激高
第9話 革命
☆
私は好きな人が出来た。
それは横瑞香という奴だ。
正直こんなクソ不良だ。
後輩を殺した野郎だ。
そんな奴が...幸せになっちゃいけないとは思う。
だけど好きになってしまった。
でも私は今、この想いを伝えたりはしない。
何故なら私にはそんな資格はないのと。
今伝えるべきではないと思うから、である。
玄関に行った。
それから私は香を見る。
香は私を見てから「...」となる。
そして「黒髪、似合ってる。本当にな」と言ってくる。
こういう所なんだよな。
「...お前本当に良い加減にしろよ。そういうの他の女子にやってないだろうな」
「あ?他の女子?」
「そうだ。...ほ、褒めるのは私だけにしてくれ」
「そりゃどういう意味だ」
「内緒だ!」
そして私は玄関に手をかける。
それから「じゃあな。香」と言ってから私は小さく手を振ってから表に出る。
香は私を見てから「?」を浮かべながらも見送ってくれた。
「律に宜しく」と言っておいた。
☆
家に帰って来ると...母親がヒステリーを起こしていた。
というかまた私の妹の髪の毛を掴んで暴力を振るっていた。
私は咄嗟に奴。
つまり母親を平手打ちしてから妹を救った。
クソ親が。
「...」
そして私は机に向かっていた。
すると襖が開いてから妹の垂水唯(たるみずゆい)が顔を見せる。
擦り傷があったので顔に絆創膏を貼ってやったのだが。
私を見ながら「どうしたの?お姉ちゃん。何で黒髪にしているの?」と聞いてくる。
その言葉に「...気分だ」と返事をした。
「...好きな人でも出来た?」
「内緒にしてくれるか。...その通りだ」
「...そうなんだね。お姉ちゃんを大切にしてくれそう?」
「まだ告白とかそんな段階でもない。私は...告白はしない。好きだとは分かるが」
「...何で?」
「私みたいな底辺が彼を好きになっても意味がない」
「...」
すると唯が私の所に来た。
それから私をニコニコしながら見てくる。
これなんだよな。
唯のただただ純粋無垢な笑顔が綺麗なんだ。
「私、応援する」
「...唯...」
「お母さんは嫌い。お父さんも飲んだくれ。...だけどお姉ちゃんは好き」
「...そうか」
「私、好きな人が出来たなら応援したい」
「私は好きな人が出来ても胸に仕舞う。...これは表には出さないから。大丈夫だ」
「...ねえ。お姉ちゃん」
そして見上げてくる唯。
私は「何だ?」と聞いてみる。
すると唯は「家を出たら?」と言ってくる。
その言葉に「!」となって唯を見る。
「...この場所に居ても幸せにならないよ。お姉ちゃんは」
「...ああ。...だけど私は出て行くつもりは無い。唯も居るしな」
「でもさ。この場所に居ても死ぬだけだから」
「...」
子供にそんな事を言わせたくないんだが。
そう思いながら私は唯を見る。
すると唯は私にニコッとしながら柔和になる。
私は「...」となりながら「...唯。取り敢えずはな。私はどうあっても家は出て行かない」と言う。
それから唯を抱き締めた。
「私は有能じゃない。だけど私は将来、看護師になりたい」
「...うん。お姉ちゃん...将来の夢も見据えているんだね」
「馬鹿でも馬鹿なりにもがいてみせる。もう二度と大切な人を失いたくないから」
「そうだね。お姉ちゃん。偉い偉い」
唯は満面の笑顔で俺を見る。
それからニコニコしながら私を抱き締めた。
直後。
襖が開いた。
「...オイ。クソ屑ども。酒買って来い」
「お前が買ってこいや。...クソ親父が」
「ああ?誰の金で飯食っているって思ってんだコラ」
親父だ...つーか。
うちの親父と思いたく無いけど。
アル中の屑野郎。
私は嫌気が差して立ち上がる。
それから「買ってくる」と言ってから唯を引き連れて歩く。
するといきなり突き飛ばされた。
そして親父は「お前さ。最近、態度が図々しくないか?」と私を見る。
私は「ああ?」となって親父を睨む。
髪の毛を掴まれた。
それから思いっきりビンタされた。
「お姉ちゃん!」
「...大丈夫だ。唯。...取り敢えずな」
「...お前らはあくまで俺の手下なんだからな。俺達はあくまで親だ。間違うな」
「...」
私は頭を下げてからそのまま酒を買いに行く。
唯に手を出されてはたまったものではないから、だ。
そして私は玄関のドアを開けてから怯える唯と共に表に出る。
それから歩き出した。
こんな状況では...まあ無理だな。
アイツと幸せになるなんて...。
☆
「...あんなのお父さんって思いたくない」
「もう父親の威厳もクソも無いな。...私は思う」
「...本当に嫌だ」
「...そうだな」
陽が沈み夜になっている。
私は街灯の下を唯と歩いた。
それから酒を持って帰宅の道のりを歩く。
そうしていると唯が「ねえ。お姉ちゃん」と言ってくる。
「ああ」
「お姉ちゃんの好きな人ってどんな人?」
「ああ。えっとな。...笑顔を浮かべないけど...とても素敵な人だ」
「...そうなんだね。会ってみたいな」
「そうだな。いつかお前に紹介したい」
それから私達は歩く。
そして帰り道の公園とかで少しだけ遊んでから家に帰って来た。
すると家のドアが開いた。
そうしてから「遅かったな」と言いながら唯から酒を奪い取る。
「もう少し早く帰って来い。ふざけるな」
「コンビニは2キロ先だ。時間は掛かる。お前がふざけんな」
「親にお前か?」
そしてビンタをまたしようとした。
すると唯が前にいきなり立って私をかばう様に唯がぶっ叩かれた。
唯は倒れ込む。
その姿に、私の中で何かが切れた。
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