その1 クラスわけとサキアカリ
私たちがこれから3年間通うことになる
だが今日は入学式。紗穂ちゃんのテンションが上がっていて、喋る速度に合わせて歩くスピードが速くなっていた。おかげで歩くのが遅い私と詩穂ちゃんは、学校に着く頃には駆け足になっていた。
「つ〜いた!ちゅーがっこー!!」
「沙穂ちゃんは本当に元気だね…。」
私たち、特に詩穂ちゃんはすでに疲れていたが、沙穂ちゃんと山田さんは汗一つかいていないように見える。うらやましいことだ。
「だって楽しみじゃん!クラスわけがどうなるかとかさ!」
「確かに、クラスわけはドキドキするね。」
「そーだよ!あたしたち、保育園の頃からずーっと同じクラスだったからさ。今年も同じになるのかな?」
「流石にそれは無いと思いますよ。中学校になるとクラスも増えますし。小学校のときのデータは中学校と共有されているはずですから、先生方も配慮するでしょう。」
「えー!?じゃあ今年は別々ってこと?3人と離れなくちゃいけないと寂しいな…。」
冷静な詩穂ちゃんの言葉に、紗穂ちゃんは肩を落とした。
「安心しろ桃瀬1号。俺のサキアカリの力はこう告げている。今年も同じクラスだとな。」
「相変わらずよく分からないフォローの仕方だね。」
自信満々な山田さんに私は思わずツッコんだ。
「でも、今日ばっかりは少し、ほんの少し頼りになる!たとえそれがナオの厨二病パワーでも!!」
「おい、その『ナオ』って呼ぶの止めてくれよ。俺の名はアルティメットドラゴニウス十三世だ。」
「へへっ。ヤーダね、ナ〜オ!」
「全く…桃瀬2号もなんとか言ってくれよ!」
「紗穂、やっておしまいなさい。」
「アイアイサー!」
「おい!!!」
「あはは!…でも、本当に3人と離れるのは寂しいな…。授業の間にこうやって楽しく話すことも出来なくなるんでしょ?」
私が言うと、3人も静かになった。そして、山田さんがいつもより真剣な目をして言った。
「安心しろ。俺のサキアカリは色々不便なところもあるが、予測できたときは百発百中だ。ほら、俺が一度でも嘘をついたことがあるか?」
「うん、たった今嘘ついた気がするけど。…ありがとう。元気出た。もし、もしみんなと離れ離れになっても、家は隣だし、みんなと仲よしなのは昔も今もこれからも、変わらないよね!」
私の声に、3人は力強くうなずいてくれた。
校門から少し歩いていくと、プリントを配っている中学生が見えた。
「このプリントに書いてあるクラスに向かってくださ〜い!校内の地図は裏面にあります!分からないことがあったらお近くの生徒会役員へ!!」
中学生は、右腕に黄色い腕章を付けていた。きっと生徒会役員なのだろう。
「すみません、4枚ください。」
「あ、おはようございます!天降中へようこそ!」
詩穂ちゃんが先陣を切ってプリントを貰ってきてくれた。
「もちろん私もまだ中身は見てません。覚悟はいいですか?」
「うん!」
「「「「せーのっ!!」」」」
開けたプリントには新1年生のクラスと出席番号がびっしり書いてあった。
「え〜っと、私たちの場所は…。」
私は『や』だから、後ろの方を探していくと…。
「あった!!!」
最初に見つけたのは私だった!
1年E組
︙ ︙
31番
32番
33番
34番
「やった〜!みんな同じクラスだ!」
「ホントだ!!よかった〜!!!!!」
喜んだ紗穂ちゃんが私に抱きついてきた!
「詩穂も!」
「えっ!?ちょっと!」
詩穂ちゃんも巻き込んで一緒にやったやったと喜んでいる私たちを、最初から全て分かっていたというような顔をした山田さんが、満足そうにこちらを見ていた。
私たちの教室は、2階の奥の方。普段1年生が使う階段からは1番離れたところにあった。私たちが教室に入ろうとドアを開けると、にぎやかな声が聞こえてきた。
「私たちが1番最後のようですね。」
「ああそうだな。それじゃ、席に座るか。」
一番窓側の後ろから二列目に詩穂ちゃん、その右に紗穂ちゃん。紗穂ちゃんの後ろに私、そして…。
「ほら、今年も隣だ。よろしくな。」
隣の席には山田さんが座った。このときから、いや、それよりももっと前から、こうなる運命だったのだろう。
知らない内に、歯車は回り始めていた。
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