第8話 「香」「蛍」
☆
何だアイツら?
そう思いながら「?」を浮かべながら2人を2階に見送ったが。
何なのだろう?
そう思いながら俺は1階で作業をする。
「...」
その中で俺は垂水の事を考えていた。
そもそも俺が垂水の噂を聞いたのは高校1年生の頃だ。
俺はその時、有名な美人不良が居る、と話を聞いた。
まあでも俺は興味が無く。
そのまま話に「ああそう」とだけ返事をした。
そして時間は進み今に至っているが。
俺は正直言ってこんな事になるとは思わなかった感じだ。
それは垂水を家に招くまでに至る事が、だ。
俺自身、かなり衝撃を受けているが。
まあこれはクラスメイトを招き入れただけだしな。
そう思いながら家事をこなしていると律と垂水が戻って来た。
律はニヤニヤしながら俺を見ている。
反対に垂水はかなり赤くなっているのだが。
何だこれ?
「オイ律。変な事を垂水にしてないよな?」
「私はあくまでアドバイスをしただけだしね」
「は?」
「アドバイス。それ以外は何も知らなーい。後は垂水さんがどうするかだね」
「...???」
即座に垂水を見る。
垂水はフードを深くかぶったままビクッとしてから「...見るな」と睨んでくる。
獣が何かに恐れている様な感じで威圧する。
俺は「?...どうした?垂水」と聞いてみるが「何でもねぇ!!!!?」と赤くなって否定する。
そして口を利かなくなる。
何だよこれ?
「訳が分からん」
「そうだね」
「...お前のせいだっつーの」
全く訳が分からん。
そう思いながら俺は「何か食うか。お前ら」と聞いてみる。
すると律は「うん。じゃあマフィン食べたい」と言い出した。
ねぇよんなもん。
「...お前な。態と言ってるだろ。ねぇよそんなもん」
「そっかー♡」
「いや、そっかー♡、じゃない」
すると律がニヤッとしながら垂水の背中に手を添えた。
それからドンッと押して俺の前に出してくる。
垂水は「お、オイ!?」と慌てながら唖然とする。
俺は垂水を受け止める。
「オイ。律。いきなり押すなって」
「良いじゃん」
「...何だよお前...」
俺は垂水を見る。
「すまないな」と言いながら、だ。
そして垂水に視線を合わせ...る...!?
垂水が...メイクをしている...!?
「な、何だよ」
「...何でお前メイクしてんだ」
「わ、私も何でか分からん。...律のせいだ」
「律!?お前何をした!?」
「私はモテる様にメイクしただけだよ♡」
「ふざけるな!」
垂水を見る。
滅茶苦茶な美人になっていた。
というか原型が凄まじい美人だからえらい事になっていた。
好みのタイプであった。
俺は「ぐ!」となりながら垂水を離す。
「...こういうの、嫌いか」
「嫌いじゃない。違う。可愛すぎるから今...と、とにかく。可愛い」
「は!?かわ!?」
「ああもう!可愛いっつってんだよ!それ以上何も言わんぞ!」
「~~~~~!」
潤んだ目で真っ赤になる垂水。
俺は胸に手を添える。
それで見てもらいたくて突き飛ばしたな律の野郎。
クソ!何だこのドキドキは。
「お兄ちゃん良かったね♡」
「お前もう死んでくれる?マジに」
「死なないよ♡」
く、クソ!マジに可愛い。
元が既にアイドルの様だとは思ったけど。
美人がメイクするとマジ美人!
そう思いながら俺は2人に背を向ける。
するとそんな隙は与えないという感じで目の前に律が回ってきた。
「それだけじゃないんだよ。お兄ちゃん」
「...何だよ」
「垂水さんって髪を黒髪にしているの」
「...は?」
俺は絶句してから背後を見る。
そこにはフードを外した垂水が居た。
ボブだが...黒髪の...メイクした垂水。
滅茶苦茶に可愛い。
「何でお前...黒髪にしたんだ」
「...悪いかよ。...律に促されて黒髪に戻した」
「...正直...似合い過ぎて言葉が出てこな、い...」
「は!?...うぐ...」
何だこのラブコメみたいな展開は!
そう思いながら首を振る。
そして考えていると「あ。大根買い忘れた」と言ってから律が「買ってくるね」と言ってから「バイビー」と直ぐに去って行った。
オイ!?
「...お、お前の妹さんって忙しないな」
「...普段はあんなんじゃない」
「じゃあ何でだよ」
「お前が居るからだろ」
「...」
何だってこの。
クソッタレ!、と思いながら居ると「なあ。横瑞」と言いながら俺を垂水がいきなり抱き締めてきた。
俺は唖然としてから「うわ!?なにすん...?!」と慌てる。
すると思いっきり熱を感じた。
というか垂水の心音が聞こえる。
「な、何だ」
「...こうしていると何だか安心するんだよな。何だか分からんけど」
「そ、そうか。だけど俺みたいな三下の様な奴を抱き締めても意味無いだろ」
「...律は良い奴だな」
「そ、そうだな。っていうかもう離れてくれ。マジにヤバイ。何かがヤバイ」
「そうか。だけど私はもう少しこのままでも良い」
どいつもこいつも頭おかしいだろ!
何でこんな事に。
抱き締めてもらうのは...佐渡とハグしたのに。
だけどコイツと抱き締めてあっていると気が狂いそうになる。
何だこの感情は...。
「...」
「...な、なあ。もう離れてくれないか。幾らお前が同級生でも女の子だ。キツい。俺がめちゃキツイ」
「...なあ。香」
「...は?おま、名、な、名前!?」
「私はこれまで何も知らなかったんだ。...この感じも。...お前が必死になっている姿も何もかもを」
「あ、ああ」
「だから有難うな」と言いながら俺から離れて見てくる垂水。
すると垂水は人差し指を立てた。
「因みに今日から私の名前は蛍だ」と言ってくる。
蛍...?それがどう...、とそこまで考えてから真っ赤になる。
「...待て。それはつまり俺もお前を名前で呼ぶのか?」
「当たり前だろ。お前な。私だけお前の名前を呼ばせる気か」
「待て!?俺達はそんなに親密な仲じゃ無いだろ...!」
「私は律とお前の区別がつかないから名前で呼びたいしな」
「...うぐ」
「さあ。さあ。さあ呼べ」と笑みを浮かべる目の前の同級生。
俺は赤くなったまま頬を掻き「...ほたる」と呼んだ。
すると蛍は「うん。何だ。香」と笑顔になった。
このクソ馬鹿。
このクソッタレ馬鹿野郎。
そう思いながら苦笑してから溜息を吐いた。
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