第8話 「香」「蛍」


何だアイツら?

そう思いながら「?」を浮かべながら2人を2階に見送ったが。

何なのだろう?

そう思いながら俺は1階で作業をする。


「...」


その中で俺は垂水の事を考えていた。

そもそも俺が垂水の噂を聞いたのは高校1年生の頃だ。

俺はその時、有名な美人不良が居る、と話を聞いた。

まあでも俺は興味が無く。

そのまま話に「ああそう」とだけ返事をした。


そして時間は進み今に至っているが。

俺は正直言ってこんな事になるとは思わなかった感じだ。

それは垂水を家に招くまでに至る事が、だ。


俺自身、かなり衝撃を受けているが。

まあこれはクラスメイトを招き入れただけだしな。

そう思いながら家事をこなしていると律と垂水が戻って来た。

律はニヤニヤしながら俺を見ている。

反対に垂水はかなり赤くなっているのだが。

何だこれ?


「オイ律。変な事を垂水にしてないよな?」

「私はあくまでアドバイスをしただけだしね」

「は?」

「アドバイス。それ以外は何も知らなーい。後は垂水さんがどうするかだね」

「...???」


即座に垂水を見る。

垂水はフードを深くかぶったままビクッとしてから「...見るな」と睨んでくる。

獣が何かに恐れている様な感じで威圧する。


俺は「?...どうした?垂水」と聞いてみるが「何でもねぇ!!!!?」と赤くなって否定する。

そして口を利かなくなる。

何だよこれ?


「訳が分からん」

「そうだね」

「...お前のせいだっつーの」


全く訳が分からん。

そう思いながら俺は「何か食うか。お前ら」と聞いてみる。

すると律は「うん。じゃあマフィン食べたい」と言い出した。

ねぇよんなもん。


「...お前な。態と言ってるだろ。ねぇよそんなもん」

「そっかー♡」

「いや、そっかー♡、じゃない」


すると律がニヤッとしながら垂水の背中に手を添えた。

それからドンッと押して俺の前に出してくる。

垂水は「お、オイ!?」と慌てながら唖然とする。

俺は垂水を受け止める。


「オイ。律。いきなり押すなって」

「良いじゃん」

「...何だよお前...」


俺は垂水を見る。

「すまないな」と言いながら、だ。

そして垂水に視線を合わせ...る...!?

垂水が...メイクをしている...!?


「な、何だよ」

「...何でお前メイクしてんだ」

「わ、私も何でか分からん。...律のせいだ」

「律!?お前何をした!?」

「私はモテる様にメイクしただけだよ♡」

「ふざけるな!」


垂水を見る。

滅茶苦茶な美人になっていた。

というか原型が凄まじい美人だからえらい事になっていた。

好みのタイプであった。

俺は「ぐ!」となりながら垂水を離す。


「...こういうの、嫌いか」

「嫌いじゃない。違う。可愛すぎるから今...と、とにかく。可愛い」

「は!?かわ!?」

「ああもう!可愛いっつってんだよ!それ以上何も言わんぞ!」

「~~~~~!」


潤んだ目で真っ赤になる垂水。

俺は胸に手を添える。

それで見てもらいたくて突き飛ばしたな律の野郎。

クソ!何だこのドキドキは。


「お兄ちゃん良かったね♡」

「お前もう死んでくれる?マジに」

「死なないよ♡」


く、クソ!マジに可愛い。

元が既にアイドルの様だとは思ったけど。

美人がメイクするとマジ美人!

そう思いながら俺は2人に背を向ける。

するとそんな隙は与えないという感じで目の前に律が回ってきた。


「それだけじゃないんだよ。お兄ちゃん」

「...何だよ」

「垂水さんって髪を黒髪にしているの」

「...は?」


俺は絶句してから背後を見る。

そこにはフードを外した垂水が居た。

ボブだが...黒髪の...メイクした垂水。

滅茶苦茶に可愛い。


「何でお前...黒髪にしたんだ」

「...悪いかよ。...律に促されて黒髪に戻した」

「...正直...似合い過ぎて言葉が出てこな、い...」

「は!?...うぐ...」


何だこのラブコメみたいな展開は!

そう思いながら首を振る。

そして考えていると「あ。大根買い忘れた」と言ってから律が「買ってくるね」と言ってから「バイビー」と直ぐに去って行った。

オイ!?


「...お、お前の妹さんって忙しないな」

「...普段はあんなんじゃない」

「じゃあ何でだよ」

「お前が居るからだろ」

「...」


何だってこの。

クソッタレ!、と思いながら居ると「なあ。横瑞」と言いながら俺を垂水がいきなり抱き締めてきた。

俺は唖然としてから「うわ!?なにすん...?!」と慌てる。

すると思いっきり熱を感じた。

というか垂水の心音が聞こえる。


「な、何だ」

「...こうしていると何だか安心するんだよな。何だか分からんけど」

「そ、そうか。だけど俺みたいな三下の様な奴を抱き締めても意味無いだろ」

「...律は良い奴だな」

「そ、そうだな。っていうかもう離れてくれ。マジにヤバイ。何かがヤバイ」

「そうか。だけど私はもう少しこのままでも良い」


どいつもこいつも頭おかしいだろ!

何でこんな事に。

抱き締めてもらうのは...佐渡とハグしたのに。

だけどコイツと抱き締めてあっていると気が狂いそうになる。

何だこの感情は...。


「...」

「...な、なあ。もう離れてくれないか。幾らお前が同級生でも女の子だ。キツい。俺がめちゃキツイ」

「...なあ。香」

「...は?おま、名、な、名前!?」

「私はこれまで何も知らなかったんだ。...この感じも。...お前が必死になっている姿も何もかもを」

「あ、ああ」


「だから有難うな」と言いながら俺から離れて見てくる垂水。

すると垂水は人差し指を立てた。

「因みに今日から私の名前は蛍だ」と言ってくる。

蛍...?それがどう...、とそこまで考えてから真っ赤になる。


「...待て。それはつまり俺もお前を名前で呼ぶのか?」

「当たり前だろ。お前な。私だけお前の名前を呼ばせる気か」

「待て!?俺達はそんなに親密な仲じゃ無いだろ...!」

「私は律とお前の区別がつかないから名前で呼びたいしな」

「...うぐ」


「さあ。さあ。さあ呼べ」と笑みを浮かべる目の前の同級生。

俺は赤くなったまま頬を掻き「...ほたる」と呼んだ。

すると蛍は「うん。何だ。香」と笑顔になった。


このクソ馬鹿。

このクソッタレ馬鹿野郎。

そう思いながら苦笑してから溜息を吐いた。

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