第7話
<地面までの距離から考えて猶予は約2分ってところよ>
<体の感覚も鈍くなってるぞ。ほら、あのブラック会社の講習で習ったろ?空の気温はやたらと低いってな>
(…むぅ。正論だな)
天使と悪魔が変えようのない現実を零次に再認識させる。本来ならばここから現状打開の議論が始まるのだが。
<やっぱ死ぬなら苦痛なく死にたいよな~こう眠るようにゆっくりとさ。落下死とか最悪の部類だと思わないか?>
<そうね~。これだとあのまま地獄に行ったほうが良かったんじゃないかしら>
<だよな~>
「こいつら全然使えねえよ!!」
それも当然の事。何故ならばこの状況はもう死ぬ事がほぼ確定しているからだ。零次の現在の能力ではこの現状を打破する事は出来ない。それは薄々本人も気づいていた事だ。
<残り時間は約50秒>
<どうするどうする?>
(落下エネルギーをどうにかできないとこのままミンチコース確定だ。どうすればいい…)
<カップラーメンってよ…2分の段階のちょっと硬めの麺も美味しいよな~>
<…それはちょっと分かるかも>
「こうなったら一か八か…」
やや鈍い動きでポケットに入れたスマホを取り出そうとする零次。だが結果的にこれが最悪の悪手となる。
「……あ」
ポロッと、本当にごく自然にスマホが手から離れる。普段とはまったく違う空中からの落下中という異常な状況。身体機能の極端な低下といういくつもの悪条件が重なった結果、零次は現状唯一の希望とも呼ぶべきスマホを取りこぼしてしまう。
打つ手なし。
絶体絶命。
ジ・エンド。
零次の脳内では絶望のファンファーレが響き渡っていた。
<ぎゃあああ!もう無理!絶対無理よこれええええ!?>
<え…?これマジでヤバくない?>
小さな天使と悪魔、そして零次の顔が同時に引き攣る。
「あははは!ダメだこりゃ!?3人で仲良く心中決定だよおい!!」
そして零次は考える事を放棄した。
<バカ!!諦めたらそこで終わりよ!>
<そうだそうだ!諦めるな!!>
「クソ…美味い話には裏がある。その事をすっかり忘れてたぜ…」
残り時間30秒。ぼんやりと2度目の死について考えていると、その声が聞こえた。
★助けが必要か?★
(…!?)
耳ではなく魂に直接語りかけてくるその感覚。それには零次も覚えがあった。
(…何者だ?)
★酷い状況だな。これだからお役所仕事はダメなんだ。やつらはアフターケアという物がまるでなってない★
(……)
★時間は止まらないぞ。お前の口から聞かせて欲しい。お前はどうして欲しい?★
(もう時間がない。あんたが天使だろうが悪魔だろうが邪神だろうが…俺が口にする言葉は1つしかありえない)
「頼む!助けてくれ!!」
★くふふふ…よし!今回だけのスペシャル大サービスだ。しかとその目に焼き付けるといいぞ★
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