第11話 真相に近づく
翌朝、鬼ヶ島荘の窓から差し込む朝の光がリビングルームを照らしていた。昨夜の緊張感がまだ残る中、招待客たちは再び集まっていた。全員が疲れ切った表情をしていたが、その目には決意の色が宿っていた。
「さて、昨日の調査の成果を整理しましょう。」西園寺 裁司が口を開いた。「隠し部屋で見つけた手紙と、地下室の日記から手がかりを見つけ出すことが重要です。」
高橋 美咲と田中 一郎は、隠し部屋で見つけた手紙を詳しく調べ始めた。手紙には、「宇野 英夫」という架空の人物について詳細に書かれており、その人物が存在しないことが明確に示されていた。
「この手紙には、犯人が意図的に私たちを惑わすための情報が書かれている。」田中 一郎が言った。「宇野 英夫が実在しないとすれば、犯人は私たちの中にいる。」
「でも、それが誰なのか……」高橋 美咲が不安げに呟いた。
一方、山田 良太と中村 正道は、地下室で見つけた日記を丹念に読み進めていた。日記には、過去にこの豪邸で起こった出来事や、犯人の動機が詳細に記されていた。
「ここに、犯人が過去に復讐を誓った記述がある。」山田が言った。「その動機が、この一連の事件につながっている可能性が高い。」
「でも、それを証明するためには、さらに手がかりが必要だ。」中村が焦りながら言った。
その時、高橋 美咲が手紙の中に隠されたメッセージに気づいた。手紙の一部が特殊なインクで書かれており、光にかざすと文字が浮かび上がってきた。
「見て、これ。」高橋が叫んだ。「手紙の中に隠されたメッセージがある。」
メッセージには、「罪を逃れた者たちに裁きを。ここで終焉を迎えるべきだ。」と書かれていた。このメッセージは、犯人の強い意志と動機を示していた。
「これが犯人の動機だ。」西園寺が冷静に言った。「犯人は、私たち全員が過去に犯した罪を罰しようとしている。」
全員が緊張の中でこの情報を共有し、次に何をすべきかを話し合った。その時、窓の外で何かが動く音が聞こえた。
「何の音だ?」田中 一郎が警戒して尋ねた。
「誰かが外にいるかもしれない。」中村 正道が言った。
一同は慎重に外へ出て、音の正体を確認するために庭を調査した。嵐が静まり、庭には静寂が戻っていたが、足跡が泥の中に残されていた。
「これを見て。」高橋 美咲が指差した。「誰かがここを通った跡がある。」
「この足跡を辿れば、犯人の居場所が分かるかもしれない。」田中 一郎が提案した。
全員が慎重に足跡を追い始めた。足跡は庭の奥へと続いており、やがて古い倉庫に辿り着いた。
「ここが怪しい。」西園寺が言った。「中を調べてみよう。」
倉庫の中は薄暗く、古びた道具や家具が無造作に置かれていた。全員が慎重に周囲を見回しながら、犯人の手がかりを探した。
「ここにも何かがあるはずだ。」山田 良太が言った。
その時、倉庫の隅に隠された箱を見つけた。箱の中には、過去に招待客たちが犯した罪に関する資料が詰まっていた。
「これが犯人の証拠だ。」中村 正道が言った。「全てがここにある。」
その瞬間、倉庫の扉が音を立てて閉まった。全員が驚き、振り返るとそこには西園寺 裁司が立っていた。
「ついにここまで辿り着いたか。」西園寺が冷静に言った。
「どういうことだ?」田中 一郎が問い詰めた。
「私が犯人だ。」西園寺が静かに告白した。「私はこの計画を立てた。全員の罪を裁くために。」
西園寺は冷静な表情で、自らの動機と計画の全貌を語り始めた。「私は、法の力だけでは正義が実現されないことに気づいた。だから、自らの手で正義を行うことを決意したのだ。あなた方は過去に罪を犯し、その罪を償うことなく逃れてきた。しかし、ここでその罪を裁くために、この計画を実行した。」
全員が驚愕し、沈黙が流れた。
「これで全てが明らかになった。」高橋 美咲が言った。「でも、あなたの方法は間違っている。」
招待客たちは西園寺に詰め寄り、緊迫した対決が始まった。西園寺は最後まで冷静を保ち、計画の全貌を語り続けた。
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