第14話
零次の指がノーモーションで購入ボタンへと導かれていく。
(迷う事はない。買うぜ!!)
だがしかし、零次の指が画面をタッチすることはなかった。
「なにっ…!?」
いや、できなかったのだ。何故ならば零次のそのトチ狂った行動を止めるために彼自身の能力が無意識の内に発動。命の危険により一時的に強化され実体化した天使と悪魔が必死に零次の指を押し戻す。
「絶対ダメ!!」
「マジでダメだって!!シャレにならないから!!」
「き、きさまらああああああああああああああっ!!」
零次が渾身の力で無理やり画面をタッチしようと強行を続ける。それだけはさせないと天使と悪魔も全力で零次の行動を止める。
「んぐぐ!!う…嘘でしょ!?無理やり購入する気よ!?」
「うぎぎ!!絶対止めるんだ!それだけは阻止しないとヤバい!!」
天使と悪魔の力は零次自身の精神状態によって変化する。そして今は命が掛かっている。必然的に天使と悪魔の力も飛躍的に上昇していた。
「ぬうううっ!?何故俺の邪魔をする!?今なら買えるんだぞ!?ラーメンが!!」
「このお馬鹿!今はラーメンよりも優先するべき事があるでしょ!?」
「その通りだ!今コインを使ったら野宿する事になるんだぞ!?冷静になってよ~く考えてみろ!!」
「ぬぅ……」
圧倒的な正論に零次の脳みそが急激に冷却されていく。拮抗する理性と本能。そしてこの場は理性が勝利する事となった。
「分かった。分かったよ。今はまだそのときじゃないってことだろ?まったくふざけやがって…」
しぶしぶと零次がスマートフォンから指を離す。
「ふいい…」
「助かった…」
「……」
零次自身も心の奥底では理解していたのだ。ここでコイン使ったらヤバくね?という事を。だが頭で理解していても欲望を抑える事はできなかった。言うは易く行うは難し。零次はこの言葉を身をもって実感していた。
(というか、こいつら「実体」を持って俺に干渉してきやがったな。能力が強くなってるのか?前はこんな芸当はできなかったはずだが…)
「まあいいか。…それで?この状況でラーメン以外に何を優先すればいいんだ?」
零次が自分自身へと問い掛ける。
「それは当然魔法についてよ!命に関わる事だし最優先に調べるべきだわ!」
「寝る場所も確保しないとヤバいぞ。まさか地面で寝るつもりじゃないだろうな?そんな事をしたら体温が地面に吸収されて確実に死ぬぞ」
「…正論だな」
(こいつら俺よりも頭良いんじゃねえか?)
零次が気を落としつつも脳みそを回転させていく。
(魔法か…まあなんとなく予想は付く力だが一応確認は必要だ)
(それと情報もか。…くそ。どんどんラーメンが遠のいていく気がするな)
「いいだろう。なら最初は魔法についてだな」
零次が画面をヘルプモードへと移動させる。
「いいわよ零次!あなたは間違ってないわ!」
「その通り!お前は偉い!褒めてやる!」
「……」
両肩に小さな天使と悪魔を乗せつつ、零次は魔法の項目を100コインでアンロックした。
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