21話 敗北...やっぱり肉には勝てなかったよ。

「誘い込まれた…か…」

施設の中にいたのはファイヤーワークス撃墜の報告にあった白い第一世代TSストライダーに乗ったクリスだった。


「ようこそアリア、我が星エルトリアへ、歓迎しますよ?」

どこか怪しい雰囲気を醸し出している。クリス

「歓迎…ね…その白い機体も歓迎の一環ってわけ?」

疑っている

「いえ、今はただの置き物ですよ。今は動きません。」

そういって降車装置で機体から降りる降りる

「降りるのか…」

まさか敵の目の前で機体から出ると思っていなかったアリア

「気に入ってくれると嬉しいのですが…」

そう言ってクリスは奥の扉からあるものを運んできた。


「…テーブルと…椅子?」

運ばれてきた物はテーブルと二つの椅子、そして鉄板だった。

網目のついた鉄板、拡大すると下には炭火コンロが備え付けてあるのが見える。

「なぜに鉄板?」

椅子とテーブルが出てくるのは歓迎ということで理解できる。だが鉄板が出てくるのは理解できなかった。

宇宙の背景に猫が浮かんでいる光景が頭に浮かぶアリア。

「まぁ見てなさい、今焼くから」

そう言ってクリスはクーラーボックスから牛脂、そして牛肉だと思われるカルビやタン、ロースなどの焼肉用肉を取り出す。

「焼く?あとその肉は...」


アリアの疑問を他所にジュウジュウと牛脂が焼かれる音が周囲に響く

牛脂が薄く膜のように広がると牛タンを焼けた鉄板の上に載せる。

火は弱火よりの中火に設定する。

理由はネギを楽しむ場合は時間がかかるので普段より弱めの火力に設定するのが良いとクリスは語る。


「うっ...美味そうな匂いが...合成食料じゃないの...?」

少し開けているのかコックピットにまで肉のいい匂いが入ってくる。

牛タンの半分にだけネギを乗せてネギにも火を軽く通すとネギが乗った牛タンを半分に折り畳む。

「ふふふ...美味そうだろう?さぁ此処に座って焼肉と行こうじゃないか?」




「ぎぎぎ...負けるわけには....依頼を完遂するまでは...」


「ふふふ...ほらぁ...美味しそうなカルビだぞ?脂が乗ってちょっと焦げたところが絶品だぞぉ?」



「うっ....口から涎が....」

これが食欲ってやつなのかと今まで食に興味がなかったアリアは涎をダラダラと垂らしながら迷っていた。


そして決断した。



「................はぁ...負けたわ。そんな美味しそうに食べているのを見たら、耐えられるわけないもの。」

依頼主を裏切るという決断を

「よろしい...一緒に肉を楽しもうじゃないか。アリア」



やっぱり肉には勝てなかったよ。

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