技術名「カウンター」

 キャラの好感度をコントロールする技術です。

 まあ、世間一般で言うところのギャップであり、Aと思わせてBという前述の「やったか」の亜種でもあります。

 それをわざわざカウンターなんて大層な名前を付けて区別したのは、キャラクター造形・魅力はライトノベルやコミックで最も重要な部分だからです。

 また、自分が指導してきた方を見るに、読者に気を遣いすぎて、キャラクターの悪い側面を出すのを怖がりすぎる傾向がありました。

 それはすごくもったいないのですね。

 スラムダンクの井上〇彦先生などは、マイナスからキャラを作るみたいなことも仰られていたように、マイナスは上手く使うと、物語を面白く彩ってくれる重要な要素です。

 本項では、このキャラクターのマイナスの側面をうまく中和・好転させる技術について書いていきます。



〇属性カウンター

 キャラクターの第一面を見せた後に、別の一面を見せることです。

 いわゆる不良が捨て猫に傘を差してたり、拾ってかわいがっていたら、ギャップ萌えするよね、というやつですね。

 第一面と第二面との間に意外性があったほうが威力が上がります。

 また物語序盤からインスタントに使えるのがこの技術の魅力です。

 プロット段階、キャラクター造形段階で、最初からこのギャップを見せれるよう組んでおけば、冒頭などでお手軽にキャラクターの魅力を上げられます。

 なろうやカクヨムなどでは主人公の魅力は極めて重要であり、二つの属性を冒頭などから見せることでキャラ力を上げる、なんてこともできます。

 また、脇キャラクターを登場させるなり、二つの属性をワンシーンの中で見せることで、インスタントにキャラクター力を上げられます。

 ただ、インスタントに使えるカウンターなだけに、後述するカウンターに比べて、キャラクター力上昇効果は低いです。

 まあ、使い分けですね。

 カウンター群に含んではいますが、自分は序盤をもたせるジャブ的な技術と認識しております。



〇ギャグカウンター

 笑えたら許せる、です。

 どんなに酷い性格のキャラクターでも、そのキャラで笑わせてもらえると意外と許せるのが人間ということですね。

 かぐや様は〇らせたい、などがけっこうわかりやすい例でしょうか。

 登場キャラたちは割と最低なことをしていたりするわけですが、ギャグとしてとても面白いので、なぜかその最低な性格が許せ、むしろ愛着を覚えたりするんですよね。

 これも割と物語序盤から使えるカウンターになります。

 具体的なギャグの方法に関しては別の項で語ろうかと思います。

 まあ、鷹山はあまりギャグ得意ではないのですが(苦笑)



〇目には目をカウンター

 どんなに性格が悪くても、卑怯でも、それを「より外道な相手」に振るう分には読者には爽快感があります。

 いわゆるザマァ系と言われるジャンルで多用される技術ですね。



〇理由カウンター

 属性カウンターをちょっとだけ進化(深化)させた技術です。

 キャラクターのマイナスな側面を見せ、回想や身の上話などで、そのマイナスには実はこういう「理由」があったのだ、と説明することでキャラクター力を上げる技術です。

 ワンピ〇スなどでよく使われる技術ですね。

 ナ〇さんが海賊相手の泥棒をしていたり、ル〇ィたちの船を盗んだりという読者の印象が悪くなるようなことをしていましたが、全ては故郷の村を救うためだった。という理由を説明することで、印象悪かった部分がかき消え、むしろキャラ好感度に変換されます。

 マイナスが大きいほど、あるいはマイナスな期間が長いほど、この理由を説明した時の好感度上昇効果は跳ね上がります。

 この技術をカウンターと称している理由はまさにここです。

 ただマイナス面を見せることはキャラ好感度を下げるとてもリスキーな行為です。

 特になろうやカクヨムなどだと、主人公でやるにはリスクが高いです。ヒロインなどでやるほうが基本的に無難な技術ではありますね。

 が、リスクを取る分、それをなんとか潜り抜け、そのマイナス面に至る理由まで説明し、読者がそれに「納得」をすれば、そのキャラの読者からの好感度が跳ね上がります。

 コツとしては、そのマイナス面に対して、理由が釣り合っていること、納得できる理由であること、ですね。

 これが釣り合っていないと、この理由カウンターは成立しません。

 また属性カウンターなどをいくつか入れて好感度が下がりすぎないようにしてから、この理由を語るシーンまでなんとか「保たせる」というのもよく使われる手です。

 敵が味方になると人気キャラになるのも、結構これが使われているケースも多いですね。



〇克己カウンター

 マイナスな属性を持っているキャラクターが、「心を入れ替える」ことで読者の好感度を上げるカウンターです。

 これもマイナス属性が強いほど、長いほど、カウンターを決めた時の好感度上昇率が乗算式に跳ね上がっていきます。

 一番有名なのは、少し前に再アニメ化されたダイの大〇険のポ〇プでしょうか。

 担当編集にポ〇プ殺しましょう、とまで言われたぐらい、当初は人気最悪なキャラでしたが、ク〇コダイン戦で心を入れ替えて以降、どんどん人気を上げていき、その必殺技メド〇ーアは作中最高の人気の技になっていたぐらいです。

・臆病な人間が仲間のピンチで勇気を出す(ポ〇プ/ワンピ〇スのウ〇ップ)

・他人に対して冷酷でドライな人間が、他人からの優しさに触れて、情の大切さを肌で知り改心する(ワンパ〇マンのス〇リュー/サ〇ヤ人編のピッコ〇など)

・不良などが自分の心の弱さを自覚し、また心の強い人間を見て、それに感化されて改心する(ヒ〇アカのカッちゃんなど)

 などなど、色々バリエーションがありますが、肝となるのは、マイナスな精神性を、何かのきっかけで「心を入れ替える」ことで、読者の好感度が上がるということです。


〇ホールド

 カウンターではないのですが、理由カウンターや克己カウンターと極めて相性がいい技術なのでここで紹介しておきます。

 具体的には、悩んでいたり落ち込んでいるキャラクターAに対し、キャラクターBがアドバイスをしたり、共感や同情、理解を示したりすることで、キャラクターBの好感度が上がります。

 理由カウンター的にキャラAがそうなった理由を語った後に、キャラBが共感や同情、理解を示す。なんてシーンはけっこうありますね。

 克己カウンターでも、キャラBのアドバイスでキャラAが心を入れ替えるきっかけをつかむ、なんてシーンも多いです。

 ドラゴンボ〇ルで、亀〇人が天〇飯を説得していたシーンなどが作者は印象に残っています。

 キャラA、キャラBの好感度を一緒に上げれるので、上記のカウンターとはマリアージュ的な技術です。


〇試し行為ホールド

キャラBのホールドをキャラAにあえて拒絶させる。

何度も何度も。

拒絶されてもホールドしようとするキャラBが健気で、好感度が爆増する。

ラブコメなどで、主人公はヒロインAが好きなんだけど、それを理解しつつも主人公が好きで、振られたりしてもめげずに主人公を思い続けるヒロインBとかいいですよね。

報われないほど萌えたりするものです。



〇逆カウンター

 プラスの上っ面を見せておいてから、マイナスな本性を見せるというこれまで語ってきたカウンターとはまさに真逆の技術です。

 作用も真逆であり、好感度がだだ下がりし、ヘイトが上がります。

 バトルなどでは敵キャラの魅力も重要です。

 敵キャラのヘイトが高ければ高いほど、物語の面白さが増す、と言う事も多い。

 特にザマァ系などは敵キャラのヘイトの高さが、ザマァの快感に直結します。

 あえていい人面したところから落とせば、最初から悪として書くより、読者のヘイトが高まります。



〇後書き

 とりあえずカウンター群は以上になります。

 アマチュア作家さんを指導していると、キャラのマイナスを出したいんだけどどう出せばいいのかわからない。

 マイナスを出したら読者から嫌われそうで怖い、やれない。

 と言う方をよく見かけるので、そのコントロール方法の参考になれば幸いです。

また、こういう「線」でキャラクターを作る事がわかっていると、書く前にこうこうこうすれば、このキャラクターはここで人気が出るよね、とかを計算できるようになります。

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