第8話 新たな手がかりの発見

翌朝、鬼ヶ島荘の窓から差し込む朝の光が薄暗いリビングルームを明るく照らしていた。夜通し見張りをしていた高橋 美咲と田中 一郎は、疲れた表情を隠せずにいたが、彼らの目はまだ鋭く周囲を見回していた。


「おはよう。」山田 良太がリビングルームに入ってきた。彼の顔にも疲れの色が見えたが、その目は冷静さを保っていた。


「何か進展はあったか?」西園寺 裁司が尋ねた。


「いや、特に何も……」田中 一郎が答えた。「でも、昨夜の鈴木 太郎の死が一体どうして起こったのかを考え直す必要がある。」


一同は再び調査を続けるために部屋を出た。今度は高橋 美咲と田中 一郎が書斎の詳細な調査に当たることになった。二人は書斎に向かい、古びた本棚や机を再度調べ始めた。


書斎は古い木の匂いが漂い、埃が積もっていた。本棚には年代物の本がびっしりと並んでいた。高橋 美咲は一冊一冊を確認しながら、机の上に置かれた古い手紙に目を留めた。


「これを見て。」高橋が手紙を取り出し、田中に見せた。


田中 一郎が手紙を受け取り、内容を読み上げた。「『親愛なる友へ。この手紙を受け取ったなら、私はすでにこの世にはいないでしょう。私の名は宇野 英夫……』」


手紙の内容は、まるで宇野 英夫が実在しない架空の人物であるかのように書かれていた。手紙の最後には、「私は実在しないが、あなた方の罪は実在する」と記されていた。


「この手紙……犯人が仕組んだものかもしれない。」田中が推測した。「宇野 英夫が実在しないとすれば、私たちの中にいる誰かがこの計画を立てたんだ。」


「でも、それが誰なのか……」高橋 美咲は不安げに呟いた。「私たちの中の誰かが、こんな残酷なことを?」


一方、山田 良太と中村 正道はリビングルームで手紙の内容について話し合っていた。中村は疑心暗鬼に駆られ、他の招待客を疑い始めていた。


「これが証拠だ。」中村が激しく言った。「誰かが我々を操っている。犯人はこの中にいる。」


「落ち着け、中村さん。」山田が冷静に言った。「疑心暗鬼になっても何の解決にもならない。」


「でも、誰が信じられるんだ?」中村が声を荒げた。「次の犠牲者が出る前に、何とかしなければならない。」


その時、西園寺 裁司がリビングルームに入ってきた。彼は冷静な表情で、手に手紙を持っていた。


「皆さん、これを見てください。」西園寺が手紙を全員に見せた。「宇野 英夫が実在しないことが分かりました。つまり、犯人は私たちの中にいるのです。」


全員が手紙の内容を確認し、重い沈黙が流れた。その中で、西園寺は新たな計画を提案した。


「これからは全員で一緒に行動することを徹底しましょう。」西園寺が提案した。「それによって、誰も単独で行動することがなくなり、犯行を防ぐことができるかもしれません。」


「そして、食べ物や飲み物は、全員で一度に摂るようにしましょう。」山田 良太医師が続けた。「誰かが毒を盛る機会を与えないように。」


全員が頷き、一致団結して行動することを決意した。疑心暗鬼の中で協力し合うことの重要性を再確認し、再び調査を続ける決意を固めた。


夕方になると、見張りの交代が行われた。今度は西園寺 裁司と山田 良太が見張りを引き受け、他の者たちはそれぞれの部屋で休息を取ることになった。


夜が更けると、見張りの者たちはリビングルームに残り、他の者たちはそれぞれの部屋で休息を取った。しかし、誰もが心の中で次の犠牲者が自分ではないかと恐れながら、眠りにつくことができなかった。


西園寺 裁司はリビングルームで見張りをしながら、心の中で計画を練り直していた。彼の冷静な表情の裏には、まだ誰にも明かされていない秘密が隠されていた。


「これ以上犠牲が出ないことを願うばかりだ……」西園寺は静かに呟いた。


その祈りが通じるかどうかは、まだ分からない。風の音が窓を叩きつけ、夜の静寂が恐怖を一層引き立てる中、彼らは次の一手を考え続けていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る