激高

第9話 革命


私は好きな人が出来た。

それは横瑞香という奴だ。

正直こんなクソ不良だ。

後輩を殺した野郎だ。

そんな奴が...幸せになっちゃいけないとは思う。


だけど好きになってしまった。

でも私は今、この想いを伝えたりはしない。

何故なら私にはそんな資格はないのと。

今伝えるべきではないと思うから、である。


玄関に行った。

それから私は香を見る。

香は私を見てから「...」となる。

そして「黒髪、似合ってる。本当にな」と言ってくる。

こういう所なんだよな。


「...お前本当に良い加減にしろよ。そういうの他の女子にやってないだろうな」

「あ?他の女子?」

「そうだ。...ほ、褒めるのは私だけにしてくれ」

「そりゃどういう意味だ」

「内緒だ!」


そして私は玄関に手をかける。

それから「じゃあな。香」と言ってから私は小さく手を振ってから表に出る。

香は私を見てから「?」を浮かべながらも見送ってくれた。

「律に宜しく」と言っておいた。



家に帰って来ると...母親がヒステリーを起こしていた。

というかまた私の妹の髪の毛を掴んで暴力を振るっていた。

私は咄嗟に奴。

つまり母親を平手打ちしてから妹を救った。

クソ親が。


「...」


そして私は机に向かっていた。

すると襖が開いてから妹の垂水唯(たるみずゆい)が顔を見せる。

擦り傷があったので顔に絆創膏を貼ってやったのだが。

私を見ながら「どうしたの?お姉ちゃん。何で黒髪にしているの?」と聞いてくる。

その言葉に「...気分だ」と返事をした。


「...好きな人でも出来た?」

「内緒にしてくれるか。...その通りだ」

「...そうなんだね。お姉ちゃんを大切にしてくれそう?」

「まだ告白とかそんな段階でもない。私は...告白はしない。好きだとは分かるが」

「...何で?」

「私みたいな底辺が彼を好きになっても意味がない」

「...」


すると唯が私の所に来た。

それから私をニコニコしながら見てくる。

これなんだよな。

唯のただただ純粋無垢な笑顔が綺麗なんだ。


「私、応援する」

「...唯...」

「お母さんは嫌い。お父さんも飲んだくれ。...だけどお姉ちゃんは好き」

「...そうか」

「私、好きな人が出来たなら応援したい」

「私は好きな人が出来ても胸に仕舞う。...これは表には出さないから。大丈夫だ」

「...ねえ。お姉ちゃん」


そして見上げてくる唯。

私は「何だ?」と聞いてみる。

すると唯は「家を出たら?」と言ってくる。

その言葉に「!」となって唯を見る。


「...この場所に居ても幸せにならないよ。お姉ちゃんは」

「...ああ。...だけど私は出て行くつもりは無い。唯も居るしな」

「でもさ。この場所に居ても死ぬだけだから」

「...」


子供にそんな事を言わせたくないんだが。

そう思いながら私は唯を見る。

すると唯は私にニコッとしながら柔和になる。

私は「...」となりながら「...唯。取り敢えずはな。私はどうあっても家は出て行かない」と言う。

それから唯を抱き締めた。


「私は有能じゃない。だけど私は将来、看護師になりたい」

「...うん。お姉ちゃん...将来の夢も見据えているんだね」

「馬鹿でも馬鹿なりにもがいてみせる。もう二度と大切な人を失いたくないから」

「そうだね。お姉ちゃん。偉い偉い」


唯は満面の笑顔で俺を見る。

それからニコニコしながら私を抱き締めた。

直後。

襖が開いた。


「...オイ。クソ屑ども。酒買って来い」

「お前が買ってこいや。...クソ親父が」

「ああ?誰の金で飯食っているって思ってんだコラ」


親父だ...つーか。

うちの親父と思いたく無いけど。

アル中の屑野郎。

私は嫌気が差して立ち上がる。

それから「買ってくる」と言ってから唯を引き連れて歩く。


するといきなり突き飛ばされた。

そして親父は「お前さ。最近、態度が図々しくないか?」と私を見る。

私は「ああ?」となって親父を睨む。

髪の毛を掴まれた。

それから思いっきりビンタされた。


「お姉ちゃん!」

「...大丈夫だ。唯。...取り敢えずな」

「...お前らはあくまで俺の手下なんだからな。俺達はあくまで親だ。間違うな」

「...」


私は頭を下げてからそのまま酒を買いに行く。

唯に手を出されてはたまったものではないから、だ。

そして私は玄関のドアを開けてから怯える唯と共に表に出る。


それから歩き出した。

こんな状況では...まあ無理だな。

アイツと幸せになるなんて...。



「...あんなのお父さんって思いたくない」

「もう父親の威厳もクソも無いな。...私は思う」

「...本当に嫌だ」

「...そうだな」


陽が沈み夜になっている。

私は街灯の下を唯と歩いた。

それから酒を持って帰宅の道のりを歩く。

そうしていると唯が「ねえ。お姉ちゃん」と言ってくる。


「ああ」

「お姉ちゃんの好きな人ってどんな人?」

「ああ。えっとな。...笑顔を浮かべないけど...とても素敵な人だ」

「...そうなんだね。会ってみたいな」

「そうだな。いつかお前に紹介したい」


それから私達は歩く。

そして帰り道の公園とかで少しだけ遊んでから家に帰って来た。

すると家のドアが開いた。

そうしてから「遅かったな」と言いながら唯から酒を奪い取る。


「もう少し早く帰って来い。ふざけるな」

「コンビニは2キロ先だ。時間は掛かる。お前がふざけんな」

「親にお前か?」


そしてビンタをまたしようとした。

すると唯が前にいきなり立って私をかばう様に唯がぶっ叩かれた。

唯は倒れ込む。

その姿に、私の中で何かが切れた。

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