頁が燃えるその前に

ねくしあ@カクコン準備中……

思い出の章末で

 私はこの場所が好きだ。

 青々とした草原、爽やかに広がる空。


 寝転がる私の後ろには大きな樹があって、大きな日陰の中でゆったりとした時間を過ごすのが好きだ。


 胸いっぱいに息を吸い込めば、穏やかで清々しい気分になれる。

 

「あっ――」


 一枚の葉っぱが私の顔に落ちてきてしまい、思わず声を上げる。


 この樹は私が子どもの時から――いや、それよりずっと前からある、大きな樹だ。だが、ここ最近は少し寂しさを感じるようになってしまった。今までより落ちる葉っぱの数が増えていっているからだ。

 心なしか、伸びる枝葉にも元気がないように見える。

 

 私はこれを見て、「あぁ、あと十年もすれば枯れてしまうな」と分かった。時々、その能力が恨めしくなるときがある。


 だけど、せめて最後まで――との思いから、何十年も、晴れると分かっている日には必ずここへ来ている。

 

「昔は、色んな人とここに来たなぁ……」


 気づけばここに一緒に来る人はいなくなっていた。

 一人、また一人と、私の忠告も虚しく死んでいった。もちろん、平和に暮らしている人もいるが、この街からは去っている。きっと、もう二度と会えない。次に会うのは天国だろう、きっと。


 そんな彼らのことを。

 目を閉じて懐かしさを思い出すのも、またいいものだ。


 しかしこんな時間も、もうすぐ終わりを迎える――そんな事を思えば、誰だって寂しくなって当然だろう。


 私は見てしまったのだ。

 この恨めしい、幸せへの道筋を見る力が教えてくれるのだ。


 今はまだ平和なこの街に、この私に、残された時間が少ないことを。


 だって――明日には戦争が始まって、ここには何も残らないから。


 それを、私だけが知っているのだ。

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