第5話 母性


言いたくねぇよ。


何で私はそういう態度しか出来ないのだ?

そう思いながら私は私に腹を立てる。

それから私は横瑞について行き。

図書館まで来た。

慣れた手付きで横瑞は色々と手続きを済ませ。


それから私に入館証をくれた。

え?、と思いながら私はその入館の会員証を見てみる。

新しく発券された分だ。

何だ?


「お前もたまにここに来たら良い。息抜きにはなるぞ」

「私は不良だぞ。こんな...もん作っても意味ねぇよ」

「そうだな。俺も何で作ったか分からん。だからお前に預ける。自由に使え。要らないなら捨てても構わない」

「...そんな事しない」


そう言いながら私は横瑞を見る。

それから赤くなり彼を見る。

「人から与えられた物を簡単には捨てねぇよ」と言いながら。

すると横瑞は「そうか」と返事をしてくれた。


「...横瑞。有難うな」

「俺は手続きしただけだ」


そんな感じで会話をしていると「イチャイチャだな」と声がした。

その人物は女性。

凛とした感じの男勝りな顔にカッターシャツを着ている。

誰だ!、と思ったがその前に横瑞が動いた。


「千葉さん。彼女は俺の彼女じゃ無いっすよ」

「え?そうなのか?面白くねぇな」

「誰だ?横瑞」

「私は千葉だ。千葉恵理子(ちばえりこ)。図書館職員だ」


千葉は「少年とはダチでな」と笑みを浮かべながら柔和になる。

私は「...そうなんすか」と何だかムッとした。

何だか私以外で仲が良い女ってのは何だか許せん感じだ。


「まあ少女。そう焦るな」


何かを見透かした様にニヤニヤする千葉。

私は赤面する。

っつーか何で赤面するんだ私は。

そう思いながら私は首を振ってから千葉を睨む様な感じで見る。

クソ何だコイツ...胸がデケェ!


「落ち着け少女」

「な、何だよ」

「お前さんの胸もそこそこじゃねーか」

「な」


横瑞が「は?」となっている。

こ、コイツ何なんだ!私の全てを見透かした様に話しやがって!

そう考えながら口をへの字にする。

それからそっぽを向いた。


「ち、千葉さん?」

「うんにゃ。こっちの話だよ」

「?」


クソ。腹立つ女だ。

そう思いながら私はジト目で千葉を見る。

すると千葉はニヤニヤしていたがそれを止めてから「まあ少女。基、蛍。アンタの噂はかねがね。何か問題があるそうだけど全部私が受け止めるからな」と笑顔になる。


「結構だ」

「垂水...」

「私は...他人に迷惑はかけたくねぇ」


私はそう答える。

それから私は「私は...一人で十分だ」と言う。

そして私は千葉を見据えた。

千葉は私を見てから「ふむ」と言ってからあろう事か私を抱きしめてきた。

はぁ!?


「何すんだコラ!」

「いや。特に何でもねぇが。抱きしめたくなった」

「ふ、ふざけんな!離せよ!」

「苦労しているんだろ」


その言葉に衝撃を受けた様な顔をする私。

それから「私、は」と言葉に詰まる。

千葉はゆっくり抱きしめてくる。

母性があった。

つーか...クソッタレが。

暖かいな!


「良かったな。垂水」

「何がだよ。ふざけんなよマジに...」

「この人は福祉課出身でな。まあ資格とか持って無いんだが...様々な事を放っておけない主義でな」


クソ。何ちゅう奴だよ。

そう思いながら私は千葉を見る。

千葉は私から離れてから「何かあったら相談してくれ」と言う。

それから私に笑みを浮かべる。


「じゃあな。少年。少女。私は業務に戻るから」

「はい。また。千葉さん」

「...」


千葉は業務カウンターに戻る。

私は千葉に抱きしめられ久々に母性を感じた。

クソッタレ。

何だってそんなに私に優しいんだよ。

マジに!

何か腹が立つ!


「...違うか。私がクソなだけか」


そう言いながら私は沈黙する。

それから考え込んだ。

すると横瑞が「行こうか」と言った。

そして私を見る。

私はその言葉に「...なあ」と横瑞に聞く。


横瑞は私の言葉に「?」を浮かべてから私を見てくる。

私は「...何故こんなにみんな優しいんだ?私は...ただ不良なのに。不良品なのに」と横瑞に言った。

すると横瑞は溜息を吐く。

それから「簡単だ。俺はお前が変わるって信じているから、だ」と笑みを浮かべた。


「...私は最低な野郎だぞ」

「お前は普通の奴らと違う。俺はお前の瞳を見て思う。十分じゃないか?それで救う理由になるしな」

「...」


コイツ浮気されたのに。

こんな、こんな野郎に...。

そう思いながら私は横瑞を見る。

横瑞は柔和な顔のまま私を見つめている。


「お前ら頭がおかしい。...クソ」


私は胸に手を添える。

それから涙を浮かべたが直ぐに拭う。

こんなもん!、と思いながら、だ。

それから私は首を振った。


「横瑞」

「何だ?」

「お前、ガチの変態だな」

「は?お前...!?」


横瑞は「何でやねん」とでも言いたそうな顔をしている。

私はその顔にクスッと笑いながら「何もねぇ。お前の呆れ顔を見たかっただけだ」と返事をする。

すると横瑞は苦笑いを浮かべた。

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