第13話 Precious


私はヤツ。

つまりアイツと付き合う事になった。

アイツっていうのは香だ。

香と付き合う事になってしまった。

キスまでした。


だけど相談した結果。

学校では内緒にしようという話になった。

何故かといえば...落差が激しいから。

私が提案した。


「...それで良いのかお前は」

「私はそうじゃねーと困る。お前の立場もあるし」

「...お前、じゃない」

「...いや。おま...じゃなかった。香。勘弁してくれ。私は不良だったんだから口が治らねーのよ」

「まあそうだな。...だけどなるだけ名前で呼んでほしいもんだ」

「勘弁してくれ...」


私達は保健室を後にしてからそのまま教室に戻る。

すると教室中が騒がしくなる。

それからクラス中の男子が私達に向いてくる。


「粛清した」

「...何をだ?」

「クラスメイトを傷付けた奴らを粛正したんだ」

「...という事はまさか」

「そうだな。...垂水をイジメた上級生を告発した」

「...お、おう?」


香が絶句している。

私は驚愕してからつい口が開いた。

ありえない。

何故。


「何でそこまですんだよ!?私はお前らに義理がねぇぞ!?」

「クラスメイトだからな」

「そうだそうだ」

「どんな怖い奴でもな」


香が最後に私に向いた。

それから肩をすくめてから笑みを浮かべる。

何か言いたそうな顔だが。

その前に私は絶句したまま「...」となる。


「まあ...垂水は嫌な奴だけど」

「そうだな。俺も怖い。だけど」

「それ以外にも大切にするべき事があるしな」

「...」


私は絶句したまま涙が自然に浮かぶ。

それからポロポロと自然に涙が落ちる。

そして私は「...」となってから唇を噛んだ。

コイツら。

こい...つら。


「...まあ何というか...マジに理解あるクラスメイトだな」

「友人とかそういう以前に家族だしな」

「...俺もそれは思ったよ」

「つーか先ず許せなかったしな。単純に」


どっから知ったのか知らないけど。

コイツら...マジに。

本気で良い奴らだな。

世の中、信頼できない奴らばっかりだけど。

私みたいな殺人鬼に優しくしてくれるんだな。


「ところでお前らって付き合ってんの?」

「それ気になったわ」

「確かにな」


感傷に浸っているとそう言われた。

ぶふぁと噴き出した。

そして私は直ぐに真っ赤になる。

クラスメイトは注目してきているが。

どう答えるべきだ。


「...私達は付き合っている訳じゃねー」

「そうか?そうは見えないな」

「まあ夫婦の様だし」

「そうだよなぁ」


また噴き出した。

何だコイツらマジに!

私達に対してグイグイ攻め込んで来やがる!

クソッタレが!

そう思いながら私は香を見る。


「...もう言うか?蛍」

「いや。言う訳ねぇだろ!!!!!クッソはずい!!!!!」

「つーか夫婦かと思ったんだが」

「そうだな。なんせ名前で呼び合っているし」

「そうだよなぁ」


これは...マズい。

恥ずかしさが止まらねぇ。

クソッタレめが!

だけど。

コイツらなら信頼出来るか?


「...私達は...付き合っている」

「...え!?ほ、蛍!?」

「もう隠すのも疲れた。これだけ注目を浴びていたらもう無理だわ」

「...そうか。お前が言うなら...」


私は盛大に溜息を吐いて暴露した。

すると教室中の男子、女子生徒たちが「「「「「やっぱりなぁ!!!!!」」」」」と嬉しそうに反応した。

なん、だこの反応は。

私はまた絶句した。


「まあそうだと思ったよねぇ」

「だよな!」

「まあさっきの行動もそうだけど」

「だな」


クラスメイト達は安堵した様に見てくる。

私は見開きながら「...」となる。

すると香が頭を撫でてきた。

それから香は「俺達は今日から付き合ったんだ」と笑みを浮かべる。


「そうなのか」

「成程なぁ」

「成程」

「お前ら...が。マジに良い奴らだから暴露すっけど」

「了解だ。まあ隠せって事だよな」

「そうしてくれると助かる。今の段階ではな」


その言葉にクラスメイト達は頷き合ってから私を見る。

私達は男子、女子達に囲まれる。

そして質問攻めにあった。

その...景色は。

恐らく生涯忘れる事は無いだろうとは思った。



まさか蛍が暴露するとはな。

そう思いながら俺は蛍を見る。

クラスメイト達は笑みを浮かべながら俺達に質問攻めする。

するとチャイムが鳴った。


「んじゃまあ後でな」

「そうだな」

「だな」


そしてクラスメイト達は椅子に各々腰掛ける。

俺はその光景を見ていると視線を感じた。

それは蛍の視線だった。

苦笑気味に俺を見ていた。


「ったくよ。お前も大概だな」

「お前もな」


それからクラスに教員が入って来る。

そして授業が始まった。

何だか新鮮な気分だった。

正直...一皮が剥けた様な気分で受けた。



「そいでご夫婦」

「止めろっつーの」

「悪い。...帰って良いぞ」

「?」


放課後。

掃除当番だったので箒を出そうと思ったら止められた。

クラスメイト達に。

俺は?を浮かべてから見る。


「お前ら?」

「デートしたらどうだ」

「それは思った。...夫婦なんだからな」

「そうだな。畜生とは思うけど」


俺はまさかの言葉に「...」となってからそのままクラスメイト達を見る。

蛍は今はトイレに行っているが。

そう言うなら仕方が無い。


「...良いのか」

「良いんじゃねーの。旦那さん」

「そうだな。旦那さん」

「だよな。旦那さん」

「殺すぞお前ら」


そしてそのまま背中を押して送り出される。

俺はその事にやれやれと思いながらクラスメイト達の意向を汲み取ってからそのまま駆け出して行く。

蛍を迎えに行く為に。

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