第19話

「え~と。内容は…」


・世界のお掃除!悪い魔物を討伐しよう!(魔物3体の討伐)


・自然に貢献!果物を採取しよう!(果物類を10個採取)


・奉仕活動!無限の雑草に挑め!!(雑草を100個採取)


「これならなんとかなるか」


 零次は考える。問題は効率よくミッションを消化していくための順番だ。


「まずは果物だな。何か食べられる果実とかが見つかるかもしれない」


「次に魔物を討伐だ」


「というか…この世界にもなんか人外の生物が生息してるのか」


(まあ剣と魔法の世界の定番と言えば定番ではあるが)


「問題はその魔物とやらの強さだな。何か指標になる情報でもあればいいんだが…」


(ヘルプは有料だしな…それに実際に実物を見ない事には強さも危険度も判断は難しいぞ)


「一応遠距離攻撃もできなくはないんだよな…弱そうな魔物を見つけてテストがてら能力…いや、魔法をぶつけて見るのもありだな」


(今後は異能力も魔法として呼称しておこう。どっちも同じようなものだしな。何よりも俺の脳が混乱する)


 魔法も異能力も元動力となるのは術者の精神力だ。想像力はそのまま力となる。余計な思考のノイズを減らしこの世界に適応する為にも名称の統一は重要な要素とも言えるだろう。


「さて、そんじゃ行きますか」


 スマートフォンをポケットに仕舞い手ぶらの状態で零次がドアノブを捻る。悠々と部屋を出ようとした零次。その足がドアの開閉後0.5秒で静止する。


「…※※?」


「……はぁ?」


 巨大な体躯に白銀のフォルム。そしてその身に秘められた圧倒的で暴力的な物量の魔力。零次の緩んだ脳みそでも一目見れば理解する事ができた。


(ド…ドラゴン!?なんでこんな場所で池の水なんて飲んでやがるんだ!?)


 ドラゴン。それはゲームや映画を嗜む者なら知らぬものなどいないレベルのビッグネーム。人間を蹂躙し、自由自在に空を駆け巡る空の王者。あるときは序盤に君臨する敵として。そしてあるときは物語の最深部で待ち受けるラスボスとして。いずれにせよ必ずと言っていいほど物語のキーとなる存在だ。


(……)


 零次の脳内。そこでは「最強」という赤文字がチカチカと点滅していた。


(序盤で絶対に戦っちゃダメなタイプの魔物じゃねえのかこれ!?)


「※※※※!※※!!」


「___‘※※※※!!‘」


 先に動いたのは白いドラゴンだ。口に含んでいた水を一瞬の内に飲み込み、口内で超高密度の魔力を生成し循環させる。その暴力的な魔力をブレスとして発射する。それは竜種にとって十八番とも言える凶悪な魔法の1つだ。


(ブレス魔法!?…クソ。魔力量では向こうが圧倒的に上。これだと防御に魔力を回しても焼け石に水だ。だが、このまま何もしなければ2秒後に俺は消し炭になるぞ)


 ドラゴンの狙いを察知し零次の体は無意識の内に動いていた。肉体が精神の反応速度を凌駕する。それに引きずられるように思考は加速し現状最も最適な動きを零次の脳が肉体へと命令を送り始める。山田零次という精神を置き去りにしてだ。自身の肉体の動きから脳が導き出した答えの逆算を始める零次。

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