物語の構成について(前編)
(※あんまりお手軽ではないかもしれません
ただまあ、知っておくといいことではあるんですよねー)
故ヤマグチノボル先生(ゼ〇の使い魔の作者様!)は、何回目かは失念しましたが、MF文庫の公募の講評にて、小説一巻分の尺は二時間映画一本分と一緒である、と喝破されておりました。
実際に自分も一三年、小説家をやってきて、これは実に的を射た答えだな、と感服する次第であります。
つまり、これはこう言い変える事もできます。
二時間映画の全体構成は、小説一巻分の全体構成に応用できる、と。
二時間映画の構成としては、いわゆる『三幕構成』などが有名でしょうか。
ストーリーを設定 (Set-up)、対立 (Confrontation)、解決 (Resolution) の三つの幕に分ける、ハリウッドなどで採用されている脚本構成の定番です。
自分はこれを日本の起承転結に当てはめています。
設定幕が起。対立幕が承転。解決幕が結にあたります。
ただ起承転結には不足が二つあるなぁ、と感じておりまして
一つ目が三幕構成におけるミッドポイント(以後mpと書きます)
対立幕のちょうど中間で、後半の一時間分の大問題を発生させるポイントです。
鷹山はこのmpに該当するものとして、勝手に「爆」と呼んでいます。
(弟子のあるひとが命名したのをそのままパクりました)
二つ目が冒頭です。
起に含めてもいいと言えばいいのですが、個人的には独立させたい概念です。
並べますと
『冒起承爆転結』
といった具合でしょうか。
これが鷹山の考えるストーリー構成の基本になります。
ではそれぞれの解説をしたいと思います。
まずは【冒】こと冒頭から。
極めて重要な場所です。
そして、いくつもの「役目」があります。
〇読者の興味を惹き、物語に没入させる
〇物語の面白さ・方向性を読者に大まかに示す
〇全体構成の中で重要なワンシーンであればなおよし
実はいい冒頭というのはこの三つがほぼ含まれています。
もしかしたら、鷹山も言語化できていない必要な要素がまだあるかもしれませんが、とりあえずこの三つに関して解説していきたいと思います。
〇読者の興味を惹き、物語に没入させる
興味を惹くには、大別すると4つのどれかが必要になります。
「憧れ」「共感」「見下し」「謎」。
弟子の一人は
「共感」「俺つええええ」「ギャグ」「謎」「萌え」と5分類しておりました。
鷹山のほうが成分的で、弟子の奴のほうが具体的でしょうか。
俺つええええは「憧れ」を使う。ギャグは「見下し」を使う。萌えは「憧れ」のケースもあれば、「見下し」のケースもある、といった具合ですね。
なろうの追放系の冒頭などは、「共感」ですね。
これらをまとめて、面白味、テイクなどと呼ぶ作家さんもいます。
まあ、ピンとくるものを使ってください。
そして、このどれかでもって、読者を物語の「中」に引きずり込みましょう
物語の「中」に引きずり込めないと、読者はどこか冷めた状態で物語を読みます。
そういう状態での読書は、そもそも楽しみにくい状態ですので
このいずれかの面白味・テイクを使って、冒頭の内に読者を物語に没入させましょう。
〇物語の面白さ・方向性を大まかに読者に示す
ネタバレと言う言葉があります。
色々情報を先出してしまうと読者は楽しめないのではないか。
そう考える作者さんも多いでしょう。
その考えは概ね間違ってはいないのですが、やりすぎもよくないです。
冒頭ではまず、
①この物語がどういう物語(ジャンル)なのか
②どういう楽しさ・気持ちよさがこの先に待っているのか。
③物語はとりあえずどこへ向かっていくのか
の三つの方向性を示す必要があります。
一つ一つ解説します。
①この物語がどういう物語(ジャンル)なのか
※俺つええええ、ザマァ系、ラブコメ、ギャグ、色々ありますね。
②どういう楽しさ・気持ちよさがこの先に待っているのか。
※一口になろう系と言っても、物理(魔力)俺つええの快感、頭俺すげええの快感、俺の仲間すげええの快感、ざまぁの快感などいろいろありますし、同じつええの快感でも面白さの質は違いますし、読者によって好みも違います。
ラブコメでも、ツンデレヒロイン萌え~、俺にしか懐かないクーデレヒロイン萌え、オタクに優しいギャル萌えなどなど色々あり、それぞれ「面白さ・快感」が違います。
なので冒頭で、この作品ではどういう面白さがこの先に待っているのか、それを教えてあげねばなりません。
じゃないと読者は何を楽しめばいいのかわかりませんからね。
③物語はとりあえずどこへ向かっていくのか
実は冒頭を読むだけで、ストーリーがどういう方向に向かうのか、読者は無意識につかんでおります。
説明だとわかりにくいので、拙作「孤高の王と陽だまりの花嫁が最幸の夫婦になるまで」の冒頭の末尾を引用します。
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だがそれで、彼は一向に構わなかった。
血塗られた覇道であろうとも、自分にしか為せぬのであれば、ただ為すのみである。
志半ばで逝った恩人や友の為、国の為、心を殺し、淡々とやるべき仕事をこなしていく。
それが自分という人間に課せられた天命なのだろうと諦めてもいた。
あの日、
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どうでしょう?
最後のたった一行で、この物語は、これから会うヒロインとのラブストーリーが展開されるのだ、とわかりませんか?
やらなくちゃいけない事の為に色々諦めて心を凍らせている主人公が、これから会うヒロインとの出会い・交流によって、心の氷を溶かしていく。
そんな話の先もぼんやりとですが想像できませんか?
こうやって、物語の進む
以上3つが冒頭で指し示すべきものになります。
コロナ騒動を思い返してもらうとわかりやすいのですが、人間は「わからなすぎる」ことが強いストレスなのです。
わからないからこそパニックになったし、ある程度どんな病気かわかってしまえば、流行っていてもパニックにはならない。
旅行などでも一緒じゃないですか?
まったく見知らぬ土地を当てもなく歩くのはストレスです。
でも、目的地はこの辺、とりあえずこの方角へ向かえばいいはず
そういうのがわかっているだけで、かなり気持ちが楽になり、ストレスレスでいられませんか?
物語も一緒。
物語がどういうジャンルなのか。
どういう楽しさ・気持ちよさがこの作品にあるのか。
大まかでもどういう方向に物語が進んでいくのか
このあたりが多少なりともわからないと、読者にとっては大いにストレスなのです。
ぜひ意識してみてください。
〇全体構成の中で重要なワンシーンでなければならない
冒頭が後半部分のいい伏線になっていると、読者は面白がってくれます。
またそのほうが、構成として綺麗にまとまっているように映ります。
以上が冒頭に必要な要素になります。
冒頭はわずか1000~5000文字ぐらいですが、その中に入れなくちゃいけない要素がいっぱいあるのがわかってもらえたかと思います。
公募などでは、ここが上手くできないということは、物語のことがよくわかっていないんだな、と判断されやすいです。
ぜひ気を付けてみてください。
長くなったので、起承爆転結の章は次回に回します。
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