第6話
「さてと…あんたの「同意」も得たし…最低限の注意事項も伝えたし…私も忙しいし…そんじゃちゃっちゃと「あの星」にあんたを送る事にするわ」
「え…!?」
No.100のその発言に零次が驚く。
「ちょっと待て!このアプリの事とか「星」についての詳しい説明とか聞いてねえぞ!?」
零次のその余裕の無い言葉に、No.100はこの日一番の笑顔を見せる。
「最近のゲームは説明書無しで始まるものよ?というわけで、ここから先の情報は有料ってわけよ!!」
No.100が宙に向けて片手を伸ばす。すると零次の足元に巨大な魔法陣のような物が出現した。
「サービスタイムはここまで!あんたの幸運を少しだけ祈ってるわよ~!!」
零次の体がゆっくりとどこかに転送されていく。それは中々にホラーな光景だ。
「この野郎!せめて星の名前ぐらいは教えろよ!!ハードモード過ぎるだろうが!!」
「何かあったらスマホの「ヘルプ画面」を見なさい。そこに全部書いてあるわよ~」
No.100がヒラヒラと手を振る。数秒で零次の魂は完全に神界から消失した。
「ふう…」
一仕事を終えたNo.100がゆっくりイスに座り直す。No.100からしてみれば、零次から別の星への「移籍」の同意が得られればその後はどうでもいい事なのだ。
「…星の名前ぐらいは教えとくべきだったかな?」
それでも最低限の情報やヘルプ画面の情報を零次に伝えた。それは純粋にNo.100の優しさだ。
「いやいや…下手に教えると規定に引っかかるかもしれないし…まああの人間なら何とかなるでしょ」
ともあれ「山田零次」の管轄は別の惑星へと変更された。この後に起きる全てのトラブル対応は全て後輩のNo.101の担当になる。
「くふふふ…面倒な仕事はできるだけ後輩に押し付ける。これこそが女神流処世術よ!」
「あの野郎おおおおおおおおおおお!!」
気が付いたその瞬間、零次はどこか分からない空から落下していた。
「おわああああああああああああああああああああああああああああ!?」
(やべえ…これたぶん死ぬやつじゃん……)
想像を超えた悪夢のような現状。零次の思考は停止と再生を繰り返していた。
___命の危険。それを察知した零次の「能力」が自動的に発動する。
<諦めちゃダメよ零次!とにかく考えるのよ!はっきりとしている事は1つ。ここは空であなたは今、落下している!>
<零次~落下死ってめっちゃ痛いらしいぞ~>
「あっ…!?…天使と…悪魔?」
(…そうか、このタイミングでやっとポンコツ「異能力」が発動しやがったか)
零次にしか認識する事が出来ない2匹の小さい天使と悪魔が彼の周囲をグルグルと回り出す。これは「魔法」でもアプリの「力」でもない。零次が生前に地球で習得していた「異能力」だ。
(「‘二重思考‘」オンオフが自由に出来れば結構有用だと思うんだけどな…)
零次の異能力は条件付きの自動発動タイプ。発動条件は<山田零次の命に危険が迫った場合>極めて厳しい条件かつ条件を満たしても発動確立は50%という微妙な数字だ。零次が大型車に吹き飛ばされた「あの瞬間」には能力は発動しなかった。故に零次自身は自分の異能力をまったく信用していなかった。
(ともあれ…あのNo.100とかいうクソ女神の話を聞いて確信したぜ。やっぱ異能力は魔法の一種だな)
別の世界でもこうして能力が発動している。その事実が零次に異能力の正体を確信させた。No.100から「魔法」や「転生」の説明を受けたときに零次があまり驚かなかったのはそれが原因だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます