第3話 Inclusion
モルガン侯爵家現当主「ノア・モルガン」。
彼は齢十六にして当主となり、現在十八になったばかりである。
モルガン侯爵家は元より家業である宝石商として有名であったが、ノアが当主となってからは『宝石狂い』という異名が世間で知れ渡るほど有名な貴族となっていた。
現当主であるノアはアメシストのような深い高貴な紫色の瞳を持ち、光に透ける白髪を風にゆらす姿は歩くたびに多くの人々を魅了する。誰が見ても彼が貴族であると一目でわかるほどの高潔なるオーラを放っているのである。
彼が唯一無二の愛を捧げる宝石コレクションの保管場所は一族の者以外には誰にもわからない。
宝石の為なら、手段を選ばない彼の収集欲は尽きない。
いずれ幻の宝石の噂を知るまではー。
そう、彼は世間に溢れる宝石への欲望を体現した美しき『悪』の存在なのである。
【昼 ミラー男爵邸】
ノアから『レインボーガーネット』を手に入れてほしいと仕事を受けた次の日、執事のバーノンと従弟のウィリアムは昼間から宝石の所有者であるミラー男爵邸の門の前にいた。
この屋敷に住むミラー男爵家はそれほど社交界で話が上がらない、つまり成り上がったばかりの貴族である。邸宅はまだ使用人の手が回らないらしく、彼らのこぢんまりとした屋敷も英国式庭園もかなり貧相に見える。この土地全体にしっとりとした暗い空気が漂っていた。
バーノンとウィリアムは横揺れの激しい、つまり、居心地の悪い馬車でここまでやってきていた。
いつもであれば執事服で過ごしているバーノンも今回は着替えて、外向き用の昼の正装になっている。
一方、ウィリアムはというと、緑のベストに黒のフロック・コートを着用しているせいか、少し大人びた格好をしている印象を受けた。
さて、二人がミラー男爵家に入る前に、今回の同行者「ウィリアム」について紹介しておかなければならないだろう。
ウィリアムはノアの従弟で、エラの弟である。
彼の容姿は姉と同じくホワイトブロンドの髪色で、丸みを帯びたショートヘア、そして前髪を真ん中でふんわりと分けている。かわいらしい顔立ちに反して、ピンク色の瞳は生気がなく、初めて会った人はウィリアムに対して人形のような印象を受けるらしい。
そして、齢十四にして姉と同じく宝石管理をメインで任されているが、最近は裏仕事も手伝うようになっている。
そして、彼は無口なほうで、冷静沈着と言い表せる性格をしており、彼の優先順位は仕事が一番、その次に姉のエラとなっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます