第5話
「さてと。それじゃあ色々と転移先の世界について説明するから良く聴きなさい」
No.100による別の世界の詳しい説明が行われる。零次のポンコツな脳みそでは話の3割程度しか理解する事はできなかったが、大まかな概要だけは理解する事ができた。
以下、零次の脳内ではこのように話が整理されている。
1 その世界はゲームのような剣と魔法の世界。人間以外の魔物と呼ばれる脅威が存在しているらしい。
2 その世界はNo.100の後輩、No.101という女神が管理している。
3 その世界に行っていきなり死なれたら困るから、何らかの特典を付けてくれる。
「早い話が優遇措置というやつね。転移先で1日以内に死なれると私の査定に傷が…いえ、なんでもないわ」
「…おい」
(…ふむ、これはあれか?何か特別な力を与えられるとかそういう話か?)
零次の脳内でチートという言葉がグルグルと回り出す。零次自身憧れた事があるのだ。人外の力で思う存分暴れまわりたいという原初からの欲求に。
<■■■お主が本当に■■■■望んでいる物は■■■■■そんな■■■■■■もの■■■■■■■ではないだろう?>
「…!?」
___零次の魂に直接響き渡るように、そのノイズ混じりの声は届いた。
(そうだ。俺は、いったい何のために生きていたんだ?)
「というわけで、あなたには世界の常識から逸脱しないレベルで、何か適当な「魔法」を与えないといけないのよ」
「何か希望はある?」
「…希望」
そんなものは零次の中に1つしか存在しなかった。零次は迷わずに己の願いを言葉にして伝える。
「___ラーメンが食いてえ……」
「…え!?」
その瞬間、No.100と零次の持っていたスマートフォンが突然共鳴を始めるように光始める。
「ちょっ!?…噓でしょ!?なんで勝手にアプリが……!?」
「…?」
数十秒程で光は収まった。だがNo.100は手元のスマートフォンの画面を見つめたままフリーズしていた。
「…アプリが…自分の意思で転送したってこと?…そんな事があるわけが……」
「…いや、なる程ね」
No.100が早々に答えを放棄する。実験中のアプリの暴走。だが彼女の上司はこうも言っていたのだ。このアプリは「資格」を持つものの前に現れるのだと。
「え~と、今どういう状況なんだ?」
訳のわからない状況に困惑する零次。
「そうね…おめでとう。あなたはそのアプリに選ばれた。あなたには優遇措置なんて必要なかったみたいね」
「はぁ…?」
「その力の名前は「孤独の探究人」そのアプリはあなたの成長と共にその力を解放していくわ。力の源はそのスマートフォンよ、大事にしなさい」
「……」
零次のスマートフォン。そこから普通ではない「何か」を彼は感じていた。
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