伯爵の娘、リリア
術布にマナが貯まるまで数日はかかると思う。
その間、俺がやれることと言えば――。
「やっぱり、魔法の勉強しかないだろうな」
マジック・アカデミアに来たばかりの頃の
しかし、魔法を学ぶたびにどんどんと頭角を現してきて、立派な魔法使いへと成長を遂げる。
その時に隣に居るのはシナリオではエリオットという悪友なのだが、悪いな――その場所にはもう一人、
「フフフフフ……」
ほくそ笑んでいると、自室のドアを軽くノックする音が聞こえた。
「ケイオス様。たった今、魔法鳩が届きまして、リリア様が間もなくいらっしゃるとのことです」
「リリア……?」
頭の中にあるキャラクター辞典から引っ張ってくると、「居たような気がするなぁ~」程度の存在だ。
モブのモブなのでそれ相応の出番なのだろう。
「かなり急だな」
貴族なら、もっと前もって出迎えの準備とかの為に知らせがありそうだけど。
いやまぁ、今のが知らせと言えば知らせか。
「えぇっと……久しぶりな気がするな。どんな人だっけ?」
「久しぶ――いえ、確かに2週間前は待ち望むには長い月日。しかし、冗談はいけません。リリア様は伯爵家令嬢ですよ。失礼のないようにいたしませんと」
「ささっ、着替えてください」と言われ、いつもの服から少しだけかしこまった服に着替える。
そういえば、貴族に対しての知識とかないがその辺は大丈夫なんだろうか?
「間もなくいらっしゃる」と言われてから待つこと一時間で、やっと客人は現れた。
前後を騎士で守られた馬車がパカポコと屋敷の門前へとやってきた。
そして馬車の扉が開くと、フワッと可憐な花の香りと一緒に、一人の女子――と従者と思わしきメイドも中に居た――が馬車から降りてきた。
「ケイオスくんっ!」
ポンッ、と跳ねるように馬車から降りてきたのは、白磁のような綺麗な肌をしており、小さな卵型の顔に大きな碧眼。
髪の毛は
そういや、発注は人気のイラストレーターだったはずだ。
それが現実になると、これほどまで美少女になるのか。いやそうか、そもそも人間ではなかったんだし、生き物の限界突破をしているという訳か。
「ケイオスくん、大丈夫?」
などと考えていると、俺が止まってしまったことを不思議に思ったリリアが手を握ってきた。
「いやいや、大丈夫だよ。久しぶりに見たリリアが眩しくて」
「まぁっ! ケイオスくんはお上手ですね!」
「うふふ」などと笑っているけど、お世辞ではない。
本当に眩しいのだ。
いや、マジでなんだこれ。
目がつぶれ――。
「お嬢様。光魔法を止め忘れていますよ」
「そうだった! ケイオス様に見てもらいたくて、馬車の中で光魔法を練習していたんだったわ」
「あと、フットマンが用意するより早く降りるのは、危険でお行儀が悪いと何度も言っているではありませんか」
「そうですね。しょんぼりです」
口では「しょんぼりです」と言っているにも関わらず、満面の笑顔を浮かべている。
さてはコイツ、俺の目を潰そうとしたことに対して全く悪びれていないな……?
「ケイオス様、立ち話もなんですから庭園の椅子へご案内したらいかがでしょうか?」
執事に促され、まだ屋敷の中に案内していないことに思い至る。
そうだった。
こんなんでも、俺は男爵で相手は伯爵令嬢なのだ。
目を潰そうとしたことに対して文句の一つも言ってやりたいが、ここは穏便に済ますことにするか。
--------------------------------------読んでいただき、ありがとうございます!
ページ下部にある☆や、いいね、感想をお待ちしております!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます