第2話 最初の死
不安と疑念を抱えたまま夜を明かした10人の招待客は、翌朝の朝食の時間に再びダイニングルームに集まった。彼らの表情には疲れが見え、不安が消え去ることはなかった。昨夜の出来事が頭から離れず、皆が何かを探るようにお互いの顔を見回していた。
「何か進展があるといいのですが……」山田 良太医師が静かに言った。
「これ以上何も起こらないことを祈るわ。」高橋 美咲が応じた。
しかし、彼女の言葉とは裏腹に、朝食の席で事件は再び起こる。
佐々木 俊介がジュースを一口飲んだ瞬間、突然、苦しみ始めた。顔を歪め、喉を押さえながら椅子から転げ落ちる彼に、周囲は騒然となる。山田医師がすぐに駆け寄り、脈を取り、必死に応急処置を試みるも、すでに手遅れだった。
「毒だ……」山田医師が冷や汗を流しながらつぶやいた。「佐々木さんは毒を盛られた。」
一同は愕然とし、言葉を失った。昨夜の蓄音機の声が再び脳裏をよぎる。彼らは今、現実に起こっている連続殺人の恐怖と向き合うことを余儀なくされた。
「いったい誰がこんなことを?」中村 正道が声を荒げた。「我々の中に犯人がいるというのか?」
「冷静になれ、中村さん。」西園寺 裁司が静かに言った。「ここで疑心暗鬼になっても仕方がない。まずは彼の死因を確認し、皆で対策を考えるべきだ。」
「対策だと?」田中 一郎が嘲笑混じりに言った。「どうやって?誰が信用できるというんだ?」
緊張感が一気に高まり、誰もが不安と恐怖に苛まれる中、西園寺は冷静さを保つよう努めた。「まずは、この場を離れ、それぞれの部屋に戻ろう。誰かが何かを見たかもしれない。情報を共有するために、再度集まる時間を決めよう。」
招待客たちは重い足取りで部屋に戻った。部屋の扉を閉めた瞬間、それぞれの心には更なる疑念が生まれた。誰が犯人なのか?次は自分が標的になるのか?
高橋 美咲はベッドに腰掛け、手に持ったジュースのグラスを見つめた。「このままでは……全員が……」
彼女の心には、恐怖と絶望が渦巻いていた。しかし、この島から逃れる術はない。彼らは、犯人の手中にあるという現実を、受け入れざるを得なかった。
次の集まりまでの時間、誰もが孤独な戦いを強いられることになった。
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