嵐を駆ける者たち
「急な呼び出しで申し訳ありません」
開口一番に、マーグレイ先生が謝ると、冒険者たちは慌てた様子になった。
「いえ、マーグレイ
「そんなの、お安い御用ですよ。なっ、みんな!」
『
「あぁ、そうそう。私はこのギルドで初心者冒険者に、冒険のいろはを教える役目を担っており、そこから
俺の疑問を見透かしたかのように、マーグレイ先生が答えてくれた。
どうやら、俺のように家庭教師を雇えず、知識の徒手空拳で冒険者になろうとする人間に、冒険者ギルドが付けてくれる先生もしているらしい。
それの関係で、
「それで、依頼者はそちらの――貴族様ですか?」
値踏みする、というほど不躾ではないが、人によっては絡んでくる奴が居そうな程度に、一人がこちらを見て言ってきた。
「その前に、きちんと自己紹介をしなさい」
「「「「はっ、ハイッ!!!!」」」」
いつも柔和な笑顔をしているマーグレイ先生には似合わず、やや怒気をはらんだ口調で冒険者たちを窘めた。
「俺――いや、私たちは
「そして――」とクワスが横に居るメンバーたちの紹介を始める。
「こっちが、剣士エメット。剣士ソーラ。魔法使いのミニエフです」
「「「よろしくお願いしますっ!!」」」」
剣士――前衛に寄ったパーティーみたいだけど、マーグレイ先生が教えることはあるのだろうか?
男が3人で女が1人。クラッシュしないか心配な人数割りだな。
「さっそく依頼なんですけど、この術布をモンスターが多いところ、もしくは通りそうなところに置いて欲しいのですが」
そう言い、革カバンから取り出した術布は……。
「なんか、禍々しい雰囲気を醸してますが、人間には害はないですよね……?」
「害は、あります」
「えぇっ!?」
なんたって、俺とマーグレイ先生が作った一品だしね。
途中から興が乗って、催眠効果を入れて仲間を誘導する魔法を付与しようとしたけど、さすがにそこまでやると術布の効果よりもモンスターが集まる方が強くなって、パニックが起きそうなので止めておいた。
「害があるので、なるべく人が来ないところに設置して欲しいのです。マーグレイ先生からのお墨付きの皆さんであれば大丈夫だと思うので、こうして依頼をお願いしに来ました」
褒められたのが嬉しかったのか、4人は「へへっ」と照れ臭そうに笑った。
「もし、私の教え子たちで問題なければ、ギルドに依頼を出しましょう」
「直接依頼をする場合も、ギルドを通す必要があるんですか?」
「その場合は、指名依頼という形になりますね。ギルドを通すのは、ギルドにその依頼の保証人になってもらうためです」
「なるほど」
依頼を受けた受けてないの水掛け論になっても困るし、それでギルドまで悪影響が及んだら目も当てられないしね。
「では、
「はい」
ギルドの受付へ向かい歩いていく。
「あっ、マーグレイさん――」
「と、そちらは……」と聞こえそうなくらいの顔で、ギルドの女性職員がこちらを見てきた。
「こちらは、私が家庭教師をさせていただいている、ケイオス・アニックス様です」
ニコッ、となるべく警戒されないように笑顔で答える。
冒険者ギルドで教官をしているだけあって、受付へ行くまでにマーグレイ先生は声をかけられることが多かった。
「本日は、どのようなご用件でしょうか?」
受付から問われ、マーグレイ先生はスッと横にどいて俺を前に出した。
マーグレイ先生が全て話してくれると思っていたが、こうされては仕方がない。
「
「かしこまりました。では、内容をご記入ください」
相手も了承している指名依頼だったからか、依頼は簡単でとんとん拍子に話は進んでいった。
それに、マーグレイ先生の紹介というのも大きかったのだろう。
「では、依頼を出しておきますね」
「よろしくお願いします」
とは言っても、すでに話は通してあるんだから、後ろに立っていた
それにしても、面白い。
冒険者ギルドに依頼するシステムは、自分の代わりにダンジョンに潜ってもらったり、依頼を手伝ってもらう時などに使用するのだが、実際はかなり自由度が高いようだ。
「マーグレイ先生。今日は、ありがとうございました」
「いえいえ、お役に立てたなら何よりです」
教え子に仕事を紹介できたからか、それとも自分の手を離れて仕事を請け負った姿がたくましかったからか、マーグレイ先生は
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