テーマ性の高い物の描き方

作家志望さんと接していると、

底の浅いスナック感覚なB級エンタメではなく、

もっと高尚なものを!

もっと深みのあるものを!

もっとテーマ性の高いものを!

って方がけっこうおられます。


個人的に鷹山はラノベ(WEB小説)なんてものは軽く低俗で楽しければなんでもいいと思っているぐらいなのではありますが

その「面白さを上げる」ために、テーマ性を作品にどうやったら盛り込めるのか、と言うのは研究したのでその辺を書いていきたいと思います。


元々、鷹山はこの「テーマ性」というものが全然わからなかったんですよね。

そう言うのを書きたいと言っている人に尋ねてみましたが、人によって答えが違う。

なんじゃこりゃ、と。


ただどういうものが成功して、どういうものが失敗しているのか、はわかってきました。

一言で言えば、小説は道徳の教科書でも、ビジネス書でもない、ということです。


テーマ性の高いものを書こうとして失敗する人は、人に自分の考えを押し付けようとしすぎているんですね。

これが正しい!! と


多くの人がテーマ性が高いと評する名作はむしろ逆でした。

正しさを押し付けるのではなく

キャラクターたちの置かれた「環境」に同情するなり共感するなりし、

キャラクターたちが「もがきくるしむ」姿に同情するなり共感するなりし、

やがて破綻するか、そのつらさから解放されるかで感動する

と言う流れの作品が多かったです。


そういう作品の最後には、心を救う答えが提示されることも多く、

それの印象が強すぎて、答えを早々に書いてしまう人が多いのではないかな、と思います


ただ実際の割合で言いますと

その手の作品の90%以上は、環境がもたらす負荷やキャラクターがその未熟さゆえにもがき苦しむ姿が占めており、

答えに至るシーンというのはごくわずかです。

つまるところ、テーマ性の高い作品と言うのは、その内訳的には

「心を救う答え/人生を救う答え」を提示する作品ではなく、「キャラクターが抱えている生きづらさ」を楽しませる作品だ、と言えるでしょう。


以上を前置きとし、具体的にどうすれば作品にテーマ性を盛り込めるかを書いていきたいと思います。


①まずキャラクターに「生きづらさ」を設定します。


②次に、その生きづらさに対して「間違った未熟な答え」を設定します。


③、②で設定した「間違った未熟な答え」ゆえに、中盤で問題が発生します。いわゆる三幕構成におけるミッドポイントがここにあたります。


④、③の問題により、そのキャラクターはショックを受ける/落ち込む/迷走する


⑤なんらかのきっかけにより「一歩進んだ答え」に至り問題を解決するor答えに至らず破滅end


タイムスケジュールとして提示しますと

(冒頭)生きづらさの提示

(序盤から中盤)生きづらさに対し、間違った未熟な答えを繰り返す

(中盤MP)未熟な答えゆえに問題が発生する

(後半)迷走

(クライマックス)一歩進んだ答えに至るor答えに至らず坂を転げ落ちていき破滅end

という感じでしょうか。


無機質な情報だとわかりにくいのでちょっと具体例を入れますと

例えば

・生きづらさ「他人と関係が長続きした試しがない」

・間違った未熟な答え「ありのままの自分を受け入れてくれる理想の王子様を待ち続ける。常に受け身」

・未熟ゆえの問題「彼氏ができ、付き合ったけれど、他力本願で、自分のほうから行為のアピールをしなかったため、彼氏は好かれていると感じられず別れを切り出す」

・迷走「彼氏に別れを告げられ、落ち込む。悲劇のヒロインをする」

・一歩進んだ答え1「その迷走の中で自分が彼氏の事が本当に好きになっていたことに気づく」

・一歩進んだ答え2「相手に期待ばかりして受け身ではなく、自分からも相手への好意を発しよう。相手の喜ぶことをしよう。(他力本願から自力本願への気づき)」

みたいな感じでしょうか。

なんとなく、これで大まかにどういったストーリーが展開されるか想像できませんか?

技術「克己カウンター」を具体化するとこんな感じですね。


逆に破滅エンドだと、TV版の新〇紀エ〇ァンゲリオンあたりでしょうか。

ネタバレになりますが(嫌な人はここでブラウザバックしてね!)


生きづらさ「生きていると理不尽な事ばかりが起きる(他人は理不尽なことばかりしてくる)」

間違った未熟な答え「言いたいことを言わず、我慢する。嵐が過ぎ去るのを待つ」

未熟な答え故の問題「我慢して言うべきこと言わないから、理不尽な目に遭う」

迷走「傷つく」

未熟な答え2「我慢しきれず逃げ出す」

迷走「逃げきれない。連れ戻される」

未熟な答え3「人類が物理的に一つになればこの世から他人による理不尽な事は消えるのではないか(病んでますね)」

迷走「でもやっぱり一人は寂しい」

未熟な答え4「それでも他人は気持ち悪い。殺したくなる」

と言った感じでしょうか?

さすがに他人の心の内、しかもかなり昔に見たものなので、そこまで詳細に読み取れるものでもなく、けっこうズレているかもしれません。

テーマの主体となるキャラクターが、シンジとゲンドウで行き来している印象ですね。


まあ、本題としては破滅エンドはこうやって

次々と未熟な答えと、未熟ゆえの問題を繰り返していく構造になります。

そうしてどんどん崖から転がり落ちていって破滅、です。


一方、真エ〇ァは、そういう意味では「答えに至ったルート」になります。

TV版も含めたいくつもの未熟な答えによる長い迷走の果てに、

最後は父であるゲンドウと本音のぶつけ合いをしています。

言うべきことはたとえぶつかり合うことになっても(自分が傷ついても)言わないといけない、というのが多分、庵野監督の「一歩進んだ答え」なのでしょうね。


さて、以上がテーマ性の高いものの作り方、になります。

長々と話しましたが覚えてほしいのは

(冒頭)生きづらさの提示

(序盤から中盤)生きづらさに対し、間違った未熟な答えを繰り返す

(中盤MP)未熟な答えゆえに問題が発生する

(後半)迷走

(クライマックス)一歩進んだ答えに至るor答えに至らず坂を転げ落ちていき破滅end

こちらになります。

重要なのは正しい答えを教えるのではなく、

むしろ未熟な答えとその迷走っぷりを読ませると、読者は「テーマ性が高い」「高尚な作品だ」と感じます。

事実、正しい答えに至る話より、未熟な答えで迷走を繰り返し生きづらいまま、みたいな作品のほうがテーマ性を好む読者には受けているように思います。


また、いわゆるなろう系主人公の話ですと、テーマはヒロイン側でやるほうが無難な気はしますね。

主人公が間違っていたり迷走してたりしたら、読者離れますから(笑)

逆にラブコメだったら、主人公がやってもいいのかな、って思います(もちろんヒロインでも可)

特にラブコメは、多少のテーマ性があったほうが物語が締まるなぁ、と思います。


さらに深堀したことを言えば

キャラメイキングの時点で各キャラごとに「生きづらさ」「間違った未熟な答え」「未熟ゆえに起きる問題」「一歩進んだ答え」を前もって設定しておくと

あとで、こういうちょっと感動できるいい話、を展開できるのでお薦めです。

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