第12話

「___‘※※※‘」


「ん…?」


 何かの攻撃が来ると判断した零次が後ろではなく前へと踏み込む。数秒程で後方に火柱が上がった。


「…!?」


「攻撃は最大の防御ってな…!!」


 零次が力強く地面を踏み込む。乗せた体重はそのままに。右足を前に押し出し最後に残った男の腹部を蹴り抜く。


「……※※※」


 変形した肋骨は体外へとねじり出て腹部は破裂。赤黒い臓器と腸は見るも無残な状態だ。盗賊は筆舌に尽くしがたい地獄の痛みの中で絶命した。


「まったく。こうなるから止めておけと警告したんだけどな……」


(服に返り血が付いちまった。こりゃ早めに着替えないとダメか)


「…戻ろう」


 零次は再びあの水辺を目指して歩き始めた。


「ああ~生き返るぜ~~♪」


 水に両腕を突っ込みやや強めに腕をこする。


(体はどうにでもなるが衣服に付着した血痕は厄介だ。下手に服を洗濯すると翌日まで全裸で過ごすなんてことに…)


「…運動したせいか、どうにも喉が渇いたな」


 目の前の池を見て自然と零次の喉が鳴る。


「いやいやダメだって。生水ガブ飲みはヤバ過ぎる」


(自然界の生水はたとえ綺麗に見えても危険だ。高温で殺菌消毒でもしておかないと寄生虫や腹痛の原因になる)


「クソ…喉も乾いたが腹も減ったぜ…どうにも頭が回らん」


「仕方がない。こいつを使うか…」


 零次がスマートフォンを取り出し、画面に表示された唯一のアプリを開いた。


「ふむ…まあ予想通りというか何というか、やっぱ大部分の機能はロックされているか」


 零次が今現在使用できる機能は以下の3つだけだ。


・ショップ機能


・クエスト機能


・ヘルプ機能


「ヘルプか…そうだな。まずはこれを見ておかないと」


 零次は迷わずヘルプを選択した。今、零次には圧倒的に情報が足りていない。この短時間で起きた数々のトラブルの連続だけでも零次の脳の疲労は限界を超えている。だからこそ九郎は欲っしていた。今後の行動の指針になってくれるような情報を。


(この状況だと情報は衣食住よりも優先だ)


「お…おいおい……冗談だろ?」


 ヘルプモードを見た零次の顔が段々と青ざめていく。それも当然。情報の閲覧には通貨が必要だという事が発覚したからだ。


「馬鹿野郎っ!!ヘルプが有料とか頭腐ってんのかっ!?」


 思わずスマートフォンを地面に叩きつけそうになる零次。だがギリギリで理性が零次の体を止めた。


(ぐ…お、落ち着けおれ…このスマホだけが現状唯一の情報源だ。こいつを失うわけにはいかない)


「…は~…ふ~…は~……よし」

 

 軽いブレスを等間隔で繰り返し茹で上がった脳みそを冷却。冷静かつ客観的な思考でもう一度スマートフォンの画面を零次は注視した。

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