だ。」

「(雅史:)ハンバーガーといえばポテト!!あれがなきゃ始まらないよっと言いたいところだけど時間は時間だし、これだけで十分といえる。ハンバーガーとみかんジュース、この組み合わせとはいかに???」

「(清子:)久々のハンバーガーは美味しいですの。本当は月見エディション(1個290円)買おうと思ったのですが予算の都合上、またのご機会になるかもしれません。雅史さん、来週一緒に食べに行きましょう。」

「(ハイペリオン:)ヒューヒュー!!おかっぱ風紀委員が恋してるぅぅ!!」

「(ラファエル:)...俺にも恋人が欲しいところだ。」

「(ミュゼット:)私にはまだ恋人がいないのよ。そういうハンナはどうよ?風紀委員長とはうまくいってるの?」

「(ハンナ:)うーん、どうかな。ヨシオくんとはうまくいってるかどうか、まだ先の話。」

「(マチ:)んがっんっんっ!!」

「(雅史:)飲み物あるのに、流し込まず頬張ってて。ぶつける場所間違えないでよ?」

「(ラファエル:)河豚田ふぐたの真似事か?」

「(マチ:)さぁ食べ終わったぞ。早速エタソナやるぞ。」


 「鍋小路」は持参のジョイパッドを手に持ち、ゲームを始めるのであった。


「(マチ:)ホワァァァァァ!!!!イェア!!クイックスタァン!!ヘェウェゴォ!!」

「(雅史:)いくら売りしたスピニィィィン?」

「(清子:)Ich will ETASONA Ich will spielen.って言いたいところでしょうか?」


 興奮が止まらない「鍋小路」。あきれる一同。ゲームを始めた時から順調...のはず。


「(雅史:)んあぁぁ、じれったい話じゃん。」

「(ハンナ:)じれったい話でも、気になるところもある。」


 長い長いイベントを経て進めていくと。


「(マチ:)なぜ俺の操作を受け付けない?」

「(清子:)実はこのゲーム、協力プレイができますの。協力してあげますのでよろしくて?」

「(マチ:)...好きにしろ。」


 実はこのゲーム、最初の1章でも約4時間かかるらしい。


「(清子:)やっと強敵を討ちましたわ。」

「(雅史:)そんで長い長いムービーとね。」

「(ラファエル:)このコンブリオ、誰かのために尽くしているのか。」

「(ハンナ:)こんなF・ショパン、私の持っているF・ショパンとはかけ離れている...。」

「(雅史:)噂をすれば、テニスの伯爵様じゃん。それにアンダンティーノアンダンティーノって、アンダンティーノ中学校の事を指してるのかな?」

「(ミュゼット:)ゲームの話でしょ。アンダンティーノ中学校は関係ないの。」

「(雅史:)wwwww。テニスの伯爵様が参謀役の爺さんの周りをぐるぐると回り、意外と子供だね。あと2時間あるけど、進んでみる?」


 そのままゲームを進んでみる。そこに面倒なイベントが待ち構えていた。


「(雅史:)ま...そういうこともあるよね。」


 イベントを踏破し、この先の展開を目の当たりにする。


「(テレビの音:)あれが○○○を使い続けた成れの果てさ。」

「(雅史:)ふぇ?倒した敵ってクスリやってるの?それってやばくない!?」

「(清子:)税金がタダ...つまり脱税。使い続けると狂ってしまうクスリの所持および配布は麻薬及び向精神薬取締法違反ですの。たとえ国のお偉いさんでも政府レベルのお方でも違反は違反。汚職にまみれたクレムリンの外道の逮捕も夢じゃないですわ。そんな恐ろしいやり方、伯爵ならやりかねません...。」

「(ミュゼット:)ドクターを悪く言わないで!!ドクターはお茶目さもあり、慈悲のあるお方で。ゲームの中の外道とは違うの。」

「(清子:)黒い噂があるみたいですが?」

「(ミュゼット:)ただの噂でしょ。」

「(雅史:)まあまあ、あと1時間だよ。時間の限り、ちゃちゃっと進もうよ!!」


 残る約1時間でゲームをどう進むのかと言いたいところだが、またもやお得意の長い長いイベント。


「(雅史:)また長い長いイベントぉぉぉ!!」

「(ラファエル:)足滑りそうな初恋少女に手を差し伸べるコンブリオは必見だ。」

「(雅史:)イベントが終わって進んでまたイベントぉ!!!」

「(清子:)嘘つけ。外道は国民のために働いているのではありません。国民を想う心なぞ、はなっからありません。なんて汚い外道なのですか...。」

「(雅史:)このゲーム、テンポが悪すぎて萎える。」

「(ハンナ:)雅史くんの言う、突っ込みどころが多いのに...どうしてもゲームの展開が気になる。...不思議。」


 要塞の中に複雑な仕掛けが待ち構えていて思うように進まない。セーブポイントのある部屋を見つけ、記録することに。


「(雅史:)17時59分ちょうどだ。そろそろアニメの時間だよ。ユメソ・ザ・ディテクティブ。」

「(清子:)もうこんな時間ですの。では見るとしますわ。」

「(マチ:)...まあいい、遊び疲れたところだし。気休め程度になるか。」


 ゲームはここまでにして、皆揃って30分間アニメを見る。既に日が暮れている。


「(清子:)セーブデータはUSBスティックの中にあります。わたくし以外の他人のセシィ―で遊ぶ時にこのスティックを使って本体にコピーすれば続きから遊べます。」

「(マチ:)恩に着る。今日中遊んでよかった、感謝する。」

「(雅史:)いやぁーほんと、じれったくて萎えることもあったけどね。また遊びに来るよ。」

「(ハンナ:)雅史くんがまた遊びに行くなら私も。」

「(ラファエル:)いいレポートが書けそうだ。学園にセシィ―を設置するよう尽くさんとな。」

「(ミュゼット:)それはそれとして楽しかったけどね。ダイアナ、CDありがとな。」

「(ダイアナ:)今日のあたし、何も喋ってないけど他校の生徒に感謝されるとは。礼はいいって。このCDあんたが持っててよ。」

「(ハイペリオン:)御主人様、集合住宅アパートメントまでお運びしますよ。」

「(清子:)またのお越しをお待ちしております。今日はありがとうございました。」


 皆は自宅に帰っていく。今日は大したトラブルもなく「清子ンち」でいっぱい遊んで一日を終えた。「ラファエル」と「鍋小路」、「ミュゼット」の人物像が少しわかった気がした。次はどんな日が来るのだろうか?

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