北国とウイスキー
出張先が北海道で、懇親会で余市の蒸溜所でしか買えないものが出ていたのでたくさんのんだ。北国でウイスキーというと、自分が博士課程の三年のときに職を探しているときに「姫百合さんみたいに活発な人がポスドクで来てくれると嬉しい」と学会で話したときに言ってもらった人のことを思い出す。実際にその人の職場でポスドクをしていたとき、「ウイスキーはスコットランドで飲むのが最も美味しい」とその人は言っていた。その人は博士号を取ったあとに何年かEdinburghにいて、その後日本に戻ってきた。そういえば私のせんせえがManchesterに勤めていたとき「夏はパブで飲み終わって外でても空が明るくて辟易する」というようなことを言っていた、スコットランドに行くともっとひどいのだろう。さて、ウイスキーをスコットランドで飲むと美味しい理由についてだが、「冬になると日がほとんど登らなくて気持ちが落ち込んでくる、毛布にくるまりながら暖炉の前で小説片手に飲むスコッチウイスキーの味は格別」とのこと。
もしそんな状況に私がいたら何を片手に飲むだろうか、バイロンの詩集にでもしようか。六代目バイロン男爵ジョージ・ゴードン(George Gordon, 6th Baron Byron)は貴族らしくCambridgeに入学し、そして貴族らしく放蕩生活を送り大学をやめて各地を放浪するようになる。各地で女性問題を起こし、ギリシャ暫定政府代表の訪問に感銘を受けてギリシャ独立戦争に身を投じようとギリシャに上陸するが熱病を患い死ぬ。Truth is always strange, stranger than fictionという辞を聞いたことがあるだろう、これは彼の作品「Don Juan」を出典としている。
バイロン自体は日本では明治時代から有名だったが忘れられつつあった、ただ近年ではBlue Reflection澪でブルリフ界の拓也ことYMDが読んでいたことで一部で脚光を浴びた。彼女が読んでいたものは阿部知二のもので格式高い訳がなされている、その一方でKindle版がない。現在Kindleで読めるものは斎藤正二によるもので口調が柔らかく雰囲気が損なわれている(個人的な感想)。電子書籍で読みたいのならば素直にThe Complete Works of Lord Byronというものを買うといいだろう。彼の詩は、美しさを讃えながら何処か深い悲観と厭世を湛えた魅惑的な辞回しで私の心を揺さぶる。俗な言葉で言えばメンヘラである。Complete Worksを順に読んでいくとTo Carolineあたりからその濃さに噎せそうになるだろう。ちなみにブルリフ澪は色々と露悪的だ、YMDは母子家庭に育ち唯一の肉親である母が毒親という環境に苦しんだのだが、そんなYMDが最初に救われたのがバイロン詩集というのがなんとも……、当のバイロンは妻子を捨てて放浪の旅に出ている。
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