第18話

「お~い朝よ。早く起きなさいな~」

 

「…んん」


(誰の声だ…?…て、ああ。昨日寝る前にセットしたアラームの音か)


 独特なアラームの音に起こされて零次の意識が覚醒。素早くスマートフォンに手を伸ばし現在の時刻を確認する。


(6時間は眠れたか)


 スマートフォンには表示された時刻はAM06:00 零次の体内時計では間違いなく朝だと認識している時間だ。


(いくつかアプリで使えそうな機能を寝る前に試してみたが…このアラーム機能はダメダメだな)


「アラームに甲高い声はナンセンスだろ…頭がキンキンするぜ…もっとこう…寝起きの脳みそに配慮した優しい音をだな…」


 脳内で反響する声に零次が頭を痛める。


「不敬なやつね~だけどそういうのも悪くはないわ!いいでしょう。あなたの要望に応えてあげる」


「…え?」


「あれでしょ?人間は確か動物の鳴き声に安らぎを覚えるんだったのよね?4日程貰うわ。それまでに私が最強の…」


「いやいや!結構で~す!!文句言ってほんとすいませんでした!!」


 危険を感じた零次が大慌てでアラーム機能を止める。そして迷う事無く即座にアラーム機能を端末からアンインストールする零次。零次の経験上、あの手の喋り方をする人物と関わるとろくな結果にはならないという事を、彼はよくよく理解していたのだ。


(俺はいったい何と話してたんだ?…いや、深くは考えるな零次。どうせ答えなんて得られはしない)


「…勘弁してくれよほんと」


(まあ…アラーム機能はちょっとあれだが、時計はかなり有用だな)


 時間という概念は深く人間の行動心理に根づいている。現在の時間を数字として捉えられるという利点を零次は改めて実感していた。


「さてと、すっかり目が覚めちまったし…少し体を動かしておくか」


 体を軽く動かしてストレッチを始める零次。


「身体機能に異常は見当たらない。思考力も自己判断では正常。精神力も回復してるな」


(これならば何も問題なしだ。言うならば絶好調というところかな)


 ケトルで池水を沸騰させ、カップうどんもどきにお湯を注ぎ込む零次。


「いただきます」


 ズルズルとザラザラとした麺を啜り、現実の厳しさに眉を顰める零次。


(雑草を湯煎して食べるよりも10倍マシだ…雑草を湯煎して食べるよりも100倍マシだ…雑草を湯煎して食べるよりも1000倍マシだ…)


 無理やり自分自身を納得させカップうどんもどきを完食する零次。


「ごちそうさまでした」


「…もうしばらくはこいつを食べたくはないな」


 手早く容器を片付け再びスマートフォンを手に取る零次。


「とりあえずだ。コインを稼がないと話にならないなこれは…」


(とにもかくにも寝床を確保できるくらいにはコインを確保しておかないとヤバいぞ)


「仕方がない。やるとするか。デイリーミッションを」


 零次のスマートフォンの画面。そこには3つのミッションが表示されていた。報酬単価は1ミッション1000コイン。貯金0の零次からすれば魅力的な金額だ。


(デイリーミッションは日が変われば別の内容に更新される。このデイリーミッションを消化し、コインを貯めていく事が今の俺にできる最善の選択肢だな)

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