第4話
「……」
よろこんで!という言葉をギリギリで飲み込む零次。零次には今、圧倒的に情報が不足している。短絡的な返答は危険なのだ。
「ふっふっふ…まあ当然即答はできないわよね。当然と言えば当然の話か」
零次のこの反応を予め予測していたNo.100。この状況は彼女にとっても想定済みだ。
「それじゃ話を円滑にする為にも、いくつか私から情報を開示してあげる」
そして語られる死後の世界のルールと山田零次に残された選択肢。零次が今回手に入れた情報はこうだ。
・人は生前に累積された善行ポイントによって天国か地獄に行く事になる。
・天国や地獄は魂の浄化施設。結局最終的に行きつく先は転生。
・天国でも地獄でも転生後に記憶は引き継げない。まったく別の存在になる。
・山田零次の善行ポイントは-4ポイント。このままだと地獄行きになる。
「ちなみに善行ポイントの基準は上限が100で下限が-100」
「私が言うのもなんだけど-4ポイントて結構ヤバいわよ。…あんた生前に何かやらかしたの?」
「…?俺が生前何をやっていたのか知らないのか?」
「詳しくは知らないわよ。私達に渡される資料は死ぬ直前の簡単な状況とその人の善行ポイントくらいだから」
「よくそんなんで魂の裁定が出来るな…」
「そういうマニュアルがあるのよ。あと、本人の同意なしに魂の記憶は読み解けないの。それやっちゃうと私でも重罪になるから」
「…なる程な」
「それと、あんたが行く予定になってる地獄だけど…あそこは早い話強制労働施設みたいなものよ」
「そこでの評価次第で天国行きか転生になる。更生の意思なしと判断されるとさらに厳しい下層の地獄行きになるかもしれない」
「……」
真っ青な顔をしていた零次にNo.100が情報を次々と畳みかける。
「ここだけの話…あそこはマジでヤバいわよ」
「働いてる囚人も天使も悪魔もみんな頭がイカレちゃってる」
「私も研修で何度か足を運んだ事があるけど…正直二度と行きたくない場所ぶっちぎりのナンバー1ってところね」
そこまでで一旦No.100が言葉を止める。ここまでの情報だけでも彼女にとっては限界ギリギリの情報だ。下手をすれば彼女の首も飛びかねない。だがそこまでしてでも彼女は邪神側とは関わり合いになりたくないのだ。
「…聞かなきゃよかったぜ」
零次から至極真っ当な言葉が吐き出される。
(ともあれ有益な情報である事は間違いない。死んでからも強制労働なんて冗談じゃねえぜ)
(天国に行こうが地獄に行こうが記憶と自我が消えるなら何の意味もない。となれば俺が選ぶ答えは1つだけだ)
「さて、聞かせて貰おうかしら」
「___あなたの答えを」
No.100の言葉。それに対してノータイムで零次が答える。
「ああ。あんたのその話、受ける事にするよ」
「ふふ…良い選択よ。私があなたの立場でも間違いなくそう答えると思うわ」
No.100と零次がガッチリと握手を交わす。両者の利害は一致しているのだ。No.100はどうにか地球から零次の魂をパージしたい。零次は自我を持ったまま人間として人生を楽しみたい。となれば互いに協力をしない道理などない。
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